本木にまさる末木なしⅠ The original stands above all.
ー/ー
「こちらに、弟様の分を用意させていただきました」
オレと田中の間にサイドテーブルが設え、直樹の陰膳が用意されていた。
思わず田中を見る。
田中は優しい眼差しで陰膳を見つめていた。
こいつ、もしかして毎年こうやって……
「直樹が逝った後、俺辛くてさ、シェフに話を聞いてもらったんだ」
「そうか」
「いくら話しても尽きなくてさ、俺マジで直樹に惚れてたのかって思っちゃったよ」
言いながらアミューズブッシュの皿から1つ、アスパラのムースを取り直樹のそれに軽く当てた。
「友情と恋愛は似てるからな。間違うことだってあるさ」
そう応えたら、田中がこれ以上ないほど悲しい笑顔を向けてきた。
そんな顔で笑うなよ。
どうして今なんだよ。
もっと早く言ってくれたら。
「……」
思わず伸ばしたオレの右手を田中が掴み、握りしめる。
「今、直樹に言われて納得したよ。友情と恋愛ってホント、そっくりだな」
紅緒と話してたらしい亘が、こちらを気にしてなにか言いかけるがタイミングよく前菜が運ばれてきた。
「ホタルイカのマリネサラダ、ハーブとレモンの香りでございます」
食べ終えたアミューズが下がり、きれいに盛られた前菜が提供される。
ああそうだ、紅緒の好物だったな、これ。
「紅緒ホタルイカだ。どこがいい? 取ってやるよ」
「ありがとう、直ちゃん」
にまーと笑い、取り皿を寄せるとこの辺がいいと指で輪を描く。
この辺ですね、はいどうぞっと。
「わー、ちっこいのにちゃんとイカだよ」
「港から直送だからね、新鮮さが違うんだよ」
田中がそう言うと、立ち上がりオレからサーバーを取り上げる。
「後は俺がやるから、主賓は威張って座ってろ、な」
へいへい。お気遣いありがとうさんです。
手際よく田中が前菜のサラダを取り分ける。
続いて運ばれてきたスープのポットも田中が仕切って取り分けた。
「こちら、玉ねぎのビシソワーズ風冷製スープでございまぁ〜す」
サザエさんかよおまえは。
ガラスの容器に半透明な玉ねぎのスープが注がれる。
その上に田中が絶妙な加減でパセリを散らす。
「直樹の、どーぞ」
「盛り付け巧すぎじゃね、ナオトくん」
「そりゃどうも、直樹くん」
続いて紅緒、亘とスープを配る。
亘がスプーンですくって口に含むと、美味しかったのか笑顔が漏れた。
「これは美味しいね。玉ねぎのビシソワーズなんて初めてだよ」
「夏の名物なんだ、この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
紅緒は、ああイカ食ってやがる。
どれどれ。
これはレモンの酸味がすーっと口に馴染んで、ぜんぜんツンと来ない。始めてだ、こんなの。
「美味いな、このイカ」
「でしょ。お代わりしたいくらい美味しいの。レモン果汁がイカと相性良いのよ」
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
あはは、そりゃそうだ。亘は大食漢だからな。
言われて亘がイカを1つ、口に放り込む。
「あ、こりゃ美味いわ」
「でしょ。あ、このスープ本当に甘くて美味しいね。玉ねぎなのに、玉ねぎじゃないみたい」
そう言って、すくったスープを器にたらす。
「そうなんだよ。とろっとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
やれやれ、同じ物食べてるだけで亘のやつの嬉しそうな顔ときたら。
今夜はオレの彼女なんですけどね。
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オレと田中の間にサイドテーブルが設え、直樹の陰膳が用意されていた。
思わず田中を見る。
田中は優しい眼差しで陰膳を見つめていた。
こいつ、もしかして毎年こうやって……
「直樹が逝った後、俺辛くてさ、|シェフ《先生》に話を聞いてもらったんだ」
「そうか」
「いくら話しても尽きなくてさ、俺マジで直樹に惚れてたのかって思っちゃったよ」
言いながらアミューズブッシュの皿から1つ、アスパラのムースを取り直樹のそれに軽く当てた。
「友情と恋愛は似てるからな。間違うことだってあるさ」
そう応えたら、田中がこれ以上ないほど悲しい笑顔を向けてきた。
そんな顔で笑うなよ。
どうして今なんだよ。
もっと早く言ってくれたら。
「……」
思わず伸ばしたオレの右手を田中が掴み、握りしめる。
「今、直樹に言われて納得したよ。友情と恋愛ってホント、そっくりだな」
紅緒と話してたらしい亘が、こちらを気にしてなにか言いかけるがタイミングよく前菜が運ばれてきた。
「ホタルイカのマリネサラダ、ハーブとレモンの香りでございます」
食べ終えたアミューズが下がり、きれいに盛られた前菜が提供される。
ああそうだ、紅緒の好物だったな、これ。
「紅緒ホタルイカだ。どこがいい? 取ってやるよ」
「ありがとう、直ちゃん」
にまーと笑い、取り皿を寄せるとこの辺がいいと指で輪を描く。
この辺ですね、はいどうぞっと。
「わー、ちっこいのにちゃんとイカだよ」
「港から直送だからね、新鮮さが違うんだよ」
田中がそう言うと、立ち上がりオレからサーバーを取り上げる。
「後は俺がやるから、主賓は威張って座ってろ、な」
へいへい。お気遣いありがとうさんです。
手際よく田中が前菜のサラダを取り分ける。
続いて運ばれてきたスープのポットも田中が仕切って取り分けた。
「こちら、玉ねぎのビシソワーズ風冷製スープでございまぁ〜す」
サザエさんかよおまえは。
ガラスの容器に半透明な玉ねぎのスープが注がれる。
その上に田中が絶妙な加減でパセリを散らす。
「直樹の、どーぞ」
「盛り付け巧すぎじゃね、ナオトくん」
「そりゃどうも、直樹くん」
続いて紅緒、亘とスープを配る。
亘がスプーンですくって口に含むと、美味しかったのか笑顔が漏れた。
「これは美味しいね。玉ねぎのビシソワーズなんて初めてだよ」
「夏の名物なんだ、この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
紅緒は、ああイカ食ってやがる。
どれどれ。
これはレモンの酸味がすーっと口に馴染んで、ぜんぜんツンと来ない。始めてだ、こんなの。
「美味いな、このイカ」
「でしょ。お代わりしたいくらい美味しいの。レモン果汁がイカと相性良いのよ」
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
あはは、そりゃそうだ。亘は大食漢だからな。
言われて亘がイカを1つ、口に放り込む。
「あ、こりゃ美味いわ」
「でしょ。あ、このスープ本当に甘くて美味しいね。玉ねぎなのに、玉ねぎじゃないみたい」
そう言って、すくったスープを器にたらす。
「そうなんだよ。とろっとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
やれやれ、同じ物食べてるだけで亘のやつの嬉しそうな顔ときたら。
今夜はオレの彼女なんですけどね。