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2話 優しさ

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 真っ白い地面。周囲にあるのは凍った世界、枯れた世界、幾つもある世界は全て人が住む事のできない滅んだ世界。

 だが、どれも美しく目を奪われる。滅んでいるから見れたものではないのではなく、滅んでいるから美しいとすら思えるような世界しかない。

 エンジェリアは、真っ白い地面を目的地もなく歩いた。

『ごめんなさい……そんな事、言うつもりなんてなかったの』

 エンジェリアと瓜二つの声。その声は泣いているようだった。

 なぜ泣いているのか、この声が誰のものなのか。エンジェリアには何もわからない。だが、その声を聞いているだけで自分まで泣きたくなってくる。

 エンジェリアは立ち止まってその声を聞いていた。

「……」

 暫くすると声は消えるとあたりは濃厚な霧で包み込まれた。

「その子が気になる? その声が気になる? 」

 霧の中から聞こえる声。

「だれ? 」

「あなたを知っている者とでも名乗っておこうかな。ここは、滅んだ世界の記憶を保管する場所。世界は一定の数を保っている。でも、今は異常に減っている。だから、あなたを呼んだの。世界全てが滅びる前に」

「エレにそんな事言われても関係ないの」

 世界の存続など今のエンジェリアに言われても理解すらしていない。関係性も知るわけがない。

「関係大有りだよ。世界の存続には……今は、これ以上言うわけにはいかないんだっけ。時が来たらまた話しましょう」

「……」

「ずっとここで見守っているよ。終焉の王……二十家の神聖種達に愛される唯一姫」

 その言葉を最後に、霧が全てを覆い隠した。

      **********

 目を覚ますと、昨晩の記憶がないエンジェリアにとっては見知らぬ場所にいる。

 エンジェリアは、発作を起こした後の事を思い出そうとするが靄がかかったように思い出す事ができない。

「おはよ」

「しゃぁーー! 」

 エンジェリアは、近くに置いてある縫いぐるみを一つぎゅっと抱きしめて側にいたゼノンとフォルに威嚇をして警戒心を見せる。

「えっと、落ち着いて」

 落ち着かせようとしているフォルを無視して、エンジェリアは縫いぐるみを抱きしめたまま扉の前まで走った。

 扉の前で振り返り、ゼノンとフォルを睨む。

「しゃぁー! 誘拐なの! お家帰して! 今すぐ帰して! 」

「熱が引いた途端これかよ」

「しゃぁー! エレに近づくななの! 」

 エンジェリアは、近づこうとするゼノンとフォルに威嚇をしまくり近づけないようにしている。

「見知らぬ婚約者に会ったら簡単に近づかせるくせに」

 昨晩の記憶がないエンジェリアは、ゼノンが婚約者の話を持ち出して更に威嚇が多くなる。

「しゃぁー! なんでそんな事知ってるの! しゃぁー! エレ教えてないもん! しゃぁー! さてはエレの事を調べたの! しゃぁー! とってもしゃぁなの! ……けほっ」

「エレ……」

 誰も側に寄らせようとしないエンジェリアをフォルが抱きしめた。

「しゃ」

「だめ。喉痛めたでしょ。ずっと威嚇して……怖いよね。突然こんな場所にいて。信じてくれなんて言わないけど、僕はあの国みたいに君を利用なんてしないよ」

「……信じないの……信じないの……嘘か本当かなんてわかんないのに……信じちゃだめなの……だめなの」

 信じたい。エンジェリアは、その想いをしまい込もうと自分に言い聞かせる。

「うん。信じないで。信じなくて良いから……」

 フォルの唇がエンジェリアの頬に触れた。

「好き……ううん。愛してる。ずっと……ずっと昔から。何度も転生しても変わらないんだ。ううん、変わってないわけじゃない。その想いは、強くなって、君の事ばかり考えて……諦めようとしても、だめなんだ。諦める事なんてできないんだ」

 エンジェリアに見抜く能力などないが、フォルのその言葉が嘘と思う事はできない。

「俺も、エレが大事。ずっと愛している。もう絶対に離さないんだ。本当はもっと早く、十年くらい前に救い出したかったんだ」

「……」

「……なんで、こんな事」

 想いが忘れた記憶に宿る感情を呼び様したんだろう。ゼノンのその想いに反応したかのようにエンジェリアの瞳から涙がこぼれ落ちる。

「エレ……お家帰して……エレは、お家に帰るの……愛されるの……ほっといて……優しくしないで」

 それでもエンジェリアは二人を選ばない。選べばエンジェリアの中で何かが壊れる。そんな気がしているからだ。

「……そんなふうに、優しさを全部突き放して辛くねぇのか? 」

「……そんなの、関係ないでしょ」

「関係ねぇよ。でも、俺はお前に笑って欲しいんだ。泣いてほしくねぇんだ。もう、あんな辛そうな顔を見たくねぇんだ。だから、頼むから、そんな顔しないでくれ……優しさを受け取って、笑ってくれ」

 エンジェリアは、無意識にゼノンの頭を撫でていた。ゼノンの言葉がなければその事に戸惑っていたんだろう。

「受け取って、くれるか? 」

 不安そうな瞳で見ているゼノンに、エンジェリアはこくりと頷いた。

「みゅ」

「……みゅ? みゅってどっちなんだ? 」

「みゅはみゅなの。おかしなゼノンでおかしゼノンなの……エレ、すぐに受け入れるむりなの。でも、努力はしてみるの……エレはエレなの」

 エンジェリアは、涙を拭い笑顔でそう答えた。

 ゼノンとフォルの強い想いにエンジェリアの愛されたいという呪縛が解けたのだろう。リブイン王国へ戻る事も、金稼ぎの事も、なぜそんな事を考えていたのかすら理解できない。

「……少しだけ仕事してくるよ。今日中に終わらせないといけない仕事あるから。ゼノン、今度こそエレと仲良くしなよ。一応兄妹なんだから」

「はっ? 」

「みゅぅ? 初耳なのー」

 ゼノンは驚いた表情を見せているが、エンジェリアは間抜けな声でそう言った。

「言ってなかった? 」

「言ってねぇよ! 兄妹みたいで伝わるわけねぇだろ! 」

「ごめん、ごめん。言い忘れてた。そういう事だから、あとよろしくー」

 フォルが楽しそうに部屋を出る。エンジェリアは、ゼノンとフォルのやり取りに笑いそうになりながら、ゼノンを見つめた。

「……ゼノン、おにぃちゃん違う。絶対、エレがおねぇちゃん」

「兄妹としてみれねぇのは認めよう。だが、お前が上は絶対ありえねぇだろ! エレは妹だ! 妹気質しかねぇんだよ! 俺が世話してやってお前は世話されるんだ。どちらかというとお前が妹だ」

 エンジェリアはきょとんと首を傾げた。

「お世話ってなぁに? 復元した本を取りに来てくれる事? ……むじゅかしいの。でも、エレ、がんばって変わる。優しさ受け取る。しゃぁもしない」

「しゃぁはしても良いが……そうか。そこからか。世話……そのうちわかるだろ。優しさを受け入れようとしてくれるなら、大人しくしてる事だな。その方がエレが元気になるのが早くなるから」

 エンジェリアがほとんど言葉を理解できていない事に気づいているのだろうか。ゼノンがエンジェリアにわかりやすいように教えてくれる。

 エンジェリアは、こくりと頷いた。

「まずは薬からだな……その前にスープか」

 ゼノンがスプーンでスープを掬い、エンジェリアの口へ持っていく。エンジェリアは、口を小さく開けると、溢れないように口の中へ入れてくれた。

「ぽかぽかさん……」

 エンジェリアがスープを完食するとゼノンが真緑色の液体が入った瓶を机から手に取った。

「フォルが用意したエレ用の薬だ」

「……これ、飲むのも優しさを受け取るって事? 」

「そうだな。これをフォルが渡したのは優しさ。それを受け入れるのもまた優しさだ」

 エンジェリアはゼノンから液体の入った瓶を受け取った。

 明らかに逃がそうなその液体を勇気を出して飲もうと瓶を口の近くに持っていく。
 持っていったが、飲むまではいかず口から離した。

 エンジェリアはそれを何度も繰り返している。

「……エレ」

「の、飲むの。がんばるの。エレは優しさを受け入れるの」

 露骨に嫌な顔をしていたのを気づかれたのだろう。ゼノンがまるで同志を見つけたかのような表情でエンジェリアを見る。

「きらいだよな。苦いもの。甘いものの方が良いよな。あとで飲まなくて良い方法がねぇかフォルに確認するか」

「苦いの反対なの。反対派なの」

 エンジェリアは、笑顔で右手をあげて「はーんーたい」と何度も言っていた。ゼノンも一緒になって言っている。

「……みゅ。楽しいの。誰かとお話する事ってこんなに楽しい事だったんだ」

 エンジェリアが知らなかった事。初めての感情。

「ゼノンが笑顔だからエレまで移っちゃうの……きっと、あそこにいたら永遠に手に入らなかったものなの。ぽかぽかでやじゃない」

 エンジェリアは両手を胸に当ててそう言った。

「仲良くやってるみたいだね」

「フォルなの。お疲れ様なの」

 エンジェリアは、仕事から戻ってきたフォルに抱きつきたい気持ちを抑え出迎えた。

「ありがと。僕のお姫様……ところでなんで薬飲んでないのかな? 」

「……にがにがさん」

「フォル、薬以外に方法ねぇのか? 」

 フォルがエンジェリアから薬を取り、口に含んだ。
 フォルの唇がエンジェリアの唇に重なる。口に含まれていた薬がエンジェリアの口の中に流れ込む。

 ごくん

 飲み込んだ音が聞こえると唇が離れた。

「……おぇ」

「よく頑張ったね。えらいよ。まだ疲れが取れていないだろうからもう少し寝な」

 眠りの魔法だろう。フォルの言葉を聞くと、エンジェリアは深い眠りについた。


次のエピソードへ進む 3話 新たな居場所


みんなのリアクション

 真っ白い地面。周囲にあるのは凍った世界、枯れた世界、幾つもある世界は全て人が住む事のできない滅んだ世界。
 だが、どれも美しく目を奪われる。滅んでいるから見れたものではないのではなく、滅んでいるから美しいとすら思えるような世界しかない。
 エンジェリアは、真っ白い地面を目的地もなく歩いた。
『ごめんなさい……そんな事、言うつもりなんてなかったの』
 エンジェリアと瓜二つの声。その声は泣いているようだった。
 なぜ泣いているのか、この声が誰のものなのか。エンジェリアには何もわからない。だが、その声を聞いているだけで自分まで泣きたくなってくる。
 エンジェリアは立ち止まってその声を聞いていた。
「……」
 暫くすると声は消えるとあたりは濃厚な霧で包み込まれた。
「その子が気になる? その声が気になる? 」
 霧の中から聞こえる声。
「だれ? 」
「あなたを知っている者とでも名乗っておこうかな。ここは、滅んだ世界の記憶を保管する場所。世界は一定の数を保っている。でも、今は異常に減っている。だから、あなたを呼んだの。世界全てが滅びる前に」
「エレにそんな事言われても関係ないの」
 世界の存続など今のエンジェリアに言われても理解すらしていない。関係性も知るわけがない。
「関係大有りだよ。世界の存続には……今は、これ以上言うわけにはいかないんだっけ。時が来たらまた話しましょう」
「……」
「ずっとここで見守っているよ。終焉の王……二十家の神聖種達に愛される唯一姫」
 その言葉を最後に、霧が全てを覆い隠した。
      **********
 目を覚ますと、昨晩の記憶がないエンジェリアにとっては見知らぬ場所にいる。
 エンジェリアは、発作を起こした後の事を思い出そうとするが靄がかかったように思い出す事ができない。
「おはよ」
「しゃぁーー! 」
 エンジェリアは、近くに置いてある縫いぐるみを一つぎゅっと抱きしめて側にいたゼノンとフォルに威嚇をして警戒心を見せる。
「えっと、落ち着いて」
 落ち着かせようとしているフォルを無視して、エンジェリアは縫いぐるみを抱きしめたまま扉の前まで走った。
 扉の前で振り返り、ゼノンとフォルを睨む。
「しゃぁー! 誘拐なの! お家帰して! 今すぐ帰して! 」
「熱が引いた途端これかよ」
「しゃぁー! エレに近づくななの! 」
 エンジェリアは、近づこうとするゼノンとフォルに威嚇をしまくり近づけないようにしている。
「見知らぬ婚約者に会ったら簡単に近づかせるくせに」
 昨晩の記憶がないエンジェリアは、ゼノンが婚約者の話を持ち出して更に威嚇が多くなる。
「しゃぁー! なんでそんな事知ってるの! しゃぁー! エレ教えてないもん! しゃぁー! さてはエレの事を調べたの! しゃぁー! とってもしゃぁなの! ……けほっ」
「エレ……」
 誰も側に寄らせようとしないエンジェリアをフォルが抱きしめた。
「しゃ」
「だめ。喉痛めたでしょ。ずっと威嚇して……怖いよね。突然こんな場所にいて。信じてくれなんて言わないけど、僕はあの国みたいに君を利用なんてしないよ」
「……信じないの……信じないの……嘘か本当かなんてわかんないのに……信じちゃだめなの……だめなの」
 信じたい。エンジェリアは、その想いをしまい込もうと自分に言い聞かせる。
「うん。信じないで。信じなくて良いから……」
 フォルの唇がエンジェリアの頬に触れた。
「好き……ううん。愛してる。ずっと……ずっと昔から。何度も転生しても変わらないんだ。ううん、変わってないわけじゃない。その想いは、強くなって、君の事ばかり考えて……諦めようとしても、だめなんだ。諦める事なんてできないんだ」
 エンジェリアに見抜く能力などないが、フォルのその言葉が嘘と思う事はできない。
「俺も、エレが大事。ずっと愛している。もう絶対に離さないんだ。本当はもっと早く、十年くらい前に救い出したかったんだ」
「……」
「……なんで、こんな事」
 想いが忘れた記憶に宿る感情を呼び様したんだろう。ゼノンのその想いに反応したかのようにエンジェリアの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「エレ……お家帰して……エレは、お家に帰るの……愛されるの……ほっといて……優しくしないで」
 それでもエンジェリアは二人を選ばない。選べばエンジェリアの中で何かが壊れる。そんな気がしているからだ。
「……そんなふうに、優しさを全部突き放して辛くねぇのか? 」
「……そんなの、関係ないでしょ」
「関係ねぇよ。でも、俺はお前に笑って欲しいんだ。泣いてほしくねぇんだ。もう、あんな辛そうな顔を見たくねぇんだ。だから、頼むから、そんな顔しないでくれ……優しさを受け取って、笑ってくれ」
 エンジェリアは、無意識にゼノンの頭を撫でていた。ゼノンの言葉がなければその事に戸惑っていたんだろう。
「受け取って、くれるか? 」
 不安そうな瞳で見ているゼノンに、エンジェリアはこくりと頷いた。
「みゅ」
「……みゅ? みゅってどっちなんだ? 」
「みゅはみゅなの。おかしなゼノンでおかしゼノンなの……エレ、すぐに受け入れるむりなの。でも、努力はしてみるの……エレはエレなの」
 エンジェリアは、涙を拭い笑顔でそう答えた。
 ゼノンとフォルの強い想いにエンジェリアの愛されたいという呪縛が解けたのだろう。リブイン王国へ戻る事も、金稼ぎの事も、なぜそんな事を考えていたのかすら理解できない。
「……少しだけ仕事してくるよ。今日中に終わらせないといけない仕事あるから。ゼノン、今度こそエレと仲良くしなよ。一応兄妹なんだから」
「はっ? 」
「みゅぅ? 初耳なのー」
 ゼノンは驚いた表情を見せているが、エンジェリアは間抜けな声でそう言った。
「言ってなかった? 」
「言ってねぇよ! 兄妹みたいで伝わるわけねぇだろ! 」
「ごめん、ごめん。言い忘れてた。そういう事だから、あとよろしくー」
 フォルが楽しそうに部屋を出る。エンジェリアは、ゼノンとフォルのやり取りに笑いそうになりながら、ゼノンを見つめた。
「……ゼノン、おにぃちゃん違う。絶対、エレがおねぇちゃん」
「兄妹としてみれねぇのは認めよう。だが、お前が上は絶対ありえねぇだろ! エレは妹だ! 妹気質しかねぇんだよ! 俺が世話してやってお前は世話されるんだ。どちらかというとお前が妹だ」
 エンジェリアはきょとんと首を傾げた。
「お世話ってなぁに? 復元した本を取りに来てくれる事? ……むじゅかしいの。でも、エレ、がんばって変わる。優しさ受け取る。しゃぁもしない」
「しゃぁはしても良いが……そうか。そこからか。世話……そのうちわかるだろ。優しさを受け入れようとしてくれるなら、大人しくしてる事だな。その方がエレが元気になるのが早くなるから」
 エンジェリアがほとんど言葉を理解できていない事に気づいているのだろうか。ゼノンがエンジェリアにわかりやすいように教えてくれる。
 エンジェリアは、こくりと頷いた。
「まずは薬からだな……その前にスープか」
 ゼノンがスプーンでスープを掬い、エンジェリアの口へ持っていく。エンジェリアは、口を小さく開けると、溢れないように口の中へ入れてくれた。
「ぽかぽかさん……」
 エンジェリアがスープを完食するとゼノンが真緑色の液体が入った瓶を机から手に取った。
「フォルが用意したエレ用の薬だ」
「……これ、飲むのも優しさを受け取るって事? 」
「そうだな。これをフォルが渡したのは優しさ。それを受け入れるのもまた優しさだ」
 エンジェリアはゼノンから液体の入った瓶を受け取った。
 明らかに逃がそうなその液体を勇気を出して飲もうと瓶を口の近くに持っていく。
 持っていったが、飲むまではいかず口から離した。
 エンジェリアはそれを何度も繰り返している。
「……エレ」
「の、飲むの。がんばるの。エレは優しさを受け入れるの」
 露骨に嫌な顔をしていたのを気づかれたのだろう。ゼノンがまるで同志を見つけたかのような表情でエンジェリアを見る。
「きらいだよな。苦いもの。甘いものの方が良いよな。あとで飲まなくて良い方法がねぇかフォルに確認するか」
「苦いの反対なの。反対派なの」
 エンジェリアは、笑顔で右手をあげて「はーんーたい」と何度も言っていた。ゼノンも一緒になって言っている。
「……みゅ。楽しいの。誰かとお話する事ってこんなに楽しい事だったんだ」
 エンジェリアが知らなかった事。初めての感情。
「ゼノンが笑顔だからエレまで移っちゃうの……きっと、あそこにいたら永遠に手に入らなかったものなの。ぽかぽかでやじゃない」
 エンジェリアは両手を胸に当ててそう言った。
「仲良くやってるみたいだね」
「フォルなの。お疲れ様なの」
 エンジェリアは、仕事から戻ってきたフォルに抱きつきたい気持ちを抑え出迎えた。
「ありがと。僕のお姫様……ところでなんで薬飲んでないのかな? 」
「……にがにがさん」
「フォル、薬以外に方法ねぇのか? 」
 フォルがエンジェリアから薬を取り、口に含んだ。
 フォルの唇がエンジェリアの唇に重なる。口に含まれていた薬がエンジェリアの口の中に流れ込む。
 ごくん
 飲み込んだ音が聞こえると唇が離れた。
「……おぇ」
「よく頑張ったね。えらいよ。まだ疲れが取れていないだろうからもう少し寝な」
 眠りの魔法だろう。フォルの言葉を聞くと、エンジェリアは深い眠りについた。