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草刈る山路が笛の音Ⅰ     Every step you take, my eyes follow.

ー/ー



 あー。
 紅緒を部屋に入れてしまった。 
 くそぉ、今夜は一人になりたくなかったのに。
 崇直に泊まっていけって、言えばよかった。
 
 せめて下まで見送りたかったのにさ。
 あんなにあっさり帰らなくても良いじゃないか。
 
 ん?
 エレベーターの↓ボタンが点灯してる。

 
 あーーーーっ!!!
 今夜、家で久々に飲もうぜって言ってたんだった。

 あぁあぁぁ、すまん。
 色々とすまん崇直。
 
 エレベーターが上昇してきた!
 崇直が戻ってきたんだよな。

 エレベーターが到着したベルが鳴る。

 ドアが開くと、崇直が腕組みしてこっちを見ていた。
 
 「崇直、スマン」

 本当にごめん。すっかり忘れてた。
 呆れ顔で、一瞥される。
 だって。

「まさか、紅緒がいるなんて思わねーだろ。それに、先輩がまー爺どころか紅緒やおまえとも顔見知りって」

 思わずため息が出る。誰が想像するってんだよ。世間が狭すぎるんだって。
 だとしても。

「僕だけ蚊帳の外だ……」

 落ち込んでたら、崇直が肩を軽く叩いてきた。

「まーそんなに、落ち込むなって。接触絶ってたそっちにも問題あるからな」

「それは否めん」

「おまえ、まー爺の仕事知らなかっただろ」

 そーなんだよ。必殺遊び人が名刺持ってたんだよ。

「驚いたよ。笠神ビルの取締役だって。名刺もらちゃった」

 崇直によるとあのクラブのオーナーで、そっちがメインの仕事らしい。
 先輩も言ってたな、人と人を繋ぐ仕事だって。
 今、僕が学んでるのが、正にこの「暗黙知としての人脈の構造化とサプライチェーンの効率化」なんだよね。 
 意気揚々と説明してたはいいが。
 まいったね。崇直が、腹減ってると思って何かないかと冷蔵庫開けたんだけどさ。
 
「どうしよう、崇直。ナンにもない」

「コンビニでも行くか?」

 お互い顔を見合わせる。

「腹減ってる? もしかして」

 だよな。僕のせいで、ゴメンよ。

「冷凍の餃子があるんだ。生餃子、近所の中華屋で冷凍買ってきてたんだ。それからご飯もあるから、それ食べよ、な」

 僕は冷凍庫から餃子の入った袋を取り出した。確か二人前はあったはず。
 パントリーを開け、買い置きのパックご飯を取り出しシートをはがして電子レンジに突っ込んだ。

 餃子は箱入りなんだが、ビニールでコーティングが手じゃ裂けねーや。
 歯で噛み切れるか、これ。
 よし上手く裂けたぞ。
 焼こうとしたら崇直が自分でやるからと、フライパンごと持っていかれた。

 それにしても、喉が渇くな。あんな酒の飲み方はやっぱ宜しくないね。

「晩飯は先輩と食べたから、全部食って。あー、喉がカラカラだ」

 そうだ、紅緒が作ってくれたレモン水、あれ美味かったな。崇直の分も作ってやろう。
 あの麦茶も、今度教えてもらって買っとくか。

「これ美味いな。麦茶もだが、なんか今日は意外なことだらけだったよ」

 レモン水を渡すと、崇直は一口呑み美味いねって笑った。
 トレイを出してやったら、そこに焼きたての餃子とチンした炊きたてご飯、レモン水を乗せリビングへ持っていった。

 美味そうに餃子を食ってる崇直を見てたら、幸せそうで何だか眠くなってきたよ。
 欠伸が止まらない。

「ふああぁ〜っ。食ってる間に先に風呂入ってて良いか。布団出すの面倒だから、一緒でいいよな」

 ゴメン崇直。
 いつも僕が隣で気持ち悪いだろうが、一人寝は特に今日は辛いんだ。付き合ってくれ。

「ついでにパジャマも出しとくよ」

 あーあ、すっごい呆れた顔でこっちを見てるよ。
 こんな男が親友で、崇直も災難だよな。
 ごめん。




みんなのリアクション

 あー。
 紅緒を部屋に入れてしまった。 
 くそぉ、今夜は一人になりたくなかったのに。
 崇直に泊まっていけって、言えばよかった。
 せめて下まで見送りたかったのにさ。
 あんなにあっさり帰らなくても良いじゃないか。
 ん?
 エレベーターの↓ボタンが点灯してる。
 あーーーーっ!!!
 今夜、家で久々に飲もうぜって言ってたんだった。
 あぁあぁぁ、すまん。
 色々とすまん崇直。
 エレベーターが上昇してきた!
 崇直が戻ってきたんだよな。
 エレベーターが到着したベルが鳴る。
 ドアが開くと、崇直が腕組みしてこっちを見ていた。
 「崇直、スマン」
 本当にごめん。すっかり忘れてた。
 呆れ顔で、一瞥される。
 だって。
「まさか、紅緒がいるなんて思わねーだろ。それに、先輩がまー爺どころか紅緒やおまえとも顔見知りって」
 思わずため息が出る。誰が想像するってんだよ。世間が狭すぎるんだって。
 だとしても。
「僕だけ蚊帳の外だ……」
 落ち込んでたら、崇直が肩を軽く叩いてきた。
「まーそんなに、落ち込むなって。接触絶ってたそっちにも問題あるからな」
「それは否めん」
「おまえ、まー爺の仕事知らなかっただろ」
 そーなんだよ。必殺遊び人が名刺持ってたんだよ。
「驚いたよ。笠神ビルの取締役だって。名刺もらちゃった」
 崇直によるとあのクラブのオーナーで、そっちがメインの仕事らしい。
 先輩も言ってたな、人と人を繋ぐ仕事だって。
 今、僕が学んでるのが、正にこの「暗黙知としての人脈の構造化とサプライチェーンの効率化」なんだよね。 
 意気揚々と説明してたはいいが。
 まいったね。崇直が、腹減ってると思って何かないかと冷蔵庫開けたんだけどさ。
「どうしよう、崇直。ナンにもない」
「コンビニでも行くか?」
 お互い顔を見合わせる。
「腹減ってる? もしかして」
 だよな。僕のせいで、ゴメンよ。
「冷凍の餃子があるんだ。生餃子、近所の中華屋で冷凍買ってきてたんだ。それからご飯もあるから、それ食べよ、な」
 僕は冷凍庫から餃子の入った袋を取り出した。確か二人前はあったはず。
 パントリーを開け、買い置きのパックご飯を取り出しシートをはがして電子レンジに突っ込んだ。
 餃子は箱入りなんだが、ビニールでコーティングが手じゃ裂けねーや。
 歯で噛み切れるか、これ。
 よし上手く裂けたぞ。
 焼こうとしたら崇直が自分でやるからと、フライパンごと持っていかれた。
 それにしても、喉が渇くな。あんな酒の飲み方はやっぱ宜しくないね。
「晩飯は先輩と食べたから、全部食って。あー、喉がカラカラだ」
 そうだ、紅緒が作ってくれたレモン水、あれ美味かったな。崇直の分も作ってやろう。
 あの麦茶も、今度教えてもらって買っとくか。
「これ美味いな。麦茶もだが、なんか今日は意外なことだらけだったよ」
 レモン水を渡すと、崇直は一口呑み美味いねって笑った。
 トレイを出してやったら、そこに焼きたての餃子とチンした炊きたてご飯、レモン水を乗せリビングへ持っていった。
 美味そうに餃子を食ってる崇直を見てたら、幸せそうで何だか眠くなってきたよ。
 欠伸が止まらない。
「ふああぁ〜っ。食ってる間に先に風呂入ってて良いか。布団出すの面倒だから、一緒でいいよな」
 ゴメン崇直。
 いつも僕が隣で気持ち悪いだろうが、一人寝は特に今日は辛いんだ。付き合ってくれ。
「ついでにパジャマも出しとくよ」
 あーあ、すっごい呆れた顔でこっちを見てるよ。
 こんな男が親友で、崇直も災難だよな。
 ごめん。