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8話 魔原書リプセグ 星の音 願い

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【禁止指定魔法不明系統 奇跡の魔法。使用方法用途ともに不明。この話は、奇跡の魔法が引き起こした現象です。

 単なる夢の話だと思ってくださっても結構です。ですが、今までの経験がそれが単なる夢の話ではないと理解されるでしょう。

      **********

 長い夢が動き出すきっかけは終焉へと向かう世界。

 人々の領土をめぐる争いが、澱んだ心を生み出し魔物が大量に発生しました。

 減る事なく増え続ける魔物に、人はが生きるには過酷な世界となりました。犠牲になるのはいつだって力なき人々。

 力なき人々は魔物から身を守るために特殊な結界の中で生きる事になりました。

 その結界のある小さな村の中で一人の少女が木陰で泣いています。

 誰もがその少女を見て見ぬ振りをしている中、二人組の少年の一人が少女に声をかけました。

「その格好だと寒いだろ」

「……ぷぃ。なんでゼロなの。ゼロきらい」

 この世界では記憶がありました。この魔法の使用者であるフォル様は当然。特殊な外見の少女エンジェリア姫とゼーシェリオン様も現実では持っていない記憶を持っています。

「隣にお目当てのフォルいるだろ。なんで俺が先に声をかけたからって」

「エレはフォルの……エレの王子様のお声以外は聞けない病なんです。だからゼロのお声など聞けません。って事にしとこ」

 エンジェリア姫はフォル様が大好きすぎて、フォル様に初めに声をかけてもらいたかったのでしょう。ゼーシェリオン様の声を変な理由までつけて聞かなかった事にしてフォル様を見ています。

「聞こえてんだろ。これはおっとけ」

 ゼーシェリオン様は恋するエンジェリア姫の事情を無視して毛布を与えています。

「しゃぁー! エレはフォル意外の施しは受けません」

 なんとしてもゼーシェリオン様の優しさは無視しています。

「……エレ、寒いでしょ。これ貸してあげる」

「みゅにゃ⁉︎ フォルが着ていたケープなの!? くんくん、ぷにゅぅ」

 フォル様相手なら喜んで受け取るエンジェリア姫です。

「ごめん、今まで一人にして」

「ふにゅ。一人にされたら泣くの」

「それでさっきまで泣いてたんだ。そんなに一緒にいたいって思うなら一緒に来てくれる? 」

 エンジェリア姫はフォル様に誘われたのにすぐには返事をしません。ゼーシェリオン様とじっと見つめています。

「……ふにゅ……エレのお望み違うの……やなの! 」

 エンジェリア姫はそう言って走り去りました。

「……なぁ、泣いて良い? 俺ずっとエレに会いたくて探すに頑張ったのに。あんなのひどい」

「僕には良い思いさせてくれたけどね。それよりあれ追いかけないと危ないんじゃない? 」

 エンジェリア姫が走っている先は結界の外です。エンジェリア姫は気づいていないのでしょう。

「あいつの事だ。フォルにしか追いかけてほしくないんだ。俺は声かけただけであんな態度取られるんだ」

「……素直じゃないだけなのに。僕フィルとゼム待っとくから追いかけてあげな」

 フォル様は素直じゃないの部分だけゼーシェリオン様に聞こえないように言っています。少し羨ましそうに。

「またエレにあんな態度取られたら泣く。それでも行けと? 」

「勝手に泣けば。泣けばエレも甘やかすんじゃない? というか、あの子魔物に好かれやすいから早く行かないと」

「行ってくる」

 エンジェリア姫の安全が一番なのでしょう。ゼーシェリオン様がエンジェリア姫を追いかけました。

      **********

 ゼーシェリオン様が追いかけていた頃、エンジェリア姫は魔物と遭遇していました。

 真っ黒く巨体な獣の姿をしている魔物がエンジェリア姫を見ています。

 エンジェリア姫は瞳に涙を溜めて魔物と目を合わせていました。

「ふぇ、え、エレは美味しくないよ」

 エンジェリア姫の特殊な魔力はゼーシェリオン様にとってもそうなのですが、魔物にとっても貴重で極上なものです。そのような理由で襲われないという事はないでしょう。

 エンジェリア姫は獣と遭遇した時のように、魔物から目を背けずにゆっくりと後退ります。そうすれば襲われないとでも思っていたのでしょう。

「ゴォォォ」

「ぴきゃ⁉︎ 」

 魔物の遠吠えに驚いたエンジェリア姫が尻餅をつきました。

「え、エレの愛魔法喰らえーなの……使えないの」

 エンジェリア姫は一生懸命愛魔法を使おうとしていますが、発動条件を満たしていません。

「大人しくしてろよ。あとお前は浄化魔法があるだろ」

 ゼーシェリオン様が追いついて浄化魔法で魔物を浄化しました。

「……しゃぁ……助けてくれたの。助けてくれたから、エレはお礼に仲間になるの。今日からエレはゼロのお供なの。ぎゅぅなの。恩なの」

 エンジェリア姫はそう言ってゼーシェリオン様に抱きつきました。

「お仲間だから、どこへでも行くの」

「……ちゅうが良い」

「その前にエレはゼロに聞きたい事あるの。エレ、とってもきれいな女の人とゼロが一緒に歩いてるの見たの。それについて一言どうぞ」

 エンジェリア姫がゼーシェリオン様に軽蔑しているような瞳を向けています。

「それゼムだろ。俺、女装したゼム以外と歩いてない」

「ぴゅん。フォル達待つの。一緒にお茶でもして待つの」

 エンジェリア姫はそう言ってゼーシェリオン様の頬に口付けをしました。

「そうだな」

 心なしか嬉しそうなゼーシェリオン様がエンジェリア姫のためにお茶を準備しています。

 ゼーシェリオン様がそばにいるという安心があるのでしょう。エンジェリア姫は呑気にお茶を飲んでフォル様を待ちます。

「エレー、ゼロー」

「みみゃ⁉︎ 」

 エンジェリア姫のフォル様レーダーで遠くから声が聞こえた途端気づいて駆け寄りました。

「ぷにゅぅ。嬉しいの。聖女とか色々むりやりやらされてやだったの。とっても怖かったの。助けてもらえたの嬉しいの。一緒じゃない寂しかった。一緒嬉しい」

 エンジェリア姫は溢れる想いを言葉にしてフォル様に伝えています。他者の感情を読み取れない分、自分から伝えると教わっているからでしょう。

「うん。僕も嬉しいよ」

 フォル様がエンジェリア姫の頭を撫でて答えます。

「これからどこ行くの? エレはゼロに助けられたからどこへでもついて行くの。そういう生き物なの」

「王都へ行く予定なんだ。転移魔法で行くからすぐだよ」

「とーほ、とーほ」

 エンジェリア姫はこの国を良く知らないから徒歩なんていえるのでしょう。この国をその目で見てみたいというのは理解できますが、徒歩で行ける距離ではありません。

 徒歩で行けば五十日はかかるでしょう。一般人であれば。この国は近隣国とは比べ物にならない大国ですから。

「エレがそれが良いなら」

「えっ⁉︎ 転移魔法に一票」

 ゼーシェリオン様の兄君ゼムレーグ様は距離を知っているためか転移魔法を主張します。ですが、多数の意見というのは残酷なものです。

「俺もエレが良いなら徒歩……エレ、俺もなでなでさせろ」

 ゼーシェリオン様がエンジェリア姫の頭を撫でる事で徒歩を主張します。フォル様の兄君のフィル様も徒歩に賛成しています。

「ゼム、魔法の練習だと思って」

「ゼムは一人で転移魔法使えないからほっとけばついてくるよ」

「それもそうか」

 徒歩に決定してエンジェリア姫は大喜びです。

「奇跡の時間をいっぱい楽しむの。ついでに夢なんだからフォルと結婚も許される気がするの」

「やるかどうかは置いておいて、許されはするだろうね。それよりエレ、王都までゼロ達ほっといて一緒に行こ」

「むにゅ……王都どっち? 」

 エンジェリア姫はフォル様と手を繋いできょとんと首を傾げます。

「僕と一緒なんだから考えなくて良いよ」

「つぅか聞いても途中で道に迷うのがオチだろ」

「ゼロきらい。しゃぁしてやるの」

 エンジェリア姫は猫の威嚇が最強だと思っています。ゼーシェリオン様に威嚇しています。

「……みゅ。枯れたお花ばかりなの」

「何もしなければ滅びるだけの世界だから。栄養なんて残ってないんだろうね」

「……どうにかできないの? 夢だとしてもやだ」

「手は尽くすよ。ここの人達にとって夢ではないんだから」

 この世界はあと一歩でも滅びに近づけばどうする事もできない状態まで来ています。この状態まできていて滅びを防ぐのは困難でしょう。

「エレもお手伝いするの」

「うん、ありがと。でも無理はしないで。僕のお姫様」

「みゅ。王都行くのも疲れたら休むの」

「うん。そうして」

 こうして、エンジェリア姫達は王都へ向かいました。

      **********

 これは、今へ繋がる奇跡の物語。
 星の音。かつてそう呼ばれた姫が大切な者達と共に奏でる愛と希望の音色。

 星の音 第一章 第一話 出会い】


次のエピソードへ進む 9話 魔原書リプセグ 星の音 嘘


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【禁止指定魔法不明系統 奇跡の魔法。使用方法用途ともに不明。この話は、奇跡の魔法が引き起こした現象です。
 単なる夢の話だと思ってくださっても結構です。ですが、今までの経験がそれが単なる夢の話ではないと理解されるでしょう。
      **********
 長い夢が動き出すきっかけは終焉へと向かう世界。
 人々の領土をめぐる争いが、澱んだ心を生み出し魔物が大量に発生しました。
 減る事なく増え続ける魔物に、人はが生きるには過酷な世界となりました。犠牲になるのはいつだって力なき人々。
 力なき人々は魔物から身を守るために特殊な結界の中で生きる事になりました。
 その結界のある小さな村の中で一人の少女が木陰で泣いています。
 誰もがその少女を見て見ぬ振りをしている中、二人組の少年の一人が少女に声をかけました。
「その格好だと寒いだろ」
「……ぷぃ。なんでゼロなの。ゼロきらい」
 この世界では記憶がありました。この魔法の使用者であるフォル様は当然。特殊な外見の少女エンジェリア姫とゼーシェリオン様も現実では持っていない記憶を持っています。
「隣にお目当てのフォルいるだろ。なんで俺が先に声をかけたからって」
「エレはフォルの……エレの王子様のお声以外は聞けない病なんです。だからゼロのお声など聞けません。って事にしとこ」
 エンジェリア姫はフォル様が大好きすぎて、フォル様に初めに声をかけてもらいたかったのでしょう。ゼーシェリオン様の声を変な理由までつけて聞かなかった事にしてフォル様を見ています。
「聞こえてんだろ。これはおっとけ」
 ゼーシェリオン様は恋するエンジェリア姫の事情を無視して毛布を与えています。
「しゃぁー! エレはフォル意外の施しは受けません」
 なんとしてもゼーシェリオン様の優しさは無視しています。
「……エレ、寒いでしょ。これ貸してあげる」
「みゅにゃ⁉︎ フォルが着ていたケープなの!? くんくん、ぷにゅぅ」
 フォル様相手なら喜んで受け取るエンジェリア姫です。
「ごめん、今まで一人にして」
「ふにゅ。一人にされたら泣くの」
「それでさっきまで泣いてたんだ。そんなに一緒にいたいって思うなら一緒に来てくれる? 」
 エンジェリア姫はフォル様に誘われたのにすぐには返事をしません。ゼーシェリオン様とじっと見つめています。
「……ふにゅ……エレのお望み違うの……やなの! 」
 エンジェリア姫はそう言って走り去りました。
「……なぁ、泣いて良い? 俺ずっとエレに会いたくて探すに頑張ったのに。あんなのひどい」
「僕には良い思いさせてくれたけどね。それよりあれ追いかけないと危ないんじゃない? 」
 エンジェリア姫が走っている先は結界の外です。エンジェリア姫は気づいていないのでしょう。
「あいつの事だ。フォルにしか追いかけてほしくないんだ。俺は声かけただけであんな態度取られるんだ」
「……素直じゃないだけなのに。僕フィルとゼム待っとくから追いかけてあげな」
 フォル様は素直じゃないの部分だけゼーシェリオン様に聞こえないように言っています。少し羨ましそうに。
「またエレにあんな態度取られたら泣く。それでも行けと? 」
「勝手に泣けば。泣けばエレも甘やかすんじゃない? というか、あの子魔物に好かれやすいから早く行かないと」
「行ってくる」
 エンジェリア姫の安全が一番なのでしょう。ゼーシェリオン様がエンジェリア姫を追いかけました。
      **********
 ゼーシェリオン様が追いかけていた頃、エンジェリア姫は魔物と遭遇していました。
 真っ黒く巨体な獣の姿をしている魔物がエンジェリア姫を見ています。
 エンジェリア姫は瞳に涙を溜めて魔物と目を合わせていました。
「ふぇ、え、エレは美味しくないよ」
 エンジェリア姫の特殊な魔力はゼーシェリオン様にとってもそうなのですが、魔物にとっても貴重で極上なものです。そのような理由で襲われないという事はないでしょう。
 エンジェリア姫は獣と遭遇した時のように、魔物から目を背けずにゆっくりと後退ります。そうすれば襲われないとでも思っていたのでしょう。
「ゴォォォ」
「ぴきゃ⁉︎ 」
 魔物の遠吠えに驚いたエンジェリア姫が尻餅をつきました。
「え、エレの愛魔法喰らえーなの……使えないの」
 エンジェリア姫は一生懸命愛魔法を使おうとしていますが、発動条件を満たしていません。
「大人しくしてろよ。あとお前は浄化魔法があるだろ」
 ゼーシェリオン様が追いついて浄化魔法で魔物を浄化しました。
「……しゃぁ……助けてくれたの。助けてくれたから、エレはお礼に仲間になるの。今日からエレはゼロのお供なの。ぎゅぅなの。恩なの」
 エンジェリア姫はそう言ってゼーシェリオン様に抱きつきました。
「お仲間だから、どこへでも行くの」
「……ちゅうが良い」
「その前にエレはゼロに聞きたい事あるの。エレ、とってもきれいな女の人とゼロが一緒に歩いてるの見たの。それについて一言どうぞ」
 エンジェリア姫がゼーシェリオン様に軽蔑しているような瞳を向けています。
「それゼムだろ。俺、女装したゼム以外と歩いてない」
「ぴゅん。フォル達待つの。一緒にお茶でもして待つの」
 エンジェリア姫はそう言ってゼーシェリオン様の頬に口付けをしました。
「そうだな」
 心なしか嬉しそうなゼーシェリオン様がエンジェリア姫のためにお茶を準備しています。
 ゼーシェリオン様がそばにいるという安心があるのでしょう。エンジェリア姫は呑気にお茶を飲んでフォル様を待ちます。
「エレー、ゼロー」
「みみゃ⁉︎ 」
 エンジェリア姫のフォル様レーダーで遠くから声が聞こえた途端気づいて駆け寄りました。
「ぷにゅぅ。嬉しいの。聖女とか色々むりやりやらされてやだったの。とっても怖かったの。助けてもらえたの嬉しいの。一緒じゃない寂しかった。一緒嬉しい」
 エンジェリア姫は溢れる想いを言葉にしてフォル様に伝えています。他者の感情を読み取れない分、自分から伝えると教わっているからでしょう。
「うん。僕も嬉しいよ」
 フォル様がエンジェリア姫の頭を撫でて答えます。
「これからどこ行くの? エレはゼロに助けられたからどこへでもついて行くの。そういう生き物なの」
「王都へ行く予定なんだ。転移魔法で行くからすぐだよ」
「とーほ、とーほ」
 エンジェリア姫はこの国を良く知らないから徒歩なんていえるのでしょう。この国をその目で見てみたいというのは理解できますが、徒歩で行ける距離ではありません。
 徒歩で行けば五十日はかかるでしょう。一般人であれば。この国は近隣国とは比べ物にならない大国ですから。
「エレがそれが良いなら」
「えっ⁉︎ 転移魔法に一票」
 ゼーシェリオン様の兄君ゼムレーグ様は距離を知っているためか転移魔法を主張します。ですが、多数の意見というのは残酷なものです。
「俺もエレが良いなら徒歩……エレ、俺もなでなでさせろ」
 ゼーシェリオン様がエンジェリア姫の頭を撫でる事で徒歩を主張します。フォル様の兄君のフィル様も徒歩に賛成しています。
「ゼム、魔法の練習だと思って」
「ゼムは一人で転移魔法使えないからほっとけばついてくるよ」
「それもそうか」
 徒歩に決定してエンジェリア姫は大喜びです。
「奇跡の時間をいっぱい楽しむの。ついでに夢なんだからフォルと結婚も許される気がするの」
「やるかどうかは置いておいて、許されはするだろうね。それよりエレ、王都までゼロ達ほっといて一緒に行こ」
「むにゅ……王都どっち? 」
 エンジェリア姫はフォル様と手を繋いできょとんと首を傾げます。
「僕と一緒なんだから考えなくて良いよ」
「つぅか聞いても途中で道に迷うのがオチだろ」
「ゼロきらい。しゃぁしてやるの」
 エンジェリア姫は猫の威嚇が最強だと思っています。ゼーシェリオン様に威嚇しています。
「……みゅ。枯れたお花ばかりなの」
「何もしなければ滅びるだけの世界だから。栄養なんて残ってないんだろうね」
「……どうにかできないの? 夢だとしてもやだ」
「手は尽くすよ。ここの人達にとって夢ではないんだから」
 この世界はあと一歩でも滅びに近づけばどうする事もできない状態まで来ています。この状態まできていて滅びを防ぐのは困難でしょう。
「エレもお手伝いするの」
「うん、ありがと。でも無理はしないで。僕のお姫様」
「みゅ。王都行くのも疲れたら休むの」
「うん。そうして」
 こうして、エンジェリア姫達は王都へ向かいました。
      **********
 これは、今へ繋がる奇跡の物語。
 星の音。かつてそう呼ばれた姫が大切な者達と共に奏でる愛と希望の音色。
 星の音 第一章 第一話 出会い】