快適な睡眠の為のアンチテーゼ
ー/ー

二十一時に、SNSを更新する。
それが成田瑠美の日課になっていた。
顔が幼く純粋なイメージで見られる瑠美の特色を活かし、事務所の戦略も正統派なグラビアアイドルで売り出す方針で進んだ。
瑠美が数日、午後のSNS更新を疎かにした際、ネット上には二つの意見が投稿される。
グラビア撮影が続き体調を案じる優しい意見と、若手カメラマンと遊び歩いているのではないかという疑い。
その時に担当してくれたカメラマンは同年代で容姿が良く、遊び慣れていた。
カメラの腕とネームバリューは確かだが、素行に問題があるのは事務所側からも忠告を受けていた瑠美は、飲みに行こうと誘われたが相手にせずに帰宅し、撮影で疲れた瑠美は倒れるように眠る日々が続き、SNSの更新を怠ってしまった。
体に鞭を打ち撮影に励み、滞ってしまったSNSの更新。
何も知らないネットの住人に遊び歩いていると指摘されたのが悔しくて、それからの瑠美は仕事明けに必ず自宅での自撮りを、その日、その時間に撮ったと分かるように、アリバイ証明の為に投稿をした。
本日はサッカー日本代表の親善試合が行われているので、自宅で観戦中とテレビ観戦しながらお菓子を食べる姿を投稿する。
投稿を終えて、昨日の投稿に寄せられたリプを読み返す。
沢山の優しいリプ、褒め称えてくれるリプで埋め尽くされた優しい世界に、一つだけ場違いなリプがあった。
『こんなブスが、なんでグラビアやってんのw。顔も幼くて平均以下。胸がデカいだけじゃん』
テーゼと名乗るアカウントが、瑠美に一方的な否定的意見をリプに書き込む。
瑠美は、そのリプに対しグッドを押さずに、テーゼの投稿に対するリプを眺める。
多くの人が瑠美を守り、テーゼを責め、瑠美にこのアカウントをブロックするべきだと勧めてくる。
だが、瑠美はテーゼに対してブロックという処置は取らずに、放置をしている。
テーゼが書き込む内容は事実無根ではなく、目を背けたくなる事実だから。
スマホの画面をスクロールしていると、母からの着信があり、瑠美はそのまま通話に切り替える。
突然かかってきた母からの電話は、瑠美を心配するものだった。
夜遊びを疑われた時、瑠美は落ち込み、母によく愚痴を零していた。
その夜遊び疑惑が自然消滅し安心していたが、母もテーゼの存在に気が付き、瑠美が傷ついているのではないかと心配になったのだ。
酷い書き込みをする人はいるけれど、そんな人は少なくて、優しいファンばかりだから平気だよと伝え、安心させてから通話を終える。
優しいファンばかりだから、大丈夫。
それは母に伝えるのと同時に、自身に言い聞かせる意味も含まれていた。
本当は、不安だった。
今日の投稿だって、アリバイ作りでサッカー日本代表のネタにしたけれど、それがサッカーファンに媚びているものと受け取られるのでないかと不安になる。
不安を払拭する為に、瑠美は現在使っているアカウントから、もう一つのアカウントに切り替えて投稿する。
『売れるためにサッカーファンに媚びるとか、必死過ぎw』
そう書き込んで投稿すると、数分後にはその投稿に沢山のリプが送られ、瑠美を守ってくれる。
その優しいリプに癒された瑠美は、アカウントをテーゼから成田瑠美に戻し、安心して眠りについた。
了
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
二十一時に、SNSを更新する。
それが成田瑠美の日課になっていた。
顔が幼く純粋なイメージで見られる瑠美の特色を活かし、事務所の戦略も正統派なグラビアアイドルで売り出す方針で進んだ。
瑠美が数日、午後のSNS更新を疎かにした際、ネット上には二つの意見が投稿される。
グラビア撮影が続き体調を案じる優しい意見と、若手カメラマンと遊び歩いているのではないかという疑い。
その時に担当してくれたカメラマンは同年代で容姿が良く、遊び慣れていた。
カメラの腕とネームバリューは確かだが、素行に問題があるのは事務所側からも忠告を受けていた瑠美は、飲みに行こうと誘われたが相手にせずに帰宅し、撮影で疲れた瑠美は倒れるように眠る日々が続き、SNSの更新を怠ってしまった。
体に鞭を打ち撮影に励み、滞ってしまったSNSの更新。
何も知らないネットの住人に遊び歩いていると指摘されたのが悔しくて、それからの瑠美は仕事明けに必ず自宅での自撮りを、その日、その時間に撮ったと分かるように、アリバイ証明の為に投稿をした。
本日はサッカー日本代表の親善試合が行われているので、自宅で観戦中とテレビ観戦しながらお菓子を食べる姿を投稿する。
投稿を終えて、昨日の投稿に寄せられたリプを読み返す。
沢山の優しいリプ、褒め称えてくれるリプで埋め尽くされた優しい世界に、一つだけ場違いなリプがあった。
『こんなブスが、なんでグラビアやってんのw。顔も幼くて平均以下。胸がデカいだけじゃん』
テーゼと名乗るアカウントが、瑠美に一方的な否定的意見をリプに書き込む。
瑠美は、そのリプに対しグッドを押さずに、テーゼの投稿に対するリプを眺める。
多くの人が瑠美を守り、テーゼを責め、瑠美にこのアカウントをブロックするべきだと勧めてくる。
だが、瑠美はテーゼに対してブロックという処置は取らずに、放置をしている。
テーゼが書き込む内容は事実無根ではなく、目を背けたくなる事実だから。
スマホの画面をスクロールしていると、母からの着信があり、瑠美はそのまま通話に切り替える。
突然かかってきた母からの電話は、瑠美を心配するものだった。
夜遊びを疑われた時、瑠美は落ち込み、母によく愚痴を零していた。
その夜遊び疑惑が自然消滅し安心していたが、母もテーゼの存在に気が付き、瑠美が傷ついているのではないかと心配になったのだ。
酷い書き込みをする人はいるけれど、そんな人は少なくて、優しいファンばかりだから平気だよと伝え、安心させてから通話を終える。
優しいファンばかりだから、大丈夫。
それは母に伝えるのと同時に、自身に言い聞かせる意味も含まれていた。
本当は、不安だった。
今日の投稿だって、アリバイ作りでサッカー日本代表のネタにしたけれど、それがサッカーファンに媚びているものと受け取られるのでないかと不安になる。
不安を払拭する為に、瑠美は現在使っているアカウントから、もう一つのアカウントに切り替えて投稿する。
『売れるためにサッカーファンに媚びるとか、必死過ぎw』
そう書き込んで投稿すると、数分後にはその投稿に沢山のリプが送られ、瑠美を守ってくれる。
その優しいリプに癒された瑠美は、アカウントをテーゼから成田瑠美に戻し、安心して眠りについた。
了