八重歯が可愛い……そんな顔で言われたら……ゲレンデは魔法をかける……僕はモーグルの魅力よりも、きっと彼女の魅力に取りつかれたんだ。
「暖空、何言ってんだよ」 「ね?」
覗き込む暖空。
「モーグル……やってみたい……」 「なっ?!」
僕の言葉に驚いたのは千晶。
「やった!!」
彼女は飛び跳ねて喜ぶ。
「そんなに簡単なわけねーんだぞ、分かってるのか! コブ、滑ったことあんのかよ?!」
「……ない……」
「ほら……これだから都会育ちの恰好つけは……」
「千晶が教えてあげれば良いじゃん」
「何で俺が?」
「千晶、言ってたじゃん。フリースタイルモーグルはまだまだ競技人口が少ないって……もっともっと若い世代の日本のレベルを上げなければアメリカ、カナダ、フィンランド、ノルウェーとかの世界のトップと戦っていけないって」
「だからって……誰でもいいわけじゃないんだよ!」
「上村愛子選手もモーグル初めて4年で長野オリンピックに出たって……」
「そんな才能がコイツにあるわけねーだろ!」
千晶が僕の方を見る。僕だって男だ。何故だか学校では出せない意地が……負けない意志が沸き起こった。……環境が違うからだろうか?
千晶を見返す目に力が籠る。
「やってみたいんだ!!」
「……分かったよ……テストしてやる」
千晶は短く息を吐き捨てると、『仕方ない』とばかりのジェスチャーをする。そして僕に言う。
「ついて来い!」