@ 11話
ー/ー
◇◆常ノ呂高校入学式◇◆
「冴棋 大晴さんですよね、私は原学佳と言います。こんにちは」
「なんで俺の名前知ってるの?」
男の髪は入試で見た時よりも明るい秋色になっていた。体に合った大声は教室中に行き渡った。
「う、え? えーと私、中学バスケやってて……あ、あの時はありがとうございました。あの、覚えてますか?」
学佳のこんなにもしおらしい姿をきっと、勉己も勝人も見たことがないはずだ。春の風が吹いた。暫く学佳の顔を見つめて考え込む大晴、学佳は恥ずかしさですぐ逸らした。
しばらく考え込んだ大晴が、お決まりの拳で手の平を叩くジェスチャーで分かりやすく『思い出した』とアピールしたのなら、
「あーあの時の! あれはアスリートの女子軽視なんてもんな話じゃないよな」
と、回想した。
ある大会の時、手違いで会場の女子更衣室が塞がっており、顧問が廊下で着替えろと学佳たちに指示した。これに偶然出くわした大晴が、その顧問と運営に物申したことで大いに揉めた。
「……あの試合見てました。3ピリ⦅3ピリオド⦆まで3P、12本、ブロックショット7本の大活躍! あの後なんで試合出なかったんですか?」
」
学佳が話し出すと、少し大晴の顔色が変わった。ここ、常ノ呂高校はスポーツが盛んな学校だ。だから大晴もこの学校までわざわざ通っていると思い込んでいた。さっきまで話していた試合は大晴がベンチに下がった第4ピリオドで逆転され負けたからであろうか? 学佳はそれに気付かず続ける。
「やめてくれ……その話はしたくない」
「冴棋くんはバスケ部だよね? 私もバスケ、つづけ……」
「バスケの話は止めてくれ」
「えっ? なんで?」
「俺はバスケットボールを辞めたんだ」
春の天気のように変化した空気はその場の気温を下げた。一人の男が学佳たちに近寄ったのなら、怪しくなったその雰囲気を調整するように周囲が囁いた。
「あの人、国立 優理だよね」
「ほら、お父さんがオリンピック選手の……」
「かっこいい……」
女子たちの注目が集まる。その所作に、その声に。
「誰? あのこ」
「かわいい……」
「名前なんて言ってた?」
「転べばいいのに」
クラスの男子たちも学佳に気付いて騒めきだす。その様子に、話し出しにくそうに優理が口を開いた。
「転べばってのだけ俺向けだろ……」
「……何か言った?」
「んにゃ、何も?」
思ったより低いその声質に、何か女子は安心感を覚える。
「ね、じゃ、君。俺とカーリングやらない?」
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◇◆常ノ呂高校入学式◇◆
「|冴棋 大晴《さえき たいせい》さんですよね、私は原学佳と言います。こんにちは」
「なんで俺の名前知ってるの?」
男の髪は入試で見た時よりも明るい秋色になっていた。体に合った大声は教室中に行き渡った。
「う、え? えーと私、中学バスケやってて……あ、あの時はありがとうございました。あの、覚えてますか?」
学佳のこんなにもしおらしい姿をきっと、勉己も勝人も見たことがないはずだ。春の風が吹いた。暫く学佳の顔を見つめて考え込む大晴、学佳は恥ずかしさですぐ逸らした。
しばらく考え込んだ大晴が、お決まりの拳で手の平を叩くジェスチャーで分かりやすく『思い出した』とアピールしたのなら、
「あーあの時の! あれはアスリートの女子軽視なんてもんな話じゃないよな」
と、回想した。
ある大会の時、手違いで会場の女子更衣室が塞がっており、顧問が廊下で着替えろと学佳たちに指示した。これに偶然出くわした大晴が、その顧問と運営に物申したことで大いに揉めた。
「……あの試合見てました。3ピリ⦅3ピリオド⦆まで3P、12本、ブロックショット7本の大活躍! あの後なんで試合出なかったんですか?」
」
学佳が話し出すと、少し大晴の顔色が変わった。ここ、常ノ呂高校はスポーツが盛んな学校だ。だから大晴もこの学校|まで《・・》わざわざ通っていると思い込んでいた。さっきまで話していた試合は大晴がベンチに下がった第4ピリオドで逆転され負けたからであろうか? 学佳はそれに気付かず続ける。
「やめてくれ……その話はしたくない」
「冴棋くんはバスケ部だよね? 私もバスケ、つづけ……」
「バスケの話は止めてくれ」
「えっ? なんで?」
「俺はバスケットボールを辞めたんだ」
春の天気のように変化した空気はその場の気温を下げた。一人の男が学佳たちに近寄ったのなら、怪しくなったその雰囲気を調整するように周囲が囁いた。
「あの人、|国立 優理《くにたち ゆうり》だよね」
「ほら、お父さんがオリンピック選手の……」
「かっこいい……」
女子たちの注目が集まる。その所作に、その声に。
「誰? あのこ」
「かわいい……」
「名前なんて言ってた?」
「転べばいいのに」
クラスの男子たちも学佳に気付いて騒めきだす。その様子に、話し出しにくそうに優理が口を開いた。
「|転べばって《最後》のだけ俺向けだろ……」
「……何か言った?」
「んにゃ、何も?」
思ったより低いその声質に、何か女子は安心感を覚える。
「ね、じゃ、君。俺とカーリングやらない?」