2
ー/ー倒れているコタローをちらりと確認。よし、気絶している……問題はヤバいケガとかしてるかどうか、だな。ワーコアラに気づかれないように、じっと。
落ち着け俺!
友達の命がかかってるんだ。人間の姿じゃダメなんだ。
あそこまで一瞬のうちに駆け抜けられる疾さと、あのデカいコアラと対等に渡り合えることのできる力が欲しいんだ!
でもって、深呼吸したら息をぐっと止めるんだっけ。
そうすると、胸の奥でだんだんでっかくなるドキドキ。そいつを自分の手で握りしめるように!
そして胸の奥で吠える! 遠吠えなんかじゃない。雄叫びだ!
また、ざわっと悪寒にも似た感覚。だけどそいつに心奪われるな。
息が苦しくなる一歩手前。くしゃみする時と同じだ。ぶっと身体の中のもの全部吹き出すような感じで。まちがってもおならじゃないから!
……せーの!
ズン!!!!!
地響きがした。デカいハンマーで全身を叩きつけるかのような、腹の中に入ってた風船が割れるみたいなすごい衝撃!
だけど地震とかじゃない。俺の身体だ!
一瞬のうちに、俺の身体が大きく変化したんだ!!
そう、あの時のワーウルフ。今まで自分の力じゃ変わることなんてできなかった。月夜の晩、知らず知らずのうちに変身していただけ。
それがいま、自分の意思で変われたんだ!
まばゆい青と白の毛並みに、ひとまわりサイズの増した身体。
細く長い手足の爪は鋭く伸びて、手のひらには肉球も付いている。んでもってピンと尖った鼻面と、お尻にはもふもふの巨大なしっぽ!
なんか、すごく懐かしく感じてきちゃった。
この姿になれなくて、もう半月……かな?
いやもうそんなこといい! 今は走る! 飛ぶ! そしてたどり着く!
時間が止まっていたかのような不思議な感覚。そして俺もここまで疾く動けるだなんて思わなかった。
人間の時なら五歩くらい大股でジャンプしなけりゃ無理だったのに。
片道一歩。往復二歩。
気絶したままのコタローを抱き上げ、俺は図書室を出た。
二歩目の時に破けた紙を踏んづけたから、思いっきりバランス崩しちゃったけどね、でも上手くいけた!
そうだ、まずはここから逃げ出さなきゃ。けどどこへ? どうやって?
バカな頭なりに、とにかく考えた。
保健室? いや開いてないし。
職員室? ダメだっつーの。
校長室? なに考えてるんだ俺。
あ……そうだ!
体育館だ!!!
あそこならコアラをおびき出して戦えるはず。それにこの校舎のすぐ隣だし。
コタローを抱えたまま柵を乗り越え、すぐさまぴょんと外の窓から飛び降りた。
5階の高さなんてなんともない。そのまま俺は体育館中へと逃げ込んだ。
時間にして……何秒だ? 5秒ってとこかな。いやそれはちょっと盛りすぎかな。けど俺がワーウルフに変身してからそれほど経ってはいないはずだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
まずは身体を大きく揺さぶった。
「う……ん?」
ゆっくりだけど目を開けてくれた、よし、平気だな。
「タケル……うぉわっ!?」
気がつくやいなや、あいつは立ち上がるなり、いきなり鞘に入ったままの刀を俺に突き出したんだ!
俺も叫び出しそうになっちまったけど声出したらコアラに気づかれる可能性あるし、ジェスチャーでなんとか!
両手と頭をぶんぶん振って、俺はタケルだってアピール。
「え、あ……タケル、変身できたんですね!」
そう、俺はひたすら頑張ってジェスチャー。
徐々に、刀を持った手が下りていく。分かってくれたみたいだ!
「つまり、この場所で一緒にコアラと戦おうってことですか?」
よっしゃ! 俺はブンブンと首を縦に振った。
「分かりました。ここであいつを迎え撃つんですね」
すっと音もなく、コタローは俺の前で、あの刀を……抜いた! しかも刀身が光ってるんだ、白くぼうっと。
「心配しないでください、あのコアラに反応して光ってるだけですから」
俺が原因かと思ってちょっと焦ったけどな。
幸いにもコタローにはケガは無かったように見える。本人曰く受け身を取ったらしくて、背中を打ったから気絶したんだって。
さて、と。おそらくコアラは俺たちの匂いを追ってここに来るはず。
問題はそこから。悔しいけど俺もコタローもまだ子供なんだ。真っ向から挑んだってたかが知れている。さっきコタローを倒したように、いとも簡単に俺たちは倒されてしまうだろう。
ならば、一体どうしたら……
ジン、お前ならどんなアドバイスしてくれるかな……
って違う! 奴のことなんて考えるな!
突然、バン! と体育館の鉄製の扉が轟音と共に吹っ飛んできた。
ゆっくりと中に入ってきた巨大な影。暗がりに気持ち悪いほど輝く真っ赤な目。あいつだ、コアラだ!
(俺はあいつの周りを駆け回って撹乱する。お前は奴が弱りきったスキを狙って斬るんだ)
……って作戦が通じたかどうかは分からないけど、コタローはコクリとうなづいてくれた。
どうもあのコアラは、続けざまに動くことが出来ないみたいなんだ。
元が鈍重だからかな? 一回行動するたびに俺たちを威嚇する「溜め」がある。
その弱点をどうにか突けば……! まずはこれだ!
コアラを体育館の真ん中へと誘い込み、ギリギリ攻撃が届かない距離でコタローには待っててもらう。
じっとだ。いつ奴が飛びかかってきてもいいように。
そして俺はというと……体育館の照明だ! 普通の教室の電灯よりめちゃくちゃ明るくて、目が眩むほど眩しい照明を全部つけてやった!
大きなライトが一斉につき、暗闇に慣れていたコアラの目にまばゆい光が突き刺さった。
「ゴァアッ!」巨大な吠え声でコアラは目を押さえた。
「コタロー! 今だ!」
俺は無意識のうちに叫んだ。あいつの神速の一撃で!
コタローがすうと大きく息をすると、あの刀身がわずかに光ったように見えた。
「獣の魂よ、在るべき場所へ……!」
その一歩が見えなかった。俺以上のスピードでコタローは瞬時にコアラの懐へと踏み込み……
「還れ!」
斬った……のか? 瞬きしている間に、コタローはもうコアラの背中にまわっていた。
襲い掛かろうとしていたコアラの身体は、糸が切れたみたいにそのまま崩れ落ちた。
それはコタローも同じ。神速の一歩に全力を使ったのか、肩で大きく息をしている。
だけど……日本刀で斬ったにしては流血もしてなさそうだし、本当にダメージ与えたのかな?
「この刀の真の力……つまりはは肉体を斬らずに、魂だけを切り離すのです」
それってまさか……この前ジンが話していた、スピリットとかいうやつか。
「しばらくすれば本来の人間の姿へと戻るはずです。僕らも戻らなければ」
そうだよな……図書室といい体育館といい、ここまでめちゃくちゃにしちゃったんだもん。あとは先生たちに任せるっきゃないし。
落ち着け俺!
友達の命がかかってるんだ。人間の姿じゃダメなんだ。
あそこまで一瞬のうちに駆け抜けられる疾さと、あのデカいコアラと対等に渡り合えることのできる力が欲しいんだ!
でもって、深呼吸したら息をぐっと止めるんだっけ。
そうすると、胸の奥でだんだんでっかくなるドキドキ。そいつを自分の手で握りしめるように!
そして胸の奥で吠える! 遠吠えなんかじゃない。雄叫びだ!
また、ざわっと悪寒にも似た感覚。だけどそいつに心奪われるな。
息が苦しくなる一歩手前。くしゃみする時と同じだ。ぶっと身体の中のもの全部吹き出すような感じで。まちがってもおならじゃないから!
……せーの!
ズン!!!!!
地響きがした。デカいハンマーで全身を叩きつけるかのような、腹の中に入ってた風船が割れるみたいなすごい衝撃!
だけど地震とかじゃない。俺の身体だ!
一瞬のうちに、俺の身体が大きく変化したんだ!!
そう、あの時のワーウルフ。今まで自分の力じゃ変わることなんてできなかった。月夜の晩、知らず知らずのうちに変身していただけ。
それがいま、自分の意思で変われたんだ!
まばゆい青と白の毛並みに、ひとまわりサイズの増した身体。
細く長い手足の爪は鋭く伸びて、手のひらには肉球も付いている。んでもってピンと尖った鼻面と、お尻にはもふもふの巨大なしっぽ!
なんか、すごく懐かしく感じてきちゃった。
この姿になれなくて、もう半月……かな?
いやもうそんなこといい! 今は走る! 飛ぶ! そしてたどり着く!
時間が止まっていたかのような不思議な感覚。そして俺もここまで疾く動けるだなんて思わなかった。
人間の時なら五歩くらい大股でジャンプしなけりゃ無理だったのに。
片道一歩。往復二歩。
気絶したままのコタローを抱き上げ、俺は図書室を出た。
二歩目の時に破けた紙を踏んづけたから、思いっきりバランス崩しちゃったけどね、でも上手くいけた!
そうだ、まずはここから逃げ出さなきゃ。けどどこへ? どうやって?
バカな頭なりに、とにかく考えた。
保健室? いや開いてないし。
職員室? ダメだっつーの。
校長室? なに考えてるんだ俺。
あ……そうだ!
体育館だ!!!
あそこならコアラをおびき出して戦えるはず。それにこの校舎のすぐ隣だし。
コタローを抱えたまま柵を乗り越え、すぐさまぴょんと外の窓から飛び降りた。
5階の高さなんてなんともない。そのまま俺は体育館中へと逃げ込んだ。
時間にして……何秒だ? 5秒ってとこかな。いやそれはちょっと盛りすぎかな。けど俺がワーウルフに変身してからそれほど経ってはいないはずだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
まずは身体を大きく揺さぶった。
「う……ん?」
ゆっくりだけど目を開けてくれた、よし、平気だな。
「タケル……うぉわっ!?」
気がつくやいなや、あいつは立ち上がるなり、いきなり鞘に入ったままの刀を俺に突き出したんだ!
俺も叫び出しそうになっちまったけど声出したらコアラに気づかれる可能性あるし、ジェスチャーでなんとか!
両手と頭をぶんぶん振って、俺はタケルだってアピール。
「え、あ……タケル、変身できたんですね!」
そう、俺はひたすら頑張ってジェスチャー。
徐々に、刀を持った手が下りていく。分かってくれたみたいだ!
「つまり、この場所で一緒にコアラと戦おうってことですか?」
よっしゃ! 俺はブンブンと首を縦に振った。
「分かりました。ここであいつを迎え撃つんですね」
すっと音もなく、コタローは俺の前で、あの刀を……抜いた! しかも刀身が光ってるんだ、白くぼうっと。
「心配しないでください、あのコアラに反応して光ってるだけですから」
俺が原因かと思ってちょっと焦ったけどな。
幸いにもコタローにはケガは無かったように見える。本人曰く受け身を取ったらしくて、背中を打ったから気絶したんだって。
さて、と。おそらくコアラは俺たちの匂いを追ってここに来るはず。
問題はそこから。悔しいけど俺もコタローもまだ子供なんだ。真っ向から挑んだってたかが知れている。さっきコタローを倒したように、いとも簡単に俺たちは倒されてしまうだろう。
ならば、一体どうしたら……
ジン、お前ならどんなアドバイスしてくれるかな……
って違う! 奴のことなんて考えるな!
突然、バン! と体育館の鉄製の扉が轟音と共に吹っ飛んできた。
ゆっくりと中に入ってきた巨大な影。暗がりに気持ち悪いほど輝く真っ赤な目。あいつだ、コアラだ!
(俺はあいつの周りを駆け回って撹乱する。お前は奴が弱りきったスキを狙って斬るんだ)
……って作戦が通じたかどうかは分からないけど、コタローはコクリとうなづいてくれた。
どうもあのコアラは、続けざまに動くことが出来ないみたいなんだ。
元が鈍重だからかな? 一回行動するたびに俺たちを威嚇する「溜め」がある。
その弱点をどうにか突けば……! まずはこれだ!
コアラを体育館の真ん中へと誘い込み、ギリギリ攻撃が届かない距離でコタローには待っててもらう。
じっとだ。いつ奴が飛びかかってきてもいいように。
そして俺はというと……体育館の照明だ! 普通の教室の電灯よりめちゃくちゃ明るくて、目が眩むほど眩しい照明を全部つけてやった!
大きなライトが一斉につき、暗闇に慣れていたコアラの目にまばゆい光が突き刺さった。
「ゴァアッ!」巨大な吠え声でコアラは目を押さえた。
「コタロー! 今だ!」
俺は無意識のうちに叫んだ。あいつの神速の一撃で!
コタローがすうと大きく息をすると、あの刀身がわずかに光ったように見えた。
「獣の魂よ、在るべき場所へ……!」
その一歩が見えなかった。俺以上のスピードでコタローは瞬時にコアラの懐へと踏み込み……
「還れ!」
斬った……のか? 瞬きしている間に、コタローはもうコアラの背中にまわっていた。
襲い掛かろうとしていたコアラの身体は、糸が切れたみたいにそのまま崩れ落ちた。
それはコタローも同じ。神速の一歩に全力を使ったのか、肩で大きく息をしている。
だけど……日本刀で斬ったにしては流血もしてなさそうだし、本当にダメージ与えたのかな?
「この刀の真の力……つまりはは肉体を斬らずに、魂だけを切り離すのです」
それってまさか……この前ジンが話していた、スピリットとかいうやつか。
「しばらくすれば本来の人間の姿へと戻るはずです。僕らも戻らなければ」
そうだよな……図書室といい体育館といい、ここまでめちゃくちゃにしちゃったんだもん。あとは先生たちに任せるっきゃないし。
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