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@ 8話

ー/ー





「この三角と、あの三角が同じことを証明するなんて、何の役にも立たない」


 図形の証明なんて今まで生活してきた中で使ったことなど無い、そしてこの先もあり得ないだろう。相似だって同じだ。サッカーやバスケのシュートだってパスだって、ボールを送り出す長さや角度なんて体が知っていた、数字なんて必要なかった。ましてや生活する中で『デシリットル』は『ミリリットル』に完敗状態。デシリットルを覚えた意味もない。


 


「カッちゃんから言わせれば、スポーツは物理の世界で溢れてるんだって」


「物理?」


「勝人、バスケのとき、シュートの距離感ってどうしてる?



「体が覚えている。ゴールまでの距離を今いる位置から、リリース時の指先(・・)に掛かる感覚で大体入るかどうかまで分かる」


「ブザービート⦅* 終了直前に放たれたインプレーゴールのこと⦆狙うときどうするの?」」


「ゴールに向かって届くよう放るだけだ」


 


「バスケのシュートって気流を考えなければ、基本二等辺三角形なんだって」


「二等辺三角形?」


 学佳に変わって勉己が説明する。


 


「もし自分がゴールと同じ高さにいるのなら、リングまでの距離の丁度中間点で最高点に到達していれば慣性の法則と重力に従って、シュートを放った位置から頂点までと同じ距離と角度をもってボールは進むんだ」


「ゴールと同じ高さからジャンプショット打てねーよ」


 勝人は何だか得意の運動のことを、自分より劣っていると思われる勉己に教わるのが気に入らない。


 


「そうね、だからその延長線となる打点を三角関数で計算すれば、全ての位置からシュートの頂点をどこに来るように投げればゴールに届くか算出できるってわけ」


 再び学佳が口を挟む。因みに学佳は中学校からバスケ部に入った。そしてもちろんスポーツオールラウンダーの勝人はバスケだって得意だ。


 


「ただそれだけじゃシュートは入らない、でしょ?!」


 かわいく小首を傾げた学佳に、勝人は試合では見せたことのない動揺を表す。


 


「あ、当たり前だ!」


「できるだけ放物線を描いてリングとボールの角度を大きくして真上近くからボールが落ちるようにしたいしね」


「そうだろ。物理なんかでシュートが入ってたまるか!」


「だからワンハンドシュートなのよ」


「?」


「男子のワンハンドシュートはバックスピンが掛かる、バックスピンはボールに浮力を与える、だからゴールより低い位置から高い弧を描いて頂点の位置がシュートを打った位置より奥にできるのよ。ゴルフの高い球筋と同じ」


「ちょっと何言ってるか分かんない……」


 もはや勝人の頭には限界だった。


 


 しかしちょっとしたことで世界は変わる、若い世代は特に。


【0次元は『点』、一次元は『線』、二次元は『面』、三次元は『立体』。四次元は三次元体に時間をプラスした『時空』、立方体が動いた軌跡を含んだものを指す】


 なんかカッコ良かった。自分が放ったボール(立体)の軌跡がアニメーションのように思い浮かぶ。それを四次元空間と呼ぶのか……なぜか何かが吹っ切れた、突っ掛えていたものが何かわからないが、サーっと脳内の視界が開けてクリアになった気がした。


 思考を妨げていた何か。多分それは、難しくて面倒で嫌いなものとして認識されていた『数学』って言葉から解放された瞬間だった。


 そして勝人はやる気が出た。


 


「へ、こうなったら止まんねぇーぜ、俺は」


 


 期末テストの結果が返ってきた。




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「この三角と、あの三角が同じことを証明するなんて、何の役にも立たない」
 図形の証明なんて今まで生活してきた中で使ったことなど無い、そしてこの先もあり得ないだろう。相似だって同じだ。サッカーやバスケのシュートだってパスだって、ボールを送り出す長さや角度なんて体が知っていた、数字なんて必要なかった。ましてや生活する中で『デシリットル』は『ミリリットル』に完敗状態。デシリットルを覚えた意味もない。
「カッちゃんから言わせれば、スポーツは物理の世界で溢れてるんだって」
「物理?」
「勝人、バスケのとき、シュートの距離感ってどうしてる?
「体が覚えている。ゴールまでの距離を今いる位置から、リリース時の|指先《・・》に掛かる感覚で大体入るかどうかまで分かる」
「ブザービート⦅* 終了直前に放たれたインプレーゴールのこと⦆狙うときどうするの?」」
「ゴールに向かって届くよう放るだけだ」
「バスケのシュートって気流を考えなければ、基本二等辺三角形なんだって」
「二等辺三角形?」
 学佳に変わって勉己が説明する。
「もし自分がゴールと同じ高さにいるのなら、リングまでの距離の丁度中間点で最高点に到達していれば慣性の法則と重力に従って、シュートを放った位置から頂点までと同じ距離と角度をもってボールは進むんだ」
「ゴールと同じ高さからジャンプショット打てねーよ」
 勝人は何だか得意の運動のことを、自分より劣っていると思われる勉己に教わるのが気に入らない。
「そうね、だからその延長線となる打点を三角関数で計算すれば、全ての位置からシュートの頂点をどこに来るように投げればゴールに届くか算出できるってわけ」
 再び学佳が口を挟む。因みに学佳は中学校からバスケ部に入った。そしてもちろんスポーツオールラウンダーの勝人はバスケだって得意だ。
「ただそれだけじゃシュートは入らない、でしょ?!」
 かわいく小首を傾げた学佳に、勝人は試合では見せたことのない動揺を表す。
「あ、当たり前だ!」
「できるだけ放物線を描いてリングとボールの角度を大きくして真上近くからボールが落ちるようにしたいしね」
「そうだろ。物理なんかでシュートが入ってたまるか!」
「だからワンハンドシュートなのよ」
「?」
「男子のワンハンドシュートはバックスピンが掛かる、バックスピンはボールに浮力を与える、だからゴールより低い位置から高い弧を描いて頂点の位置がシュートを打った位置より奥にできるのよ。ゴルフの高い球筋と同じ」
「ちょっと何言ってるか分かんない……」
 もはや勝人の頭には限界だった。
 しかしちょっとしたことで世界は変わる、若い世代は特に。
【0次元は『点』、一次元は『線』、二次元は『面』、三次元は『立体』。四次元は三次元体に時間をプラスした『時空』、立方体が動いた軌跡を含んだものを指す】
 なんかカッコ良かった。自分が放った|ボール《立体》の軌跡がアニメーションのように思い浮かぶ。それを四次元空間と呼ぶのか……なぜか何かが吹っ切れた、突っ掛えていたものが何かわからないが、サーっと脳内の視界が開けてクリアになった気がした。
 思考を妨げていた何か。多分それは、難しくて面倒で嫌いなものとして認識されていた『数学』って言葉から解放された瞬間だった。
 そして勝人はやる気が出た。
「へ、こうなったら止まんねぇーぜ、俺は」
 期末テストの結果が返ってきた。