第十一話 のっぺらぼうの家

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 野平さんの自宅に行くことまでに発展した僕はそれまでの時間をどのように過ごしたか、あまり記憶にない。確実にうかれていたことには間違い無い。
 もしかするとあの美巨乳に触れるチャンスは一度や二度ではないはず。うまくいけば一夜をともにするということも無きにしもあらずということだ。

 午後四時に仕事を終えた僕は一度自宅に戻る。この日、シフトの変更を受け入れてくれた先輩には今度奈良のお土産でも渡そう。たしか大仏プリンなんてのがあったな。
 熱いシャワーを浴び、僕は身支度を整える。お守り代わりに先日ドラッグストアで買ったコンドームを鞄の奥底に潜ませる。
 もしかすると遂にこれを使う日が来るのか。

 妙な緊張感を胸に潜ませながら住吉大社駅から難波駅に行き、近鉄難波駅に向かう。
 金曜日の夕方ということで地下街はかなりの人が歩いている。その人たちを避けながら、僕は駅に向かう。仕事の疲れがあるはずなのに、脳が興奮しているのかまるで眠くならない。
 近鉄電車に乗ること三十分ほどで近鉄奈良駅に到着した。鹿デザインの電車だったのが何気にテンションが上がる。
 そう言えば奈良にくるのは高校の時の校外学習以来だな。


 近鉄駅を出るとさすがは観光地というだけあって外国人観光客であふれかえっている。聞こえてくる外国語、多分英語ではないを聞き流しながら僕は歩く。外に出ると商店街が見える。思っているよりおしゃれそうな店が並んでいる。
 大阪とそう変わらない都会だと思っていたら僕を呼ぶ可愛らしい声がする。
「こんばんわ、水樹さん」
 この日の野平さんは白いダウンジャケットにトレーナー、スリムのデニムといった装いであった。おしゃれをしていない日常感が逆にそそられる。
 スリムのデニムに包まれたむっちり太ももが僕の視線を奪う。

「こ、こんばんわ」
 これから起こるかも知れない出来事に緊張と期待を覚えながら、僕は挨拶する。
 いやいや、今日は野平さんの家でご飯を食べてお酒を飲むだけだ。それ以上は期待しすぎてはいけない。僕はそう自分自身を落ち着かせる。

「野平さんの家はここから近いのですか?」
 僕は尋ねる。
「ちょっと距離がありますね。時間がもったいないのでタクシーで行きましょう」
 野平さんの提案でタクシー乗り場に向かう。
 タクシーに乗り、十五分ほどで住宅街に到着した。古都らしく古くて感じの良い民家が並んでいる。

 僕と野平さんはタクシー代を半分ずつだし、タクシーを降りる。少し歩いたところの小さな一軒家が野平さんの住む場所であった。
 女子の家に上がるのは生まれて初めてだ。
 初体験という言葉が頭に浮かび、一人で顔を熱くする。
「どうぞ入って下さい」
 野平さんに促され、僕はその家に入る。
 彼女が言うにはけっこう築年数は古いということだけどよく掃除されていて、まったく古さを感じさせない。
 僕はリビングに案内された。
 炬燵が置かれた和風の部屋だ。壁にはずらりと本棚が並べられている。そこにはびっしりと漫画やライトノベルが入れられている。
 やはり野平さんは生粋のオタクだということがわかる。本棚の上にはフィギュアがところ狭しと並べられている。もちろん仮面の幻想の天宮りりぃのフィギュアもあった。

「あの……晩ごはんなんですけどピザでもとろうかなと思うんですけど」
 すまなさそうな声で野平さんは巨乳の前で指をごにょごにょと絡ませる。
「本当は手料理でおもてなししたいんですけど、私料理が下手で……」
 あらあら、料理下手属性まであるのか。美巨乳オタクお姉さんに料理下手か。ふふっそれもまた良きかな。

「良いですね。僕、ピザ大好きです」
 これは正直な感想だ。僕はピザとかハンバーガーやフライドチキンなんかのジャンクフードが大好きだ。
 ということで野平さんはネットでピザとエビのサラダ、フライドチキンを頼むだ。
 僕はピザの代金を半分野平さんに手渡す。
「ありがとうございます。飲み物取ってきますね」
 そういうと野平さんはキッチンに向かう。
 事前に僕はアルコールに弱いと野平さんに告げてある。情けない話だけど缶チューハイ一本が限界だ。
 すぐに野平さんはレモンのチューハイとビール、グラスを二つ持ってくる。ビールは見たこともない柄の瓶であった。
「これどこのビールですか?」
 僕は訊く。
「ベルギーのビールですね。フルーティで美味しいですよ」
 野平さんはグラスにお酒を注ぐ。
「それでは乾杯」
 野平さんの声に合わせてグラスをカチンと合わせる。
 僕はお酒を一口飲む。すぐに体が熱くなる。
 野平さんとオタクトークしているとチャイムの音がする。僕たちは玄関にピザを取りに行く。
 家の中でもサングラスにマスクという姿に配達員の男性が明らかにぎょっとしている。やはりお店に行かなくて良かったと思う。
 配達員なら受け取るだけで済ませられる。

 料理を手分けして持ち、僕たちは炬燵に戻る。
 炬燵のテーブルの上にピザやフライドチキン、サラダがところ狭しと並べられる。
 ちょっとしたパーティーだ。
「あっそうだ。野平さん今日は寝かせませんよ」
 うふふっという吐息交じりの微笑みを残し、野平さんは立ち上がる。
 その言葉にアルコールのせいもあって僕の心臓は痛いほど速くなる。
 ほどなくして野平さんは帰っくる。
 野平さんは両手に小箱を持っていた。
 彼女が持っている小箱は「メタルギアード・レクイエム」というアニメのBlu-rayボックスであった。しかも劇場版つきの特装版であった。

 徹夜でアニメを観るから寝かせないということか。少し残念だけどそういうのも悪くないかなと思った。


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 野平さんの自宅に行くことまでに発展した僕はそれまでの時間をどのように過ごしたか、あまり記憶にない。確実にうかれていたことには間違い無い。 もしかするとあの美巨乳に触れるチャンスは一度や二度ではないはず。うまくいけば一夜をともにするということも無きにしもあらずということだ。
 午後四時に仕事を終えた僕は一度自宅に戻る。この日、シフトの変更を受け入れてくれた先輩には今度奈良のお土産でも渡そう。たしか大仏プリンなんてのがあったな。
 熱いシャワーを浴び、僕は身支度を整える。お守り代わりに先日ドラッグストアで買ったコンドームを鞄の奥底に潜ませる。
 もしかすると遂にこれを使う日が来るのか。
 妙な緊張感を胸に潜ませながら住吉大社駅から難波駅に行き、近鉄難波駅に向かう。
 金曜日の夕方ということで地下街はかなりの人が歩いている。その人たちを避けながら、僕は駅に向かう。仕事の疲れがあるはずなのに、脳が興奮しているのかまるで眠くならない。
 近鉄電車に乗ること三十分ほどで近鉄奈良駅に到着した。鹿デザインの電車だったのが何気にテンションが上がる。
 そう言えば奈良にくるのは高校の時の校外学習以来だな。
 近鉄駅を出るとさすがは観光地というだけあって外国人観光客であふれかえっている。聞こえてくる外国語、多分英語ではないを聞き流しながら僕は歩く。外に出ると商店街が見える。思っているよりおしゃれそうな店が並んでいる。
 大阪とそう変わらない都会だと思っていたら僕を呼ぶ可愛らしい声がする。
「こんばんわ、水樹さん」
 この日の野平さんは白いダウンジャケットにトレーナー、スリムのデニムといった装いであった。おしゃれをしていない日常感が逆にそそられる。
 スリムのデニムに包まれたむっちり太ももが僕の視線を奪う。
「こ、こんばんわ」
 これから起こるかも知れない出来事に緊張と期待を覚えながら、僕は挨拶する。
 いやいや、今日は野平さんの家でご飯を食べてお酒を飲むだけだ。それ以上は期待しすぎてはいけない。僕はそう自分自身を落ち着かせる。
「野平さんの家はここから近いのですか?」
 僕は尋ねる。
「ちょっと距離がありますね。時間がもったいないのでタクシーで行きましょう」
 野平さんの提案でタクシー乗り場に向かう。
 タクシーに乗り、十五分ほどで住宅街に到着した。古都らしく古くて感じの良い民家が並んでいる。
 僕と野平さんはタクシー代を半分ずつだし、タクシーを降りる。少し歩いたところの小さな一軒家が野平さんの住む場所であった。
 女子の家に上がるのは生まれて初めてだ。
 初体験という言葉が頭に浮かび、一人で顔を熱くする。
「どうぞ入って下さい」
 野平さんに促され、僕はその家に入る。
 彼女が言うにはけっこう築年数は古いということだけどよく掃除されていて、まったく古さを感じさせない。
 僕はリビングに案内された。
 炬燵が置かれた和風の部屋だ。壁にはずらりと本棚が並べられている。そこにはびっしりと漫画やライトノベルが入れられている。
 やはり野平さんは生粋のオタクだということがわかる。本棚の上にはフィギュアがところ狭しと並べられている。もちろん仮面の幻想の天宮りりぃのフィギュアもあった。
「あの……晩ごはんなんですけどピザでもとろうかなと思うんですけど」
 すまなさそうな声で野平さんは巨乳の前で指をごにょごにょと絡ませる。
「本当は手料理でおもてなししたいんですけど、私料理が下手で……」
 あらあら、料理下手属性まであるのか。美巨乳オタクお姉さんに料理下手か。ふふっそれもまた良きかな。
「良いですね。僕、ピザ大好きです」
 これは正直な感想だ。僕はピザとかハンバーガーやフライドチキンなんかのジャンクフードが大好きだ。
 ということで野平さんはネットでピザとエビのサラダ、フライドチキンを頼むだ。
 僕はピザの代金を半分野平さんに手渡す。
「ありがとうございます。飲み物取ってきますね」
 そういうと野平さんはキッチンに向かう。
 事前に僕はアルコールに弱いと野平さんに告げてある。情けない話だけど缶チューハイ一本が限界だ。
 すぐに野平さんはレモンのチューハイとビール、グラスを二つ持ってくる。ビールは見たこともない柄の瓶であった。
「これどこのビールですか?」
 僕は訊く。
「ベルギーのビールですね。フルーティで美味しいですよ」
 野平さんはグラスにお酒を注ぐ。
「それでは乾杯」
 野平さんの声に合わせてグラスをカチンと合わせる。
 僕はお酒を一口飲む。すぐに体が熱くなる。
 野平さんとオタクトークしているとチャイムの音がする。僕たちは玄関にピザを取りに行く。
 家の中でもサングラスにマスクという姿に配達員の男性が明らかにぎょっとしている。やはりお店に行かなくて良かったと思う。
 配達員なら受け取るだけで済ませられる。
 料理を手分けして持ち、僕たちは炬燵に戻る。
 炬燵のテーブルの上にピザやフライドチキン、サラダがところ狭しと並べられる。
 ちょっとしたパーティーだ。
「あっそうだ。野平さん今日は寝かせませんよ」
 うふふっという吐息交じりの微笑みを残し、野平さんは立ち上がる。
 その言葉にアルコールのせいもあって僕の心臓は痛いほど速くなる。
 ほどなくして野平さんは帰っくる。
 野平さんは両手に小箱を持っていた。
 彼女が持っている小箱は「メタルギアード・レクイエム」というアニメのBlu-rayボックスであった。しかも劇場版つきの特装版であった。
 徹夜でアニメを観るから寝かせないということか。少し残念だけどそういうのも悪くないかなと思った。