@ 15話
ー/ー
「じゃ、いいか? 2投して一つでもハウスの中に止められたらお宅の言う通り、カーリングは軟弱なスポーツで、お宅はスポーツ万能ってことで……」
「何で2投なんだ?」
「カーリングは1試合10エンドで1人1エンド2投ずつだから、1エンド勝負ってことで」
「よくわかんねーけどへっ 簡単だよ、まぁ見てなって」
優理は『なんで俺が……』とぶつくさ言いながらも、発端を作った責任として磐に勝人の相手を指名された。
長さ約45.72mのカーリングシートには両端にハウスと呼ばれる円が描かれており、左右も前後も線対称となっている。
ハウスの中心部の半径は15cm、次が61cm、その次が122cm、そして一番外側の円が183cm。
ストーンの大きさは直径約29cm、重さ20㎏。下面は真ん中が窪んでいて、氷との接地面はリング状になっている。
ストーンを放さなければならない自身手前側のホッグラインから21.94m先のハウス手前のホッグラインに届かないのは失格。またハウス奥のバックラインを越えてもそのストーンは無効⦅失格⦆になる。
ハックライン⦅* ストーンを投げる時に使う蹴り台⦆からストーンを放すホッグラインまでは10m6cm。
「この靴を履いて、ホッグライン……このラインまでにストーンを離さなければいけない。俺が先攻で見本を見せてやる、よく見てろ」
ざっとカーリングシートの説明をすると、優理はスライダーと呼ばれるテフロンの板がついている靴と、もう一方の靴底にはグリッパーという滑らないカバーを取り付ける。
「……だってよ」
仕返しとばかりに勝人は優理を指さして綾美を見る。それを綾美は苦笑で返すしかできない。
「ほんじゃ、まぁ……1投目……」
そう言いながら赤のストーンと共に滑り出した優理。ロケットの切り離しのようにその身体からストーンだけが慣性の法則を貫いて分離し進んでいく。
優理が投じたストーンは回転が掛かることなく真直ぐ滑っていく。
「本来は仲間がいて、ストーンの行方をアシストしてくれるんだけど、今回は、ブラシで擦るスイープもフリーガードゾーンの細かいルールも無しってことで」
優理は独り言のように呟いたが、意味を理解する者は磐と綾美の2人だけしかいない。
「あれ? おいおい……大丈夫かいな? ありゃ、止まっちゃう……」
優理の放ったストーンの行方を追う香月は、思わずそう呟く。真直ぐに切り離されたストーンはハウスよりだいぶ手前の中心線よりやや右にずれたところで止まった。それを見た勝人が嘲るように言葉を落とす。
「何だ、ごちゃごちゃ言ってた割にはお前の方こそ丸の中に入れられないじゃねーか」
出番とばかりに意気揚々と準備をする勝人。
「おかしいな……」
勉己は思わず言葉が漏れた。
(そう、おかしい……)
それに気付いた雪花も黙って頷く。
(そう、何かおかしい)
雪花が感じたのは、オリンピック選手の息子である優理が、幾らアシストがないとはいえ、『こんなにも距離感を違えるものなのか』と言うことである。
「がんばれカッちゃん~」
チンたちが声援を送ると勝人は親指を立てて応える。その顔は自信に満ちている。
「なんでぇ~?! アイツも『カッちゃん』かよ……」
香月は勉己をみてそう呟いた。勉己も香月を見て愛想笑いをつくのだった。
「カッちゃんは『勝つ人』と書くからカッちゃんなんだ。だからきっと勝つ」
前チンが香月に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
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「何で2投なんだ?」
「カーリングは1試合10エンドで1人1エンド2投ずつだから、1エンド勝負ってことで」
「よくわかんねーけどへっ 簡単だよ、まぁ見てなって」
優理は『なんで俺が……』とぶつくさ言いながらも、発端を作った責任として磐に勝人の相手を指名された。
長さ約45.72mのカーリングシートには両端にハウスと呼ばれる円が描かれており、左右も前後も線対称となっている。
ハウスの中心部の半径は15cm、次が61cm、その次が122cm、そして一番外側の円が183cm。
ストーンの大きさは直径約29cm、重さ20㎏。下面は真ん中が窪んでいて、氷との接地面はリング状になっている。
ストーンを放さなければならない自身手前側のホッグラインから21.94m先のハウス手前のホッグラインに届かないのは失格。またハウス奥のバックラインを越えてもそのストーンは無効⦅失格⦆になる。
ハックライン⦅* ストーンを投げる時に使う蹴り台⦆からストーンを放すホッグラインまでは10m6cm。
「この靴を履いて、ホッグライン……このラインまでにストーンを離さなければいけない。俺が先攻で見本を見せてやる、よく見てろ」
ざっとカーリングシートの説明をすると、優理はスライダーと呼ばれるテフロンの板がついている靴と、もう一方の靴底にはグリッパーという滑らないカバーを取り付ける。
「……だってよ」
仕返しとばかりに勝人は優理を指さして綾美を見る。それを綾美は苦笑で返すしかできない。
「ほんじゃ、まぁ……1投目……」
そう言いながら赤のストーンと共に滑り出した優理。ロケットの切り離しのようにその身体からストーンだけが慣性の法則を貫いて分離し進んでいく。
優理が投じたストーンは回転が掛かることなく真直ぐ滑っていく。
「本来は仲間がいて、ストーンの行方をアシストしてくれるんだけど、今回は、ブラシで擦るスイープもフリーガードゾーンの細かいルールも無しってことで」
優理は独り言のように呟いたが、意味を理解する者は磐と綾美の2人だけしかいない。
「あれ? おいおい……大丈夫かいな? ありゃ、止まっちゃう……」
優理の放ったストーンの行方を追う香月は、思わずそう呟く。真直ぐに切り離されたストーンはハウスよりだいぶ手前の中心線よりやや右にずれたところで止まった。それを見た勝人が嘲るように言葉を落とす。
「何だ、ごちゃごちゃ言ってた割にはお前の方こそ丸の中に入れられないじゃねーか」
出番とばかりに意気揚々と準備をする勝人。
「おかしいな……」
勉己は思わず言葉が漏れた。
(そう、おかしい……)
それに気付いた雪花も黙って頷く。
(そう、何かおかしい)
雪花が感じたのは、オリンピック選手の息子である|優理《サラブレット》が、幾らアシストがないとはいえ、『こんなにも距離感を違えるものなのか』と言うことである。
「がんばれカッちゃん~」
チンたちが声援を送ると勝人は親指を立てて応える。その顔は自信に満ちている。
「なんでぇ~?! アイツも『カッちゃん』かよ……」
香月は勉己をみてそう呟いた。勉己も香月を見て愛想笑いをつくのだった。
「カッちゃんは『勝つ人』と書くからカッちゃんなんだ。だからきっと勝つ」
前チンが香月に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。