草刈る山路が笛の音Ⅲ Every step you take , my eyes follow.
ー/ー 紅緒が付属の牛脂をすき焼き鍋に落とす。
良い音がした所で菜箸でそれを広げ、肉を焼く。
紅緒に何度も味見をさせられて作った割り下を、お玉で上からかけていく。
香ばしい匂いとともに湯気が舞い上がる。
火が強かったか。これって水で薄めなくて良いのか。
「白菜から水が出るから、入れちゃって」
そうなんだ。
切っておいた白菜を入れ、紅緒が箸で避けてくれた隙間にしらたきと玉ねぎを入れて。
お麩も忘れずに、焼き豆腐は。
また紅緒が豆腐の場所を作ってくれた。
よし、できた。
最後にもう一度割り下を入れ、蓋をして、と。
「いい匂い、こりゃ美味そうだ」
崇直が僕と紅緒の間に割り込んできた。
そりゃとびきり美味いに決まってるさ。
あんなに真剣に作ったんだから。
「崇ちゃん、こっちの野菜持っていってくれる。わーちゃんは鍋持ってって」
鍋を抱えた僕の後ろを、残りの肉と野菜を盛った皿を抱えて紅緒が付いてきていた。
ダイニングテーブルに置かれたコンロへすき焼き鍋を乗せて、火にかける。
そのタイミングで、キッチンから炊飯器の電子音が聞こえてきた。
「あ、ご飯炊けた」
わーちゃん、これ、と肉を盛った皿とネギと春菊に焼き豆腐を盛った皿とを紅緒が僕に渡す。
「じゃ、オレご飯ついでくるよ」
もう腰を上げていた崇直はそう言うと僕達と入れ替わりにキッチンへ向かう。
「崇ちゃんありがとー」
「おう」
「じゃあ、こっち仕上げちゃうね」
なんだか昔に戻ったみたいだな。
あの頃は、崇直の家で夕飯食べるか、こっちに崇直たちが来てたんだ。
おばちゃんが作ったおかずを持って、崇直と直樹、樹に紅緒。
だいたいいつも僕が待てなくて、神社の下まで迎えに行ってた。
紅緒の側にはいつも直樹が居たけど、それでも良かったんだ。
「ほい、ごはん」
崇直がカウンター越しに白米を盛った茶碗を差し出した。
「ありがとさん」
はいわーちゃんの、と言いながら紅緒が僕の席に茶碗を置き、自分のも席に置いて。
崇直が自分の茶碗を持って席に戻ってきた。
「んじゃ」
「いただきまーす」
何年ぶりだろう。皆で食事するのは。
「むちゃくちゃ美味いな」
「ホント?」
目を見開いて紅緒が上目遣いで訊いてきた。
ぐっ。胸が……。
「家じゃママが味キメてくれるから安心だけど、一人で作ったこと無いから」
「う、美味いって。な、崇直」
心臓が痛ぇ。
「肉も野菜もサイコーだな。卵一個じゃ足ンねーぞ」
うん。みんなで食べると美味しいよ。次は樹と狭山も一緒に呼んで焼肉でもするか。
他愛もない話で盛り上がって、笑って。
横で紅緒が笑ってる。崇直も笑顔だ。
みんな笑ってる、良かった。
やべぇ、また泣きそうだ。
こうやって一緒に暮らせたら良いのに。
どうして上手く行かないんだろう、なぁ。
大人になるって、面倒くせえなぁ。
直樹が居たら、また違ってたのかな。
良い音がした所で菜箸でそれを広げ、肉を焼く。
紅緒に何度も味見をさせられて作った割り下を、お玉で上からかけていく。
香ばしい匂いとともに湯気が舞い上がる。
火が強かったか。これって水で薄めなくて良いのか。
「白菜から水が出るから、入れちゃって」
そうなんだ。
切っておいた白菜を入れ、紅緒が箸で避けてくれた隙間にしらたきと玉ねぎを入れて。
お麩も忘れずに、焼き豆腐は。
また紅緒が豆腐の場所を作ってくれた。
よし、できた。
最後にもう一度割り下を入れ、蓋をして、と。
「いい匂い、こりゃ美味そうだ」
崇直が僕と紅緒の間に割り込んできた。
そりゃとびきり美味いに決まってるさ。
あんなに真剣に作ったんだから。
「崇ちゃん、こっちの野菜持っていってくれる。わーちゃんは鍋持ってって」
鍋を抱えた僕の後ろを、残りの肉と野菜を盛った皿を抱えて紅緒が付いてきていた。
ダイニングテーブルに置かれたコンロへすき焼き鍋を乗せて、火にかける。
そのタイミングで、キッチンから炊飯器の電子音が聞こえてきた。
「あ、ご飯炊けた」
わーちゃん、これ、と肉を盛った皿とネギと春菊に焼き豆腐を盛った皿とを紅緒が僕に渡す。
「じゃ、オレご飯ついでくるよ」
もう腰を上げていた崇直はそう言うと僕達と入れ替わりにキッチンへ向かう。
「崇ちゃんありがとー」
「おう」
「じゃあ、こっち仕上げちゃうね」
なんだか昔に戻ったみたいだな。
あの頃は、崇直の家で夕飯食べるか、こっちに崇直たちが来てたんだ。
おばちゃんが作ったおかずを持って、崇直と直樹、樹に紅緒。
だいたいいつも僕が待てなくて、神社の下まで迎えに行ってた。
紅緒の側にはいつも直樹が居たけど、それでも良かったんだ。
「ほい、ごはん」
崇直がカウンター越しに白米を盛った茶碗を差し出した。
「ありがとさん」
はいわーちゃんの、と言いながら紅緒が僕の席に茶碗を置き、自分のも席に置いて。
崇直が自分の茶碗を持って席に戻ってきた。
「んじゃ」
「いただきまーす」
何年ぶりだろう。皆で食事するのは。
「むちゃくちゃ美味いな」
「ホント?」
目を見開いて紅緒が上目遣いで訊いてきた。
ぐっ。胸が……。
「家じゃママが味キメてくれるから安心だけど、一人で作ったこと無いから」
「う、美味いって。な、崇直」
心臓が痛ぇ。
「肉も野菜もサイコーだな。卵一個じゃ足ンねーぞ」
うん。みんなで食べると美味しいよ。次は樹と狭山も一緒に呼んで焼肉でもするか。
他愛もない話で盛り上がって、笑って。
横で紅緒が笑ってる。崇直も笑顔だ。
みんな笑ってる、良かった。
やべぇ、また泣きそうだ。
こうやって一緒に暮らせたら良いのに。
どうして上手く行かないんだろう、なぁ。
大人になるって、面倒くせえなぁ。
直樹が居たら、また違ってたのかな。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。