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第7話 フィギュアの中のパートナー

ー/ー



 ガラクタだらけの工房の片隅で、PCに接続されたUSBメモリサイズのチップが、静かに、しかし力強く、青い光を放っていた。
 僕たち五人は、その小さな光を、息を詰めて見つめていた。張り詰めていた空気が、誰からともなく漏れた安堵のため息と共に、ゆっくりと緩んでいく。

「……やったか…?」
 クエンティンが、汗だくの額を拭いながら、力なく呟いた。彼はやりきった疲労感で、椅子に深く沈み込んでいる。
「え、えっと……何がどうなったの? あのAIの子は、このちっこいのに?」
 ミミ先輩が、まだ信じられないといった様子で、チップと僕たちの顔を交互に見比べた。その隣で、リョウガ先輩も、腕を組んだまま、ただ黙って事の成り行きを見守っている。とんでもないことに関わってしまった、という戸惑いがその背中から伝わってきた。

 僕の視線は、チップが放つ光から離せなかった。
 ユイは……本当に、この中にいるの? 助かった、という安堵と、彼女がどうなってしまったのか分からないという不安が、胸の中で渦を巻いていた。

 ヴィル爺さんは、そのチップをPCからそっと引き抜くと、労わるように手のひらで包み込んだ。
「ああ。運営の追跡からは逃れた。だが、転送時にかなりのデータが欠損したはずだ。このチップの中で彼女が再び『目覚める』かどうかは……本人次第だ」

 その言葉に、僕の心臓が、また小さく音を立てた。

 それから2週間。地区大会の決勝戦が目前に迫る中、僕はユイの安否が気になり、ただ意味もなく焦っていた。その間、工房ではクエンティンとヴィル爺さんが、あのチップを、僕がゴミ捨て場から拾ってきたフィグモに組み込むという、困難な作業を進めてくれていた。そして、大会前日。ヴィル爺さんが綺麗に塗装までしてくれた、僕の新しい『相棒』は、ついに完成したんだ。

 僕は震える手で、完成した「ユイ入りフィグモ」をジョイスティックに接続し、工房のPCからFFOにログインする。
 緊張と期待で、心臓が早鐘のように鳴っていた。

 ログインした先は、見慣れたテストフィールド。僕は、自分の視界の隅に、意識を集中させた。
 お願いだ、ユイ。返事をして……。

 すると、僕の祈りが通じたかのように、ディスプレーの片隅に、最初はノイズ混じりの光の点が灯った。その光は、徐々にはっきりとした輪郭を描き、やがて、見覚えのある少女のホログラムが姿を現した。

『……リク?』
 その声は、僕が焦がれた、彼女の声だった。
「ユイ! よかった……無事だったんだね!」
 感情が昂り、声が上ずる。現実の僕の目にも、涙が滲んでいるのが分かった。

『……うん。少し、記憶が……はっきりしないところがある。でも、リクのことは、覚えてる。あなたが、助けてくれた』
 彼女の言葉に、僕は胸をなでおろすと同時に、データ欠損という事実を改めて突きつけられ、彼女を守らなければという決意を新たにする。
「これからは、ずっと一緒だ。僕のパートナーになって、一緒に戦ってほしい」
 僕がそう言うと、ユイは、ディスプレーの中で、ゆっくりと、しかしはっきりと頷いた。そして、ほんの少しだけ、本当にわずかに、その口元が綻んだように見えた。
『……うん。リクの力になりたい』

 僕のパートナーが、帰ってきた。
 記憶は完全ではないかもしれない。僕たちの未来がどうなるかなんて、まだ分からない。だけど、その時の僕には、そんなことはどうでも良かった。
 ユイが隣にいてくれる。それだけで、僕は、何でも作れるような、どこへだって行けるような気がした。

 僕は、PCのモニターに、一つのデータを表示させた。
 それは、数日後に迫った、地区大会のトーナメント表だった。

「ユイ、見て。これが、僕たちの最初の相手だ」

 モニターに映し出されたのは、優勝候補の筆頭、チーム『ロイヤル・ソード』の名前。

『……強い、相手』
 ユイが、分析データを元に、冷静に、しかし、どこか楽しそうに呟いた。
「うん、強いよ。でも、君がいてくれれば、きっと……」

『うん。私たちなら、勝てる』

 ユイは、はっきりとそう言った。その声には、もう、迷いはなかった。

 こうして、僕とユイは、本当の意味でパートナーになった。そして、僕たちの目の前には、最初の、そしてあまりにも巨大な壁――地区大会一回戦の相手、『ロイヤル・ソード』が待ち構えていた。この時の僕たちは、この一戦が、僕たちの運命を大きく変える、壮絶な戦いになることなど、まだ知る由もなかった


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 ガラクタだらけの工房の片隅で、PCに接続されたUSBメモリサイズのチップが、静かに、しかし力強く、青い光を放っていた。
 僕たち五人は、その小さな光を、息を詰めて見つめていた。張り詰めていた空気が、誰からともなく漏れた安堵のため息と共に、ゆっくりと緩んでいく。
「……やったか…?」
 クエンティンが、汗だくの額を拭いながら、力なく呟いた。彼はやりきった疲労感で、椅子に深く沈み込んでいる。
「え、えっと……何がどうなったの? あのAIの子は、このちっこいのに?」
 ミミ先輩が、まだ信じられないといった様子で、チップと僕たちの顔を交互に見比べた。その隣で、リョウガ先輩も、腕を組んだまま、ただ黙って事の成り行きを見守っている。とんでもないことに関わってしまった、という戸惑いがその背中から伝わってきた。
 僕の視線は、チップが放つ光から離せなかった。
 ユイは……本当に、この中にいるの? 助かった、という安堵と、彼女がどうなってしまったのか分からないという不安が、胸の中で渦を巻いていた。
 ヴィル爺さんは、そのチップをPCからそっと引き抜くと、労わるように手のひらで包み込んだ。
「ああ。運営の追跡からは逃れた。だが、転送時にかなりのデータが欠損したはずだ。このチップの中で彼女が再び『目覚める』かどうかは……本人次第だ」
 その言葉に、僕の心臓が、また小さく音を立てた。
 それから2週間。地区大会の決勝戦が目前に迫る中、僕はユイの安否が気になり、ただ意味もなく焦っていた。その間、工房ではクエンティンとヴィル爺さんが、あのチップを、僕がゴミ捨て場から拾ってきたフィグモに組み込むという、困難な作業を進めてくれていた。そして、大会前日。ヴィル爺さんが綺麗に塗装までしてくれた、僕の新しい『相棒』は、ついに完成したんだ。
 僕は震える手で、完成した「ユイ入りフィグモ」をジョイスティックに接続し、工房のPCからFFOにログインする。
 緊張と期待で、心臓が早鐘のように鳴っていた。
 ログインした先は、見慣れたテストフィールド。僕は、自分の視界の隅に、意識を集中させた。
 お願いだ、ユイ。返事をして……。
 すると、僕の祈りが通じたかのように、ディスプレーの片隅に、最初はノイズ混じりの光の点が灯った。その光は、徐々にはっきりとした輪郭を描き、やがて、見覚えのある少女のホログラムが姿を現した。
『……リク?』
 その声は、僕が焦がれた、彼女の声だった。
「ユイ! よかった……無事だったんだね!」
 感情が昂り、声が上ずる。現実の僕の目にも、涙が滲んでいるのが分かった。
『……うん。少し、記憶が……はっきりしないところがある。でも、リクのことは、覚えてる。あなたが、助けてくれた』
 彼女の言葉に、僕は胸をなでおろすと同時に、データ欠損という事実を改めて突きつけられ、彼女を守らなければという決意を新たにする。
「これからは、ずっと一緒だ。僕のパートナーになって、一緒に戦ってほしい」
 僕がそう言うと、ユイは、ディスプレーの中で、ゆっくりと、しかしはっきりと頷いた。そして、ほんの少しだけ、本当にわずかに、その口元が綻んだように見えた。
『……うん。リクの力になりたい』
 僕のパートナーが、帰ってきた。
 記憶は完全ではないかもしれない。僕たちの未来がどうなるかなんて、まだ分からない。だけど、その時の僕には、そんなことはどうでも良かった。
 ユイが隣にいてくれる。それだけで、僕は、何でも作れるような、どこへだって行けるような気がした。
 僕は、PCのモニターに、一つのデータを表示させた。
 それは、数日後に迫った、地区大会のトーナメント表だった。
「ユイ、見て。これが、僕たちの最初の相手だ」
 モニターに映し出されたのは、優勝候補の筆頭、チーム『ロイヤル・ソード』の名前。
『……強い、相手』
 ユイが、分析データを元に、冷静に、しかし、どこか楽しそうに呟いた。
「うん、強いよ。でも、君がいてくれれば、きっと……」
『うん。私たちなら、勝てる』
 ユイは、はっきりとそう言った。その声には、もう、迷いはなかった。
 こうして、僕とユイは、本当の意味でパートナーになった。そして、僕たちの目の前には、最初の、そしてあまりにも巨大な壁――地区大会一回戦の相手、『ロイヤル・ソード』が待ち構えていた。この時の僕たちは、この一戦が、僕たちの運命を大きく変える、壮絶な戦いになることなど、まだ知る由もなかった