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34.恐怖のペアリング

ー/ー



 その後、それぞれが持っているスマホのカメラを使ってビルの中を見て回り、呆れるほど大量のカメラと盗聴器を発見した。
 最初に白砂サンが見つけたのはACアダプターに擬態していたが、他にも火災報知器やハンガーフック、電球に擬態している物まであった。
 ちなみに白砂サンの背負っていたナップザックの中には、もっと本格的な隠しカメラと盗聴器を探知する機材が複数(ハイ)っていて、念入りに全部の部屋を調べてくれた。

「うは、スゲェ数だなぁ〜」

 ペントハウスの床にごっちゃりと積み上がった機器の山を眺めながら、それでもまだ余裕に状況を楽しんでいる様子のシノさんが言った。

「信じられない……アイツ、何考えてんだよ……?」

 従兄弟のイカレた所業に、驚きのあまり暗闇で卒倒したホクトは、ぶつけた後頭部を氷で冷やしながら応接セット(ふう)のソファで横になっている。

「んなこたぁコッチが聞きたいわ! ひとんちの風呂場から便所まで覗いてやがって、オマエの親戚迷惑過ぎだろ!」

 俺達が暗闇でスマホをかざしつつ、隠しカメラ探しをしているところに帰宅したエビセンは、その異様な空気に流石に少々面食らい、更に事情が判ったところでお怒り心頭モードに突入していた。
 幸いにして俺の部屋にはカメラは無かったが、敬一クン繋がりなのだろう、コグマとエビセンの住まいには、カメラも盗聴器もしっかり設置されていたのだ。

「海老坂、やったのは南さんで、天宮じゃない。天宮を責めても仕方が無いだろう」
「何言ってンだ! 天宮繋がりで出てきたお変人じゃねェか、天宮の所為だろが!」
「そんなことを言い出したらキリがないだろう」
「いいんだよケイ……。アイツ、ケイの入浴まで覗いてて、頭おかし過ぎだ。迷惑掛けて本当にすまない」

 二階のフライングVコンビの仕事場と部屋は盗撮を免除されていたが、一階の店舗は客席も厨房もアナログレコード部屋も盗撮されていたし、どういう繋がりなのかワカラナイが、白砂サンの住まいにもカメラと盗聴器が設置されていた。

「見られて困ることはしていないが、盗撮も盗聴も御免(こうむ)りたい。柊一、君からやめるようクレームしてくれ」
「そー言われてもなぁ。俺がやめろって言ったからって、ホントにやめるかどーかまでは請け負えないからなぁ」
「ミナミが変わり者で、猫以外に憩いを求められないことは知っている。彼がホクト君に極端なライヴァル心を燃やしていることも、彼の生い立ちから理解出来る。だがこれは少々やり過ぎだろう」
「白砂サン。俺はミナミの事情なんか理解してやれませんよ。警察に訴えます」
「俺も海老坂の意見に賛成です。いくら親族でも酷すぎる」

 珍しく、エビセンの意見にホクトが同調した。

「君達がそうすると言うなら、私に止める権利は無い。だが訴状に名前を連ね、協力することは出来ない。それはミナミが私の友人だからだけでなく、ミナミの不祥事がミナトにどんな余波をもたらすのか、想像が出来ないからだ。私はこれ以上、ミナトを大人の不始末に巻き込みたくない」
「俺も出来れば南さんを訴えるより、ミナト君の立場を優先したい」

 白砂サンと敬一クンにそう言われて、エビセンとホクトは顔を見合わせる。
 エビセンは肩を竦めて「しょーがねェな」と言い、ホクトも「ケイがそう言うなら」と頷く。
 すると白砂サンの隣に座っていたミナトがボソッと言った。

「あんな奴、おまわりさんに捕まっちゃえばいいんだ。聖一もあんな奴の友達なんて、やめた(ほう)がいいよ」

 ミナトは如何にも強情そうな目で周囲の大人を見ている。
 するとミナトの肩に手を置いた白砂サンが、その可愛げのない顔を、そっと覗き込んだ。

「だが、私がミナミの友人で無かったら、ミナトと知り合えなかったよ?」

 ミナトは白砂サンの言うことはちゃんと聞くらしい。
 不満そうだったが、それ以上は口を噤んだ。
 ミナトが不満ながらも納得した様子を見せたら、白砂サンは顔を上げ、視線をホクトに向ける。

「ホクト君。失礼だが、君のスマホを見せてもらえまいか?」
「え? 俺のスマホですか?」

 ホクトがポケットからスマホを取り出し白砂サンに渡すと、白砂サンはそれを少しいじってから、おもむろにホクトに向かって質問を始めた。

「これ、買ってどれくらいかね?」
「半年ぐらいだと思います」
「電池の減りが、早いと感じているかね?」
「そうなんですよ。(まえ)に使っていた物より早くて」
「このアプリ、何に使っているのかね?」

 差し出されたスマホの画面を見て、ホクトは首を傾げた。

「なんだろう? そんなアプリ入れたかな?」

 ホクトの答えに、白砂サンは頷いた。

「うむ、やはりな……」
「何がですか? 今の質問の意味は?」
「君のスマホ、ペアリングされているんじゃないかと思ってね」
「はいいっ?!」

 ホクトはソファの上で跳ね起きる。

「ペアリングってなんじゃい?」
「ペアの現在分詞で、二つのものを組み合わせるという意味だね。今回のことに限って言えば、通話内容や個人情報などホクト君のスマホで行われた全てが、ペアリングされたもう一台のスマホでも行われていて、相手がその様子を見聞き出来る環境にあると言う意味だ。盗聴アプリもインストールされているようだから、遠隔操作で盗聴もされていると思うよ」

 見る間にホクトの顔が強張った。


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 その後、それぞれが持っているスマホのカメラを使ってビルの中を見て回り、呆れるほど大量のカメラと盗聴器を発見した。
 最初に白砂サンが見つけたのはACアダプターに擬態していたが、他にも火災報知器やハンガーフック、電球に擬態している物まであった。
 ちなみに白砂サンの背負っていたナップザックの中には、もっと本格的な隠しカメラと盗聴器を探知する機材が複数|入《ハイ》っていて、念入りに全部の部屋を調べてくれた。
「うは、スゲェ数だなぁ〜」
 ペントハウスの床にごっちゃりと積み上がった機器の山を眺めながら、それでもまだ余裕に状況を楽しんでいる様子のシノさんが言った。
「信じられない……アイツ、何考えてんだよ……?」
 従兄弟のイカレた所業に、驚きのあまり暗闇で卒倒したホクトは、ぶつけた後頭部を氷で冷やしながら応接セット|風《ふう》のソファで横になっている。
「んなこたぁコッチが聞きたいわ! ひとんちの風呂場から便所まで覗いてやがって、オマエの親戚迷惑過ぎだろ!」
 俺達が暗闇でスマホをかざしつつ、隠しカメラ探しをしているところに帰宅したエビセンは、その異様な空気に流石に少々面食らい、更に事情が判ったところでお怒り心頭モードに突入していた。
 幸いにして俺の部屋にはカメラは無かったが、敬一クン繋がりなのだろう、コグマとエビセンの住まいには、カメラも盗聴器もしっかり設置されていたのだ。
「海老坂、やったのは南さんで、天宮じゃない。天宮を責めても仕方が無いだろう」
「何言ってンだ! 天宮繋がりで出てきたお変人じゃねェか、天宮の所為だろが!」
「そんなことを言い出したらキリがないだろう」
「いいんだよケイ……。アイツ、ケイの入浴まで覗いてて、頭おかし過ぎだ。迷惑掛けて本当にすまない」
 二階のフライングVコンビの仕事場と部屋は盗撮を免除されていたが、一階の店舗は客席も厨房もアナログレコード部屋も盗撮されていたし、どういう繋がりなのかワカラナイが、白砂サンの住まいにもカメラと盗聴器が設置されていた。
「見られて困ることはしていないが、盗撮も盗聴も御免|被《こうむ》りたい。柊一、君からやめるようクレームしてくれ」
「そー言われてもなぁ。俺がやめろって言ったからって、ホントにやめるかどーかまでは請け負えないからなぁ」
「ミナミが変わり者で、猫以外に憩いを求められないことは知っている。彼がホクト君に極端なライヴァル心を燃やしていることも、彼の生い立ちから理解出来る。だがこれは少々やり過ぎだろう」
「白砂サン。俺はミナミの事情なんか理解してやれませんよ。警察に訴えます」
「俺も海老坂の意見に賛成です。いくら親族でも酷すぎる」
 珍しく、エビセンの意見にホクトが同調した。
「君達がそうすると言うなら、私に止める権利は無い。だが訴状に名前を連ね、協力することは出来ない。それはミナミが私の友人だからだけでなく、ミナミの不祥事がミナトにどんな余波をもたらすのか、想像が出来ないからだ。私はこれ以上、ミナトを大人の不始末に巻き込みたくない」
「俺も出来れば南さんを訴えるより、ミナト君の立場を優先したい」
 白砂サンと敬一クンにそう言われて、エビセンとホクトは顔を見合わせる。
 エビセンは肩を竦めて「しょーがねェな」と言い、ホクトも「ケイがそう言うなら」と頷く。
 すると白砂サンの隣に座っていたミナトがボソッと言った。
「あんな奴、おまわりさんに捕まっちゃえばいいんだ。聖一もあんな奴の友達なんて、やめた|方《ほう》がいいよ」
 ミナトは如何にも強情そうな目で周囲の大人を見ている。
 するとミナトの肩に手を置いた白砂サンが、その可愛げのない顔を、そっと覗き込んだ。
「だが、私がミナミの友人で無かったら、ミナトと知り合えなかったよ?」
 ミナトは白砂サンの言うことはちゃんと聞くらしい。
 不満そうだったが、それ以上は口を噤んだ。
 ミナトが不満ながらも納得した様子を見せたら、白砂サンは顔を上げ、視線をホクトに向ける。
「ホクト君。失礼だが、君のスマホを見せてもらえまいか?」
「え? 俺のスマホですか?」
 ホクトがポケットからスマホを取り出し白砂サンに渡すと、白砂サンはそれを少しいじってから、おもむろにホクトに向かって質問を始めた。
「これ、買ってどれくらいかね?」
「半年ぐらいだと思います」
「電池の減りが、早いと感じているかね?」
「そうなんですよ。|前《まえ》に使っていた物より早くて」
「このアプリ、何に使っているのかね?」
 差し出されたスマホの画面を見て、ホクトは首を傾げた。
「なんだろう? そんなアプリ入れたかな?」
 ホクトの答えに、白砂サンは頷いた。
「うむ、やはりな……」
「何がですか? 今の質問の意味は?」
「君のスマホ、ペアリングされているんじゃないかと思ってね」
「はいいっ?!」
 ホクトはソファの上で跳ね起きる。
「ペアリングってなんじゃい?」
「ペアの現在分詞で、二つのものを組み合わせるという意味だね。今回のことに限って言えば、通話内容や個人情報などホクト君のスマホで行われた全てが、ペアリングされたもう一台のスマホでも行われていて、相手がその様子を見聞き出来る環境にあると言う意味だ。盗聴アプリもインストールされているようだから、遠隔操作で盗聴もされていると思うよ」
 見る間にホクトの顔が強張った。