36.本当に怖いモノ
ー/ー
翌日、フライングVのハルカとミツル、それに敬一クンとエビセンが、ホクトの部屋にホクトの荷物を取りに行くことになった。
最初はホクト本人も行く予定だったが、ペアリングの衝撃の他に、ミナトが教えてくれた更なるショックで、ホクトはもう絶対あの部屋には近づきたくないと言って動かなくなってしまったのだ。
ホクトを恐怖のどん底に突き落とした……って、ペアリングだけでも充分恐怖のどん底だが、更にその底が抜けて下の下まで落ちた理由は、二世帯型マンションの連絡扉だった。
二世帯を繋ぐ連絡扉の鍵は、入居の時にマンションの管理会社と立会の元に新しい物に変更し、それぞれが合鍵を持っていないことを確かめたとホクトは思っていたのだが、実は鍵を変更した業者からミナミは合鍵を貰っていて出入り自由になっているとミナトが言い出したのだ。
そこまで恐怖の部屋では、二度と戻りたくなくなっても致し方なしという結論になり、シノさんご指名の4人が荷物運びに派遣された。
白砂サンは荷物運びとは関係なく、個人的にミナミと話がしたいと言って、山盛りのカメラとマイクを紙袋に入れて、4人と一緒に出掛けて行った。
「なんで俺が、掃除当番しなきゃならんの……」
ぶちくさと文句を言いつつ、俺はコグマが出た後の、3階の部屋を掃除している。
コグマ本人は、昨日のうちに4階の白砂サンの部屋に荷物を移動させ、今日は勤めがあるからと、朝から出勤して行ってしまった。
そして本来は大家……つまりシノさんがすべき、新しい入居者が入る部屋の清掃を、俺がやっているのだ。
「いーじゃん。オマエの部屋は、セイちゃんがコマメ〜に掃除してくれてるんじゃもん。たまにはやりなされ」
「俺、この間シノさんの部屋の掃除したばっかなんですけどっ!」
とはいえ、俺は自分の部屋に白砂サンが出入りしていたことも、まめに清掃がなされていたことも気付いてなかった部分は、否定出来ないだ。
自分が使っていない部屋を覗いて、腰が抜けるほどごっちゃりと怪奇な宇宙人だのロボだののフィギュアやおもちゃが詰まっているのを確認した。
だけど俺はそれらの不気味なオモチャを、以前ほど怖いとは思わなかった。
白砂サンの部屋みたいに、不気味演出を施されて展示して無いから……ってだけでなく、もっと現実に怖いもの……つまりホクトがされていたストーカー行為を知った後では、フィクションの怖さなんて比じゃなくなったのだ。
「ちゅーか、オマエを俺の部屋に住まわせたら、オマエの部屋をもっと高値で他のヤツに貸せるってコトだよなぁ」
手伝うと称してそこで遊んでいるシノさんが、そんなことを言う。
「嫌だよ。そんなコトするより、敬一クンの寝室をちゃんと用意する方が先でしょ!」
「ん〜? オマエが俺ンとこ来て一緒に暮せば、ケイちゃんもなんとなく居づらくなって、エビちゃんが同居を口説きやすくなるかも〜って、思ったンじゃけどぉ?」
「あのさ、敬一クンが "なんとなく" 居づらくなるコトなんて、アリエナイし。そもそもシノさん、まだ敬一クンに俺と付き合ってるって話して無いよねェ? てか、敬一クンは、俺が一緒のベッドに寝るって言っても気にしないんじゃない?」
「むう〜、確かに! ケイちゃん天然じゃからなぁ!」
「それにエビセンはシノさんがわざわざアシストしなくても、そのうち敬一クンのコト、頭からバリバリ食っちまうよ」
「そーでもねェよ。ケイちゃんは落とし穴を持ってるからなぁ、エビちゃんカナリ思案してると思う」
「落とし穴って、どういう意味?」
「だってケイちゃん、やる時はやる子だべ? しかも美味ち〜ぃのが大好きの、食いしん坊じゃもん。口説き手順を間違うと大ヤケドするぞぉ〜。だから俺はエビちゃんよっか、アマホクの方がフライングやらかすんじゃねーかと予想しちる」
シノさんがヒトの悪い笑みを浮かべている。
「なんなの、それ?」
「レンにはワカランか。まー、ワカランでもえーわ。今日はアマホクの引越し祝いで、屋上でバーベキューやるから、体力残しとけ〜」
「そんなコトゆーなら、掃除手伝ってよっ!」
俺の叫びも虚しく、シノさんはニヤニヤしながら自分のペントハウスに戻って行ってしまった。
*猫と盗聴器:おわり*
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最初はホクト本人も行く予定だったが、ペアリングの衝撃の他に、ミナトが教えてくれた更なるショックで、ホクトはもう絶対あの部屋には近づきたくないと言って動かなくなってしまったのだ。
ホクトを恐怖のどん底に突き落とした……って、ペアリングだけでも充分恐怖のどん底だが、更にその底が抜けて下の下まで落ちた理由は、二世帯型マンションの連絡扉だった。
二世帯を繋ぐ連絡扉の鍵は、入居の時にマンションの管理会社と立会の元に新しい物に変更し、それぞれが合鍵を持っていないことを確かめたとホクトは思っていたのだが、実は鍵を変更した業者からミナミは合鍵を貰っていて出入り自由になっているとミナトが言い出したのだ。
そこまで恐怖の部屋では、二度と戻りたくなくなっても致し方なしという結論になり、シノさんご指名の4人が荷物運びに派遣された。
白砂サンは荷物運びとは関係なく、個人的にミナミと話がしたいと言って、山盛りのカメラとマイクを紙袋に入れて、4人と一緒に出掛けて|行《い》った。
「なんで俺が、掃除当番しなきゃならんの……」
ぶちくさと文句を言いつつ、俺はコグマが出た|後《あと》の、3階の部屋を掃除している。
コグマ本人は、昨日のうちに4階の白砂サンの部屋に荷物を移動させ、今日は勤めがあるからと、朝から出勤して|行《い》ってしまった。
そして本来は大家……つまりシノさんがすべき、新しい入居者が|入《ハイ》る部屋の清掃を、俺がやっているのだ。
「いーじゃん。オマエの部屋は、セイちゃんがコマメ〜に掃除してくれてるんじゃもん。たまにはやりなされ」
「俺、この間シノさんの部屋の掃除したばっかなんですけどっ!」
とはいえ、俺は自分の部屋に白砂サンが出入りしていたことも、まめに清掃がなされていたことも気付いてなかった部分は、否定出来ないだ。
自分が使っていない部屋を覗いて、腰が抜けるほどごっちゃりと怪奇な宇宙人だのロボだののフィギュアやおもちゃが詰まっているのを確認した。
だけど俺はそれらの不気味なオモチャを、以前ほど怖いとは思わなかった。
白砂サンの部屋みたいに、不気味演出を施されて展示して無いから……ってだけでなく、もっと現実に怖いもの……つまりホクトがされていたストーカー行為を知った|後《あと》では、フィクションの怖さなんて比じゃなくなったのだ。
「ちゅーか、オマエを俺の部屋に住まわせたら、オマエの部屋をもっと高値で他のヤツに貸せるってコトだよなぁ」
手伝うと称してそこで遊んでいるシノさんが、そんなことを言う。
「嫌だよ。そんなコトするより、敬一クンの寝室をちゃんと用意する|方《ほう》が先でしょ!」
「ん〜? オマエが俺ンとこ来て一緒に暮せば、ケイちゃんもなんとなく居づらくなって、エビちゃんが同居を口説きやすくなるかも〜って、思ったンじゃけどぉ?」
「あのさ、敬一クンが "なんとなく" 居づらくなるコトなんて、アリエナイし。そもそもシノさん、まだ敬一クンに俺と付き合ってるって話して無いよねェ? てか、敬一クンは、俺が一緒のベッドに寝るって言っても気にしないんじゃない?」
「むう〜、確かに! ケイちゃん天然じゃからなぁ!」
「それにエビセンはシノさんがわざわざアシストしなくても、そのうち敬一クンのコト、頭からバリバリ食っちまうよ」
「そーでもねェよ。ケイちゃんは落とし穴を持ってるからなぁ、エビちゃんカナリ思案してると思う」
「落とし穴って、どういう意味?」
「だってケイちゃん、やる時はやる子だべ? しかも美味ち〜ぃのが大好きの、食いしん坊じゃもん。口説き手順を間違うと大ヤケドするぞぉ〜。だから俺はエビちゃんよっか、アマホクの|方《ほう》がフライングやらかすんじゃねーかと予想しちる」
シノさんがヒトの悪い笑みを浮かべている。
「なんなの、それ?」
「レンにはワカランか。まー、ワカランでもえーわ。今日はアマホクの引越し祝いで、屋上でバーベキューやるから、体力残しとけ〜」
「そんなコトゆーなら、掃除手伝ってよっ!」
俺の叫びも虚しく、シノさんはニヤニヤしながら自分のペントハウスに戻って|行《い》ってしまった。
*猫と盗聴器:おわり*