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@17話

ー/ー





「天恵ちゃん、どんどん摩己に似てきてコワイわ。灯ちゃんが言ってたのも分かる」


 無邪気に笑いながら話す音穏に、この言葉を最初、真一たちは見逃した。




 


「あの、すみません、良かったら月下のお母さんの……摩己さんの写真って見せて頂けたりしませんか?」


 真一が恐る恐る会話に割り込む。


 


「なに? 天恵ちゃんの彼氏?」


「いやいやいやいや」「いえいえいえいえ」


 2人の声が重なる。気にせず音穏はマイペースに話を進める。


 


「高校生がこんなお店に居るなんて生意気ねなんて思ったら、今日はクリスマスイブだもんね、そっか、彼氏君、奮発したんだ」


「ちゃんと自分の分は自分で払いますっ!」


 天恵にきっぱりそう言われてしまうと、少しだけ男が廃る……。


 


「もう少し気温が低ければ、ホワイトクリスマスだったのにね……」


 外は小雨が降り出した。音穏のその言葉に釣られて2人は店の外を見る。


 


「雨だったら雪の方が良いですよね。積もらなければ、ですけど」


「私はどうせ一人者だから?! クリスマスイブに雨が降ろうが、血が降ろうが知ったこっちゃないけど?!」


 血が降るって……。間違っても『おばちゃん』と言わないよう気をつけなきゃ、と天恵が思ったのは言うまでもない。


 


「あたしは雨、ちょっと好きかな……」


 天恵がぽつりと呟いた。その言葉に真一は、降り出した雨を鬱陶しく思っていたのを一変させる。好きの人の言葉って、そういうものだ。人を変える力がある。


 


「あ、あぁ……。雨も悪く、はない、よな……」


「あたしね、雨の日に生まれたんだって」


 音穏は温かい目でそんな二人を見つめながら、笑って携帯端末を操作する。人当たりの良いおばちゃんだな、なんて思っていると、画面が2人に見えるよう自身の体ごと寄せてきた。


 


「ほらほら、これが高校の頃の摩己……」


 黒いイクラのおばちゃまがびっくりするのも頷ける、天恵は摩己の生き写しのようだった。目の前の天恵よりも画面の中の女性に心を奪われてしまうのは、


どこかアイドルに似て身近ではないという認識が恥ずかしさを薄めているからであろう。目の前の実物より素直に惹かれる。

 携帯端末の中の写真を次々と捲ると、当時の美貌と輝きが色褪せないまま、機械の中でお色直しのように次々と姿を変えて魅せる月下摩己。


 


「あれ? このマフラーって……」


 真一は天恵の座っている後ろのハンガーに掛かっているコートとマフラーに目を移す。そのマフラーは写真の中の摩己が巻いているのと同じものだった。


 


「うん、これ、お母さんの形見なんだ」


「摩己は10キロメートル以上、毎日自転車で通ってたからね。摩己のクリスマスカラーのマフラーと古い耳当ては冬のトレードマークだったのよね」


 音穏が遠く過去を見つめる。天恵のマフラーを見る目が優しい。


 


「耳当て?!」


「摩己ってさ、端正な顔立ちしてるのに昔っぽい素朴な耳当てしてるのが奥ゆかしいっていうかさ、男心をくすぐるっていうか……」


「耳当ては多分まだお祖母ちゃん家にあると思うな」


 天恵も音穏よりか少し新しい過去に、気持ちが戻ったようだ、同様に思い出の彼方へと、この場を離れた。それを此処に呼び戻す真一の一言。


 


「これ、ここのお店ですよね?!」


「そうよ、摩己もそうだし、今の天恵ちゃんのお義母さん、灯ちゃんも……何だったら月下明だってこのお店のファンなんだから!」


 別々ではあるが、確かに音穏の機械の中の記憶は、楽しそうに笑う笑顔の奥のテーブルに今日天恵が注文したのと同じ、丼から零れるほどイクラが溢れていた。


 


「あの……音穏おば……お姉さんは月下摩己さん、灯さん、それに明さんともお付き合いが?」


「そうよ? ! 摩己は学生時代からの親友、大学も一緒。灯ちゃんはマネージャーの後輩で月下くんは野球部の4番」


「…………」


 天恵と真一は顔を見合わせた。


 


「あなたたち、もう付き合っちゃった方がいいんじゃない? 私、学生時代からそう言う勘、得意だったんだから」


 


「音穏お姉さん……少し僕らに協力して頂けませんか?」




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「天恵ちゃん、どんどん摩己に似てきてコワイわ。灯ちゃんが言ってたのも分かる」
 無邪気に笑いながら話す音穏に、この言葉を最初、真一たちは見逃した。
「あの、すみません、良かったら月下のお母さんの……摩己さんの写真って見せて頂けたりしませんか?」
 真一が恐る恐る会話に割り込む。
「なに? 天恵ちゃんの彼氏?」
「いやいやいやいや」「いえいえいえいえ」
 2人の声が重なる。気にせず音穏はマイペースに話を進める。
「高校生がこんなお店に居るなんて生意気ねなんて思ったら、今日はクリスマスイブだもんね、そっか、彼氏君、奮発したんだ」
「ちゃんと自分の分は自分で払いますっ!」
 天恵にきっぱりそう言われてしまうと、少しだけ男が廃る……。
「もう少し気温が低ければ、ホワイトクリスマスだったのにね……」
 外は小雨が降り出した。音穏のその言葉に釣られて2人は店の外を見る。
「雨だったら雪の方が良いですよね。積もらなければ、ですけど」
「私はどうせ一人者だから?! クリスマスイブに雨が降ろうが、血が降ろうが知ったこっちゃないけど?!」
 血が降るって……。間違っても『おばちゃん』と言わないよう気をつけなきゃ、と天恵が思ったのは言うまでもない。
「あたしは雨、ちょっと好きかな……」
 天恵がぽつりと呟いた。その言葉に真一は、降り出した雨を鬱陶しく思っていたのを一変させる。好きの人の言葉って、そういうものだ。人を変える力がある。
「あ、あぁ……。雨も悪く、はない、よな……」
「あたしね、雨の日に生まれたんだって」
 音穏は温かい目でそんな二人を見つめながら、笑って携帯端末を操作する。人当たりの良いおばちゃんだな、なんて思っていると、画面が2人に見えるよう自身の体ごと寄せてきた。
「ほらほら、これが高校の頃の摩己……」
 黒いイクラのおばちゃまがびっくりするのも頷ける、天恵は摩己の生き写しのようだった。目の前の天恵よりも画面の中の女性に心を奪われてしまうのは、
どこかアイドルに似て身近ではないという認識が恥ずかしさを薄めているからであろう。目の前の実物より素直に惹かれる。
 携帯端末の中の写真を次々と捲ると、当時の美貌と輝きが色褪せないまま、機械の中でお色直しのように次々と姿を変えて魅せる月下摩己。
「あれ? このマフラーって……」
 真一は天恵の座っている後ろのハンガーに掛かっているコートとマフラーに目を移す。そのマフラーは写真の中の摩己が巻いているのと同じものだった。
「うん、これ、お母さんの形見なんだ」
「摩己は10キロメートル以上、毎日自転車で通ってたからね。摩己のクリスマスカラーのマフラーと古い耳当ては冬のトレードマークだったのよね」
 音穏が遠く過去を見つめる。天恵のマフラーを見る目が優しい。
「耳当て?!」
「摩己ってさ、端正な顔立ちしてるのに昔っぽい素朴な耳当てしてるのが奥ゆかしいっていうかさ、男心をくすぐるっていうか……」
「耳当ては多分まだお祖母ちゃん家にあると思うな」
 天恵も音穏よりか少し新しい過去に、気持ちが戻ったようだ、同様に思い出の彼方へと、この場を離れた。それを此処に呼び戻す真一の一言。
「これ、ここのお店ですよね?!」
「そうよ、摩己もそうだし、今の天恵ちゃんのお義母さん、灯ちゃんも……何だったら月下明だってこのお店のファンなんだから!」
 別々ではあるが、確かに音穏の機械の中の記憶は、楽しそうに笑う笑顔の奥のテーブルに今日天恵が注文したのと同じ、丼から零れるほどイクラが溢れていた。
「あの……音穏おば……お姉さんは月下摩己さん、灯さん、それに明さんともお付き合いが?」
「そうよ? ! 摩己は学生時代からの親友、大学も一緒。灯ちゃんはマネージャーの後輩で月下くんは野球部の4番」
「…………」
 天恵と真一は顔を見合わせた。
「あなたたち、もう付き合っちゃった方がいいんじゃない? 私、学生時代からそう言う勘、得意だったんだから」
「音穏お姉さん……少し僕らに協力して頂けませんか?」