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しかしこいつ、見ればみるほど時代錯誤な格好してるんだよな。よく見ると上着はけっこう汚れてるし、袴の裾はどっかのアニメかゲームのキャラかってくらいボロボロにすり切れてる。
マジで浮浪者っぽく見えちゃうんだよな。

「コタローは泊まる場所とかあるの?」
速攻で「いいえ」と返された。当たり前か、俺以上に金持ってなさそうだし。
そんなこと話してると突然スマホのメール着信メロディがピロンと。

ーごめん、会議長引きすぎちゃって、今夜は会社に泊まりになるー

……うっすら分かっていた。時計を見ると9時過ぎてて、いつもこの時間超えると姉貴は泊まりコースなんだよな。
けど姉貴の分はコタローが美味しそうに食べてくれたし。

「なあ、よかったら今夜うちに泊まらねえか?」
言った直後に自己嫌悪。何考えてるんだ俺、バカか俺!? ドラマとかマンガと勘違いしてねえか?
いくら俺と同い年ったってこいつ時代錯誤のサムライの格好したホームレスそのものだぞ! 寝てる最中に財布持ってかれたらどーすんだ?

……あ、いや。別に盗まれても困るほどの大金は持ってないし、そもそもカネになるものすらこの家には置いてねーし。だいいちテレビだって置いてないもん。

「え、そこまでは、僕は……」やっぱりそうだよな、あいつめっちゃ困惑してるし。
「お金ないですし、それに何も返せるものを持ち合わせてません」
「別に構わねーよ、一晩くらい」
もちろん明日の朝ごはんも俺が作るし。なんだか楽しくなってきちゃった。今まで俺の家には誰も泊めたことなんてない。見ての通り他の友達とは違うからね。姉貴と2人暮らしでおまけに家事の一才は俺が引き受けてるんだ。みーんな遠慮しちゃうのがオチ。

それに、コタローのことちょっと放っておけない気持ちもあるし。

「そういえば……」と、またあいつは聞いてきた。
「狼男なのに自分の家があるって、ちょっと疑問なんですが」
やっべええええええええええええええ!
慌てて俺の手を見た、鼻先を触ってみた、しっぽをこねくり回した。
そうだ、まだ俺は変身したまんまじゃねーか! つーかどーやったら戻れるんだよ!

俺からもどうにか全てを説明した。
いつしかこんな体質になっちまったこと。元はちゃんとした人間で、コタローと同じ年齢で背格好で。ンでもって名前は……
「狩野タケル。狩りの野原でカノウな。もちろん呼び捨てでいいから」
「タケル……かっこいい名前ですね」
その言葉にちょっと照れちゃった。

「じゃあ、またご縁があれば……ご飯美味しかったです」
と言ってコタローは立ち上がった時だった。
「痛っ……!」と突然しゃがみ込んじゃったんだ!
ずっと左足のとこ押さえたまま。え、画鋲かなんか落ちてた?
「えっと……いや、大丈夫、ですから!」
そんなこと言ってるけど、思いっきり我慢してるのは分かる。だっておでこに汗が浮かんできてるし!

「血マメができたのずっと我慢してたら、潰れちゃって」
無理やり座らせて押さえてる足を見たんだけど……

うわ、足の裏すっげえ真っ黒! まさかコタロー……ずっと裸足で歩いてきたとか?


ええいこの際そんなことはどーだっていい! バイ菌入ったらどうすんだよ!
とにかく先に手当てだ、まず足の裏をきれいに風呂場へ!

しかし今の俺はワーウルフのままなんだけど、手の指が長くなったわ爪が長いわで細かい作業がやりづれーのなんのって。おかげでコタローの足に包帯巻くのに普通の倍以上時間かかったかも。
⭐︎⭐︎⭐︎
ってなわけで時代錯誤な侍なコタローを今晩泊まらすことになったんだけど……

「だからさあ、すっげ汚れてるんだしその服。今から洗濯して干せばどうにか間に合うから!」
「いくらタケルのお願いといっても、それだけはお断りします」
頑固だ。つまりこの服は一張羅だってことで、絶対洗いたくないんだって頑なに断られた。
なんでも侍の精神が失われてしまうとかで……そっちの方が意味不明だ。
まさかとは思うが、どこぞのマンガみたいに実は女の子だったり……ってことでもなさそう。まあそれに関しては安心かな。

俺も疲れてきたし、まずは布団敷いて寝ることが先決だ。
姉貴の布団には触れさせたくないし、かといって来客用のなんで持ってない。つまりは俺の布団でどうにか肩並べて一夜を明かすってことに。
おまけに俺は変身がいまだに解けない。以前話した通り、ワーウルフ状態だと体格もデカくなってるんだよね、一回り……いや二回りくらいか?
「布団で寝られるなんて……何ヵ月ぶりかな」
そんなコタローの笑顔が、俺にはとても嬉しく感じられたんだ。
そして……おやすみの言葉もそこそこに、俺も疲れが溜まっていたからか一気に眠りにつけた。

朝飯はなに作ろうか……ぐう。

⭐︎⭐︎⭐︎

……どのくらい眠ってたんだろう。カーテンから眩しい光が漏れているから朝だってことはすぐ分かる。
だけど……コタローがいない! ずっと隣で寝てたはずのコタローが!
布団から飛び起きるともう一個驚きが。
俺の身体は元の人間へと戻っていたんだ。そりゃ確かに筋肉痛はしたけど、以前ほどじゃない。学校でマラソン大会した翌日くらいの痛みかな。イマイチ分からんけど。

でもってコタローはといえば。
「おはようございます! 台所汚れてたんで綺麗にしましたから」なんてあいつは笑顔で俺に言ってくれた。
けど早起きだなコタロー。やっぱりそういう生活が身体に染み付いてるのかな?

「それなんですけど……」と、あいつは戸惑った顔で、まだ布団の上の俺の元へと来た。
なんなんだ一体。つーか人間の俺に驚いたとかかな。
「僕たち、確か隣同士、肩を並べて寝ていたはずなのに、目を開けたらいきなり僕の顔の前にタケルの足の裏があったんです。で、その……」
確か姉貴にも言われてたんだよな。俺の寝相って最悪だって……
けど問題はそこじゃなかったんだ。

「タケルの足がすごく臭くって、それで目が覚めちゃって」
やっべええええええええええ!!!
俺はすっげえ申し訳なくなって思わずその場でコタローに土下座しちゃってた。


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しかしこいつ、見ればみるほど時代錯誤な格好してるんだよな。よく見ると上着はけっこう汚れてるし、袴の裾はどっかのアニメかゲームのキャラかってくらいボロボロにすり切れてる。
マジで浮浪者っぽく見えちゃうんだよな。
「コタローは泊まる場所とかあるの?」
速攻で「いいえ」と返された。当たり前か、俺以上に金持ってなさそうだし。
そんなこと話してると突然スマホのメール着信メロディがピロンと。
ーごめん、会議長引きすぎちゃって、今夜は会社に泊まりになるー
……うっすら分かっていた。時計を見ると9時過ぎてて、いつもこの時間超えると姉貴は泊まりコースなんだよな。
けど姉貴の分はコタローが美味しそうに食べてくれたし。
「なあ、よかったら今夜うちに泊まらねえか?」
言った直後に自己嫌悪。何考えてるんだ俺、バカか俺!? ドラマとかマンガと勘違いしてねえか?
いくら俺と同い年ったってこいつ時代錯誤のサムライの格好したホームレスそのものだぞ! 寝てる最中に財布持ってかれたらどーすんだ?
……あ、いや。別に盗まれても困るほどの大金は持ってないし、そもそもカネになるものすらこの家には置いてねーし。だいいちテレビだって置いてないもん。
「え、そこまでは、僕は……」やっぱりそうだよな、あいつめっちゃ困惑してるし。
「お金ないですし、それに何も返せるものを持ち合わせてません」
「別に構わねーよ、一晩くらい」
もちろん明日の朝ごはんも俺が作るし。なんだか楽しくなってきちゃった。今まで俺の家には誰も泊めたことなんてない。見ての通り他の友達とは違うからね。姉貴と2人暮らしでおまけに家事の一才は俺が引き受けてるんだ。みーんな遠慮しちゃうのがオチ。
それに、コタローのことちょっと放っておけない気持ちもあるし。
「そういえば……」と、またあいつは聞いてきた。
「狼男なのに自分の家があるって、ちょっと疑問なんですが」
やっべええええええええええええええ!
慌てて俺の手を見た、鼻先を触ってみた、しっぽをこねくり回した。
そうだ、まだ俺は変身したまんまじゃねーか! つーかどーやったら戻れるんだよ!
俺からもどうにか全てを説明した。
いつしかこんな体質になっちまったこと。元はちゃんとした人間で、コタローと同じ年齢で背格好で。ンでもって名前は……
「狩野タケル。狩りの野原でカノウな。もちろん呼び捨てでいいから」
「タケル……かっこいい名前ですね」
その言葉にちょっと照れちゃった。
「じゃあ、またご縁があれば……ご飯美味しかったです」
と言ってコタローは立ち上がった時だった。
「痛っ……!」と突然しゃがみ込んじゃったんだ!
ずっと左足のとこ押さえたまま。え、画鋲かなんか落ちてた?
「えっと……いや、大丈夫、ですから!」
そんなこと言ってるけど、思いっきり我慢してるのは分かる。だっておでこに汗が浮かんできてるし!
「血マメができたのずっと我慢してたら、潰れちゃって」
無理やり座らせて押さえてる足を見たんだけど……
うわ、足の裏すっげえ真っ黒! まさかコタロー……ずっと裸足で歩いてきたとか?
ええいこの際そんなことはどーだっていい! バイ菌入ったらどうすんだよ!
とにかく先に手当てだ、まず足の裏をきれいに風呂場へ!
しかし今の俺はワーウルフのままなんだけど、手の指が長くなったわ爪が長いわで細かい作業がやりづれーのなんのって。おかげでコタローの足に包帯巻くのに普通の倍以上時間かかったかも。
⭐︎⭐︎⭐︎
ってなわけで時代錯誤な侍なコタローを今晩泊まらすことになったんだけど……
「だからさあ、すっげ汚れてるんだしその服。今から洗濯して干せばどうにか間に合うから!」
「いくらタケルのお願いといっても、それだけはお断りします」
頑固だ。つまりこの服は一張羅だってことで、絶対洗いたくないんだって頑なに断られた。
なんでも侍の精神が失われてしまうとかで……そっちの方が意味不明だ。
まさかとは思うが、どこぞのマンガみたいに実は女の子だったり……ってことでもなさそう。まあそれに関しては安心かな。
俺も疲れてきたし、まずは布団敷いて寝ることが先決だ。
姉貴の布団には触れさせたくないし、かといって来客用のなんで持ってない。つまりは俺の布団でどうにか肩並べて一夜を明かすってことに。
おまけに俺は変身がいまだに解けない。以前話した通り、ワーウルフ状態だと体格もデカくなってるんだよね、一回り……いや二回りくらいか?
「布団で寝られるなんて……何ヵ月ぶりかな」
そんなコタローの笑顔が、俺にはとても嬉しく感じられたんだ。
そして……おやすみの言葉もそこそこに、俺も疲れが溜まっていたからか一気に眠りにつけた。
朝飯はなに作ろうか……ぐう。
⭐︎⭐︎⭐︎
……どのくらい眠ってたんだろう。カーテンから眩しい光が漏れているから朝だってことはすぐ分かる。
だけど……コタローがいない! ずっと隣で寝てたはずのコタローが!
布団から飛び起きるともう一個驚きが。
俺の身体は元の人間へと戻っていたんだ。そりゃ確かに筋肉痛はしたけど、以前ほどじゃない。学校でマラソン大会した翌日くらいの痛みかな。イマイチ分からんけど。
でもってコタローはといえば。
「おはようございます! 台所汚れてたんで綺麗にしましたから」なんてあいつは笑顔で俺に言ってくれた。
けど早起きだなコタロー。やっぱりそういう生活が身体に染み付いてるのかな?
「それなんですけど……」と、あいつは戸惑った顔で、まだ布団の上の俺の元へと来た。
なんなんだ一体。つーか人間の俺に驚いたとかかな。
「僕たち、確か隣同士、肩を並べて寝ていたはずなのに、目を開けたらいきなり僕の顔の前にタケルの足の裏があったんです。で、その……」
確か姉貴にも言われてたんだよな。俺の寝相って最悪だって……
けど問題はそこじゃなかったんだ。
「タケルの足がすごく臭くって、それで目が覚めちゃって」
やっべええええええええええ!!!
俺はすっげえ申し訳なくなって思わずその場でコタローに土下座しちゃってた。