「ほえ〜〜、ビックシ!」
「兄さん、あのまま放っておいて、良いんですか?」
「イイもワルイもあそこまでやっちまったら、とりあえず双方の頭が冷えるのを待つしかナイじゃろ。んで、冷えたトコで様子見て、後悔やら未練やらあるよーじゃったら、話し合いの場を取り持ってやるのが、他人に出来るせいぜいのコトだぁな」
うむうむ……とか頷きながら、ワカッタようなコトを言ってるが。
シノさんの顔は、トンデモ内情をぶちまけた罵り合いをナマで鑑賞出来て、満悦至極なのが丸出しだった。
俺なんかあまりのトンデモ発言にたまげて、自分が罵り合いをしたみたいに心臓がバクバクしている。
「そうですね……。でも俺は、二人が何を揉めていたのかが分かりません。それで兄さん、先刻の質問なんですが……」
「う〜む、コトここに至ってもその意味を問うケイちゃん、本物の温室育ちだのう〜。メシマズめ、俺の轍を踏まぬようよっぽど過保護にしたな」
シノさんの言う "メシマズ" とは、シノさんの実母の椿サンのことだ。
「え? 温室がどうかしたんですか?」
「いや、なんでもナイ。ご休憩ってのは、ラブホのコトじゃよ」
「らぶほ?」
「うむ。ラブホテルを略してラブホ、モータリゼーションホテルなら略してモーテルだが、要するに使用途は同じだナ。ご宿泊とご休憩が選べて、ご休憩なら2時間が一般的な、アレのこっちゃだよ」
「休憩を2時間するために、ホテルを利用するんですか?」
「カラオケボックスで一発やるワケにゃいかんだろ?」
「いっぱつ?」
きょとんとしている敬一クンは、シノさんの説明がほとんど何も解ってないって顔だ。
まだ18歳の敬一クンが "ご休憩" って言い回しの意味が解らないのは、ギリギリで温室育ちと片付けられるかもしれない。
だがそれにしたって、シノさんにここまで説明されてもハナシが全く理解出来ない敬一クンの様子は、想像の斜め上どころかケタが外れている。
さすがのシノさんも説明に詰まってきたらしく、敬一クンの顔を見つめたまま、段々ナナメに傾いてきてしまったが、急になにかを思いついたように目を光らせた。
「この先の質問は、エビちゃんにしたほーがイイと思う!」
「海老坂に? なぜですか?」
「だって、俺よりエビちゃんのほーがインテリじゃん、説明が上手いと思うからさっ」
ニイッと笑って、シノさんは面倒事を体よくエビセンに押し付けてしまった。