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@8話

ー/ー





「宮東、君は月下のことまだ好きなのかい?」


 再び言い当てられて、またも顔を火照らせる。今までのやり取りで確証を経てるだろうにわざわざ言葉にするなんて意地が悪い……。それを見てとった蓮水は真一の答えを待たずに話題を変えた。蓮水が何度目かの不敵な笑みを見せた気がする。


 


「もし相手がもっとヒントを必要としたのなら、パズルの余白部分をもう少し大きくしてあげたらいいさ」


「最初は普通のクロスワードパズルだったんだ、でもさすがだよ、キーワードが『横の7』だけですぐに見抜くなんて」


 


「端っからクロスワードパズルど真ん中だとは思ってなかったからさ。『黒マスは縦、横で連続しない』『黒マスで盤面を分断してはいけない』って言うルールを君が知らない訳がないさ。番号の振り方もクロスワードパズルに準じていない。それにこのキーワードならすぐ分かるさ。そしてピタゴラスイッチ……ワード自体はパズルに対して恐ろしくシンプルで良くできてる」


 


「蓮水にそう言われると安心する」


「宮東がピタゴラスイッチ(考え方)を大事にしてくれていて嬉しいよ。上手くいくと良いな」


「ありがとう」


 そう言って蓮水と別れた。お礼は言ったが、真一は蓮水がまだ天恵のことを想っている気がした、だから真一の気持ちに気付いたのではないだろうか? そんな不安が過っていた。


 


 


(ところで蓮水のやつ、アイツは今日ここに1人で何してたんだろう?)


 考えてみたが答えは見つかるはずもない。


 


** 12/26 **   


 


 天恵は父、明を静観していた。しかし明は送られてきた手紙を開封したものの、クロスワードを完成させるような意欲を見せなかった。やはり『いたずらか?』とか『新手の詐欺か?』的な感覚なかもしれない……いいや恐らく『なんだこれ』としか思っていないのであろう。パズルを完成するメリットなど見いだせるはずもないからだ。


 もう母親の灯の方にも手紙は届いたのを確認してあるが、灯の方も明同様であった。


 それでもこの年末、仕事も休みに入り、来年離婚を考えている現状の家庭環境で、大掃除なんてやる気も起きない。昨日からの休みの時間を持て余した明が、何気なしに置いてあったままのクロスワードパズルの紙を手に取った。


 


「ね、お父さん。あたし今度のバレンタインデーにチョコをあげようかと悩んでるんだけど、手作りがいいかな? それとも買った方がいいかな?」


「ん? なんだ本命か? 天恵は未だ彼氏いなかったんだな」


「んん……本命って言うか……まだ分かんない。まだ軽い気持ち、かな?」


「そうだな、手作りはやっぱり貰った男の方も意識するからな、軽い気持ちなら買ったものの方がいいんじゃないか?」


「でも、コンビニとかスーパーのいかにも市販品って言うのよりは、ちゃんと渡したいんだなぁ」


 女子高生が父親とこんな会話をするなんて、言えない。無論学校で浮いている天恵がそんな話をする友達なんていないが。


 


「じゃあ、あそこで買ったらいいんじゃないか?」


「あそこって、ボナペティ?!」


 わざとらしく、とぼけて見せる。


 


「ほら高校の近所のケーキ屋さん。有名だし昔は良く灯とも買いに行っただろ?!」


「ガトーショコラ!」


「そう、あそこのガトーショコラは、父さんが学生の頃から有名なんだ」


「そうなんだ。ね、それならお父さんたちの時からあったのかな? あの伝説……」


「伝説?」


「手作りガトーショコラの伝説よ、知らないの?」


「知らないな……」


「じゃ、いいわ。ありがとお父さん」


 娘に素直にお礼を言われて『ガトーショコラの伝説』を聞きそびれてしまう。どっかで聞き覚えのあるフレーズ……。


 


「どういたしまして。天恵も彼氏できたらお父さんに教えてな」


「お父さんにも買ってあげよっか?」


「いいよ、自分で買いに行くから」


「買うならポイントと忘れないで溜てよ、家の電話番号でできるから」


 これだけは強く言う。


 


「はいはい」


「あたし、ポイント集めてるから、絶対忘れないでよ」


 天恵は言いたいことだけ言うと、自分の部屋へ引きこもってしまった。こうなるとボナペティとガトーショコラが頭から消えない。寝ころびながらもう一度パズルの手紙を開いてみる……その日の午後、明はフラフラ出かけて行った。こっそりパズルの紙を覗いてみたのなら、横7の7マスに『ガトーショコラ』と書かれてあった。それを見て天恵は『よしっ!』とこぶしを握り、真一に急いで連絡した。




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「宮東、君は月下のことまだ好きなのかい?」
 再び言い当てられて、またも顔を火照らせる。今までのやり取りで確証を経てるだろうにわざわざ言葉にするなんて意地が悪い……。それを見てとった蓮水は真一の答えを待たずに話題を変えた。蓮水が何度目かの不敵な笑みを見せた気がする。
「もし相手がもっとヒントを必要としたのなら、パズルの余白部分をもう少し大きくしてあげたらいいさ」
「最初は普通のクロスワードパズルだったんだ、でもさすがだよ、キーワードが『横の7』だけですぐに見抜くなんて」
「端っからクロスワードパズルど真ん中だとは思ってなかったからさ。『黒マスは縦、横で連続しない』『黒マスで盤面を分断してはいけない』って言うルールを君が知らない訳がないさ。番号の振り方もクロスワードパズルに準じていない。それにこのキーワードならすぐ分かるさ。そしてピタゴラスイッチ……ワード自体はパズルに対して恐ろしくシンプルで良くできてる」
「蓮水にそう言われると安心する」
「宮東が|ピタゴラスイッチ《考え方》を大事にしてくれていて嬉しいよ。上手くいくと良いな」
「ありがとう」
 そう言って蓮水と別れた。お礼は言ったが、真一は蓮水がまだ天恵のことを想っている気がした、だから真一の気持ちに気付いたのではないだろうか? そんな不安が過っていた。
(ところで蓮水のやつ、アイツは今日ここに1人で何してたんだろう?)
 考えてみたが答えは見つかるはずもない。
** 12/26 **   
 天恵は父、明を静観していた。しかし明は送られてきた手紙を開封したものの、クロスワードを完成させるような意欲を見せなかった。やはり『いたずらか?』とか『新手の詐欺か?』的な感覚なかもしれない……いいや恐らく『なんだこれ』としか思っていないのであろう。パズルを完成するメリットなど見いだせるはずもないからだ。
 もう母親の灯の方にも手紙は届いたのを確認してあるが、灯の方も明同様であった。
 それでもこの年末、仕事も休みに入り、来年離婚を考えている現状の家庭環境で、大掃除なんてやる気も起きない。昨日からの休みの時間を持て余した明が、何気なしに置いてあったままのクロスワードパズルの紙を手に取った。
「ね、お父さん。あたし今度のバレンタインデーにチョコをあげようかと悩んでるんだけど、手作りがいいかな? それとも買った方がいいかな?」
「ん? なんだ本命か? 天恵は未だ彼氏いなかったんだな」
「んん……本命って言うか……まだ分かんない。まだ軽い気持ち、かな?」
「そうだな、手作りはやっぱり貰った男の方も意識するからな、軽い気持ちなら買ったものの方がいいんじゃないか?」
「でも、コンビニとかスーパーのいかにも市販品って言うのよりは、ちゃんと渡したいんだなぁ」
 女子高生が父親とこんな会話をするなんて、言えない。無論学校で浮いている天恵がそんな話をする友達なんていないが。
「じゃあ、あそこで買ったらいいんじゃないか?」
「あそこって、ボナペティ?!」
 わざとらしく、とぼけて見せる。
「ほら高校の近所のケーキ屋さん。有名だし昔は良く灯とも買いに行っただろ?!」
「ガトーショコラ!」
「そう、あそこのガトーショコラは、父さんが学生の頃から有名なんだ」
「そうなんだ。ね、それならお父さんたちの時からあったのかな? あの伝説……」
「伝説?」
「手作りガトーショコラの伝説よ、知らないの?」
「知らないな……」
「じゃ、いいわ。ありがとお父さん」
 娘に素直にお礼を言われて『ガトーショコラの伝説』を聞きそびれてしまう。どっかで聞き覚えのあるフレーズ……。
「どういたしまして。天恵も彼氏できたらお父さんに教えてな」
「お父さんにも買ってあげよっか?」
「いいよ、自分で買いに行くから」
「買うならポイントと忘れないで溜てよ、家の電話番号でできるから」
 これだけは強く言う。
「はいはい」
「あたし、ポイント集めてるから、絶対忘れないでよ」
 天恵は言いたいことだけ言うと、自分の部屋へ引きこもってしまった。こうなるとボナペティとガトーショコラが頭から消えない。寝ころびながらもう一度パズルの手紙を開いてみる……その日の午後、明はフラフラ出かけて行った。こっそりパズルの紙を覗いてみたのなら、横7の7マスに『ガトーショコラ』と書かれてあった。それを見て天恵は『よしっ!』とこぶしを握り、真一に急いで連絡した。