@ 26話 ランチタイム
ー/ー
「ビブン、セキブン? いい気分? どっかのコンビニか?」
期末テスト間近。早いものでもうすぐ今年も終わろうとしている。
「2年生になると習うわよ、だからまだ知らなくても大丈夫よ」
「何で2年生の教科書で勉強してんだ?」
雪花の教科書を覗いたら、カーリングのストーンの絵が載っていたから勝人は思わず聞いた。
「これの説明では良くカーリングが使われるのよ」
「カーリングで一度投げた石は、止まらずに一定速度で進み続けるような動き⦅等速直線運動⦆をする⦅現実では、摩擦があるので止まる⦆。このときの石の位置と時間をシンプルに位置関数と呼ぶとすると、この位置関数から速度を求めることはできないか? そこで役に立つのが微分ってわけなのよね」
雪花に加えて、小夜香も応じる。
「何言ってるかちっとも分からねぇ」
「簡単にいうと、瞬間の速度を求めるのが『微分』、変わり続ける位置変化の積み重ね、つまり距離を追うのが『積分』ということ」
勉己が勝人に教える。勉己はドヤ顔になっていないか、心配になって雪花を盗み見る。
「そんなの『は・じ・き』だろ?」
「確かに小学校では、速度⦅速さ⦆=位置⦅距離⦆/時間で求められると教えられた。けど厳密に言うと『速度=位置を時間で微分したもの』が正しい定義なんだってさ、ややこしい」
めずらしく優理が勝人に同調気味に話に入る。
「速度は単位時間あたりの位置、変化率。これを速度関数は位置関数の微分である、という。速度関数がわかっていれば、移動距離は計算できるってわけね」
学佳も話に付いていける。久しぶりにみる学佳は中学生のころに比べてとても大人になったと感じる。その勝人の表情を見て、綾美は以前勝人が言った『好きな女のこと考えてた』の言葉を思い出し、学佳を睨む。
「どれだけ移動したか? そんなのそんな難しい名前必要なのか? 秒速2mで8秒動いたら、これは小学生でもわかるよね?」
「その言葉、嫌いだ」
勝人は香月の台詞に小学校の時のせっちゃんの言葉を思い出す。
この場には他にも綾美、大晴もいる。このメンバーで勉強をしているには理由がある。
* * *
「ねぇ雪花……雪花は香月くんが好きなんじゃないの?」
「え?」
雪花の掴んでいたプチトマトが箸から零れ落ちる。
小夜香と二人、昼休み、ランチタイム。向かい合わせに並べた机で食べる。周囲には他のクラスメイトたちもいる。
箸から離れたプチトマトは机でワンバウンドしてそのまま教室のタイルを転がって行った。
「うわっ! なんか踏んだっ!」
前から歩いてきたクラスの男子がそれを踏んでしまい、上履きの裏を確認している。プチトマトは無残に轢かれた姿を教室のタイルに晒していた。
「香月くん、雪花のタイプだと思ったんだけどなぁ?」
「か、香月くん?」
「そ、香月くん……」
「…………」
「じゃあ、勉己くんは?」
「え?」
再び驚いた雪花は、今度はミートボールを箸から落とした。それにハッと気づいた小夜香が自分の箸でミートボールを空中でキャッチすると口に入れる。
「ね、どうなのよ、雪花。香月くんは! それとも勉己くん?」
「ど、どうって言われても……」
「勉己くんは少しガリ勉っぽいけど、香月くんは理屈っぽい雪花に付いていけそうな頭は持っているから雪花と気も合いそうだし、顔も悪くない」
「私、そんなに理屈っぽいかな?」
「今はそんなのどうだっていいのよ、香月くんだって雪花に気があると思うんだけどなぁ」
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期末テスト間近。早いものでもうすぐ今年も終わろうとしている。
「2年生になると習うわよ、だからまだ知らなくても大丈夫よ」
「何で2年生の教科書で勉強してんだ?」
雪花の教科書を覗いたら、カーリングのストーンの絵が載っていたから勝人は思わず聞いた。
「これの説明では良くカーリングが使われるのよ」
「カーリングで一度投げた石は、止まらずに一定速度で進み続けるような動き⦅等速直線運動⦆をする⦅現実では、摩擦があるので止まる⦆。このときの石の位置と時間をシンプルに位置関数と呼ぶとすると、この位置関数から速度を求めることはできないか? そこで役に立つのが微分ってわけなのよね」
雪花に加えて、小夜香も応じる。
「何言ってるかちっとも分からねぇ」
「簡単にいうと、瞬間の速度を求めるのが『微分』、変わり続ける位置変化の積み重ね、つまり距離を追うのが『積分』ということ」
勉己が勝人に教える。勉己はドヤ顔になっていないか、心配になって雪花を盗み見る。
「そんなの『は・じ・き』だろ?」
「確かに小学校では、速度⦅速さ⦆=位置⦅距離⦆/時間で求められると教えられた。けど厳密に言うと『速度=位置を時間で微分したもの』が正しい定義なんだってさ、ややこしい」
めずらしく優理が勝人に同調気味に話に入る。
「速度は単位時間あたりの位置、変化率。これを速度関数は位置関数の微分である、という。速度関数がわかっていれば、移動距離は計算できるってわけね」
学佳も話に付いていける。久しぶりにみる学佳は中学生のころに比べてとても大人になったと感じる。その勝人の表情を見て、綾美は以前勝人が言った『好きな女のこと考えてた』の言葉を思い出し、学佳を睨む。
「どれだけ移動したか? そんなのそんな難しい名前必要なのか? 秒速2mで8秒動いたら、これは小学生でもわかるよね?」
「その言葉、嫌いだ」
勝人は香月の台詞に小学校の時のせっちゃんの言葉を思い出す。
この場には他にも綾美、大晴もいる。このメンバーで勉強をしているには理由がある。
* * *
「ねぇ雪花……雪花は香月くんが好きなんじゃないの?」
「え?」
雪花の掴んでいたプチトマトが箸から零れ落ちる。
小夜香と二人、昼休み、ランチタイム。向かい合わせに並べた机で食べる。周囲には他のクラスメイトたちもいる。
箸から離れたプチトマトは机でワンバウンドしてそのまま教室のタイルを転がって行った。
「うわっ! なんか踏んだっ!」
前から歩いてきたクラスの男子がそれを踏んでしまい、上履きの裏を確認している。プチトマトは無残に轢かれた姿を教室のタイルに晒していた。
「香月くん、雪花のタイプだと思ったんだけどなぁ?」
「か、香月くん?」
「そ、香月くん……」
「…………」
「じゃあ、勉己くんは?」
「え?」
再び驚いた雪花は、今度はミートボールを箸から落とした。それにハッと気づいた小夜香が自分の箸でミートボールを空中でキャッチすると口に入れる。
「ね、どうなのよ、雪花。香月くんは! それとも勉己くん?」
「ど、どうって言われても……」
「勉己くんは少しガリ勉っぽいけど、香月くんは理屈っぽい雪花に付いていけそうな頭は持っているから雪花と気も合いそうだし、顔も悪くない」
「私、そんなに理屈っぽいかな?」
「今はそんなのどうだっていいのよ、香月くんだって雪花に気があると思うんだけどなぁ」