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恋愛は銘々稼ぎⅠ Love knows no common rule.

ー/ー



 好物なのか、マンションへ行く道すがら田中がアタリメを口に咥え、旨いよこれとオレらにも袋を回してきた。
 うん、こりゃ旨い。
 酒とつまみは事欠かねーよな、商店街(氏子)様様だワ。

 マンションに着くと、例の手順に田中が喰いついた。
 我慢できなかったのか、カギを貸してくれと騒がしいったらありゃしない。
 亘に鍵を貸してもらい、大興奮で解除してるよ。
  
 表示ボタンが消灯し最上階のボタンが点灯するのを見て、もう大はしゃぎだ。
 そんなに面白いかね、これ。
 この酔っ払いが。

「ほいよっ」
「うっしゃ」 
 部屋に着いてリビングのテーブルに持ってきた缶チューハイ入りの荷物を置く。

「どーぞ、缶酎ハイ、好きなの取って」
 紅緒が中身を見えやすくするため、袋を広げて底を上げてくれた。

「わーい、俺これがいい」
 抜け目なく、田中が目を付けてたらしい新作の酎ハイを取り上げる。
「じゃ、僕はこれでいいかな」
 亘は、適当に選んでるな。
 オレはっと、ブドウがあるじゃん、これにすっか。
 
「わーちゃん、氷ある?」
「ある、ある」
 残りの缶酎ハイを亘に持たせ、紅緒がキッチンへ連れて行く。
 うわー、見えない尻尾、全力でぶん回してるよあいつ。
 
 その後姿を眺めながら、俺はカウチではなく床へ腰を下ろした。
 背もたれ代わりにカウチのエンドに背を預け、足を延ばす。
 視線の先ではキッチンカウンター越しに、亘の顔と紅緒の頭が出たり引っ込んだりしてる。

「なぁ」
 と田中が床に直接座ったオレの前にしゃがむ。
 邪魔だな、おまえ。
 酎ハイの缶を開け、一口飲むとおもむろに座り胡坐をかいた。
 田中、じゃま。
 頭があぁ、もう!

「さっきさ、ビストロで言ってくれたじゃん。友情と恋愛は似てるって」
「ああ、あれな。友情と恋愛の愛情のベクトルが似てるって思ってたから」

 あ、え、なにやってんだ亘は。
 絶妙にじゃま、田中の頭、そしてその顔!

「俺マジで区別付かなくてさ」
 まぁ、そこはけっこう迷うよな。
「突然死んじゃうから直樹が。この感情をどうすればいいのか、全くわからなかった」
「うん」
 まぁ、その気持ち分からんでもないが。
「でも今」
 どうしたってんだ、え。
「あの時、俺、直樹の事好きだったんだと分かったよ」
 なんだよそれ、いきなり。
 
「ちょっと我慢して」
 そう言って、一気に缶酎ハイをあおる。
 それから、そのままオレに抱き着いてきた。
 何でそうなる? うわっ、亘がこっち見たよ。

「直樹ーーーっ」
 え、おい、何、田中、ええっ。 
「なんで死んだんだよ、馬鹿野郎っ」
 お前泣き上戸かよ、こら田中!
 
 と、天を仰ぐがどうしようもない。
 子供みたいに泣き出した田中の頭を撫でてやる。
 しょうがねーな。
 
 紅緒と言い、田中と言い。
 何で泣くかな。
 あやすように、抱きしめてやった。

 亘が口に指をあて、紅緒に合図を送ってる。
 それで、紅緒がオレに向かって頷いた。
 何抱えてるんだ、あいつら。
 亘がテラスバルコニーを指さすと、紅緒と一緒に抜き足でカウンターの前を通り、ベランダへと出て行った。

 直樹のやろう、何処までも兄ちゃんを困らせやがって。

 田中は、鼻すすってんじゃねーよ。
 人の胸にぐりぐり顔を押し付けんじゃねぇって、おい。
 
「あー、すっきりした」
 だから、顔押し付けたまま鼻をすするんじゃねえって。
「ありがとう。もう思い残すことは無いよ。これで、気持ちが吹っ切れた」
「ああ。そりゃよかった」

 なら、そろそろ顔を肩から離してもらえませんかね。




みんなのリアクション

 好物なのか、マンションへ行く道すがら田中がアタリメを口に咥え、旨いよこれとオレらにも袋を回してきた。
 うん、こりゃ旨い。
 酒とつまみは事欠かねーよな、|商店街《氏子》様様だワ。
 マンションに着くと、例の手順に田中が喰いついた。
 我慢できなかったのか、カギを貸してくれと騒がしいったらありゃしない。
 亘に鍵を貸してもらい、大興奮で解除してるよ。
 表示ボタンが消灯し最上階のボタンが点灯するのを見て、もう大はしゃぎだ。
 そんなに面白いかね、これ。
 この酔っ払いが。
「ほいよっ」
「うっしゃ」 
 部屋に着いてリビングのテーブルに持ってきた缶チューハイ入りの荷物を置く。
「どーぞ、缶酎ハイ、好きなの取って」
 紅緒が中身を見えやすくするため、袋を広げて底を上げてくれた。
「わーい、俺これがいい」
 抜け目なく、田中が目を付けてたらしい新作の酎ハイを取り上げる。
「じゃ、僕はこれでいいかな」
 亘は、適当に選んでるな。
 オレはっと、ブドウがあるじゃん、これにすっか。
「わーちゃん、氷ある?」
「ある、ある」
 残りの缶酎ハイを亘に持たせ、紅緒がキッチンへ連れて行く。
 うわー、見えない尻尾、全力でぶん回してるよあいつ。
 その後姿を眺めながら、俺はカウチではなく床へ腰を下ろした。
 背もたれ代わりにカウチのエンドに背を預け、足を延ばす。
 視線の先ではキッチンカウンター越しに、亘の顔と紅緒の頭が出たり引っ込んだりしてる。
「なぁ」
 と田中が床に直接座ったオレの前にしゃがむ。
 邪魔だな、おまえ。
 酎ハイの缶を開け、一口飲むとおもむろに座り胡坐をかいた。
 田中、じゃま。
 頭があぁ、もう!
「さっきさ、ビストロで言ってくれたじゃん。友情と恋愛は似てるって」
「ああ、あれな。友情と恋愛の愛情のベクトルが似てるって思ってたから」
 あ、え、なにやってんだ亘は。
 絶妙にじゃま、田中の頭、そしてその顔!
「俺マジで区別付かなくてさ」
 まぁ、そこはけっこう迷うよな。
「突然死んじゃうから直樹が。この感情をどうすればいいのか、全くわからなかった」
「うん」
 まぁ、その気持ち分からんでもないが。
「でも今」
 どうしたってんだ、え。
「あの時、俺、直樹の事好きだったんだと分かったよ」
 なんだよそれ、いきなり。
「ちょっと我慢して」
 そう言って、一気に缶酎ハイをあおる。
 それから、そのままオレに抱き着いてきた。
 何でそうなる? うわっ、亘がこっち見たよ。
「直樹ーーーっ」
 え、おい、何、田中、ええっ。 
「なんで死んだんだよ、馬鹿野郎っ」
 お前泣き上戸かよ、こら田中!
 と、天を仰ぐがどうしようもない。
 子供みたいに泣き出した田中の頭を撫でてやる。
 しょうがねーな。
 紅緒と言い、田中と言い。
 何で泣くかな。
 あやすように、抱きしめてやった。
 亘が口に指をあて、紅緒に合図を送ってる。
 それで、紅緒がオレに向かって頷いた。
 何抱えてるんだ、あいつら。
 亘がテラスバルコニーを指さすと、紅緒と一緒に抜き足でカウンターの前を通り、ベランダへと出て行った。
 直樹のやろう、何処までも兄ちゃんを困らせやがって。
 田中は、鼻すすってんじゃねーよ。
 人の胸にぐりぐり顔を押し付けんじゃねぇって、おい。
「あー、すっきりした」
 だから、顔押し付けたまま鼻をすするんじゃねえって。
「ありがとう。もう思い残すことは無いよ。これで、気持ちが吹っ切れた」
「ああ。そりゃよかった」
 なら、そろそろ顔を肩から離してもらえませんかね。