@21話 文化委員
ー/ー
攻める……攻める恭吾。その手を休めることを知らない怒涛の大攻勢。
「そして次に!」
「はいはい……」
「去年の文化祭の後夜祭でフォークダンスを踊っただろ? 覚えているかい?」
「オクラホマミクサーでしょ?」
それを聞いて恭吾は満足そうな笑みを浮かべる。それを見て思い通りの言葉を言わされたらしいことに恋実は気付く。
しかしそれは決して悪い事ではないことも知っている、相手の思う壺にハマることは、こちら側に不利益でなければ相手のプライドを称える。
結果、自身にもラッキーを呼び込む。
「……正確には『藁の中の七面鳥』というんだ」
恋実は素直に『へぇ~』と感心してみせる。恋実のその反応を見て得意げに話を続ける恭吾。
「この曲で踊ると2分で10人、一人12秒の計算だ。ま、常識だね?!」
「……そんなの考えたこともないわよ」
恋実のこの言葉に今度は不快感を露わにする。忙しい男である。
「このバカチン! 女子と手を繋げる貴重なチャンスなんだぞ? それが何秒なのか、果たして永遠なのか……気にしない奴なんているはずがない」
「……」
『そうさ……気にしていない人間などいるはずがない……僕だけじゃない、僕だけじゃない……』
そう小声で独り繰り返し下を向く姿は、捨て猫のように怯えていた。
恋実が心配そうに覗き込むと、幻覚から醒めたように再び語り出す。
「……そして男子は58人、女子は62名。我々はあの時、重大な問題にぶつかった……」
「……揉めたね、確かに」
「そう、あろうことか『女子が二人、男子の側に行けばピッタリじゃん』なんてことを言う輩がいたからだ!」
カーテンが風で揺れる……窓はまだ開いたままだ。それに気付いて恋実は『肌寒いな』と感じる。閉めた窓は結露している。
不思議と今まで寒さを感じなかったのはきっと恭吾のおかげだ。それほどの熱量だった。
「恋実? おい聞いているのか?」
「あ、あれ、どうやって解決したんだっけ?」
この寒空の下ソフトボール部で頑張っている優香ちゃんのためにも、犯人を探し出すぞ、と決意し直す恋実。
彼女もまた現場と会議室の温度差に気付けない、そんな決意だ。
恋実の頭の中も結露し、窓を伝う水滴のように思考が流れているに違いなかった。
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「はいはい……」
「去年の文化祭の後夜祭でフォークダンスを踊っただろ? 覚えているかい?」
「オクラホマミクサーでしょ?」
それを聞いて恭吾は満足そうな笑みを浮かべる。それを見て思い通りの言葉を言わされたらしいことに恋実は気付く。
しかしそれは決して悪い事ではないことも知っている、相手の思う壺にハマることは、こちら側に不利益でなければ相手のプライドを称える。
結果、自身にもラッキーを呼び込む。
「……正確には『藁の中の七面鳥』というんだ」
恋実は素直に『へぇ~』と感心してみせる。恋実のその反応を見て得意げに話を続ける恭吾。
「この曲で踊ると2分で10人、一人12秒の計算だ。ま、常識だね?!」
「……そんなの考えたこともないわよ」
恋実のこの言葉に今度は不快感を露わにする。忙しい男である。
「このバカチン! 女子と手を繋げる貴重なチャンスなんだぞ? それが何秒なのか、果たして永遠なのか……気にしない奴なんているはずがない」
「……」
『そうさ……気にしていない人間などいるはずがない……僕だけじゃない、僕だけじゃない……』
そう小声で独り繰り返し下を向く姿は、捨て猫のように怯えていた。
恋実が心配そうに覗き込むと、幻覚から醒めたように再び語り出す。
「……そして男子は58人、女子は62名。我々はあの時、重大な問題にぶつかった……」
「……揉めたね、確かに」
「そう、あろうことか『女子が二人、男子の側に行けばピッタリじゃん』なんてことを言う輩がいたからだ!」
カーテンが風で揺れる……窓はまだ開いたままだ。それに気付いて恋実は『肌寒いな』と感じる。閉めた窓は結露している。
不思議と今まで寒さを感じなかったのはきっと恭吾のおかげだ。それほどの熱量だった。
「恋実? おい聞いているのか?」
「あ、あれ、どうやって解決したんだっけ?」
この寒空の下ソフトボール部で頑張っている優香ちゃんのためにも、犯人を探し出すぞ、と決意し直す恋実。
彼女もまた現場と会議室の温度差に気付けない、そんな決意だ。
恋実の頭の中も結露し、窓を伝う水滴のように思考が流れているに違いなかった。