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そうそう、あともう一つ姉貴に聞きたかったことがあった。
「コンビニ強盗の件、ニュースに出た?」って。
だけど姉貴はそっけなく「ないよ」って答えただけ。テレビでもネットでも、そのニュースは一切報道されなかったみたいだ。
……これって、いいことなのかな、それとも悪いことなのかな。
まぁ、俺の存在が世間に知れ渡るのはマズイから、報道されてないのは嬉しいことなんだけど、でもなんか複雑。

ハァ……久々にでっかい溜息が俺の胸の奥から出てきた。
とりあえずメシ食いたい。でもってあそこのコンビニ行くか、って。

案の定、腹がすっげえ音を立ててきた。
冷蔵庫にウインナーはある。それ茹でて目玉焼きとセットで……いや、スクランブルエッグがいいかな。砂糖入れた甘めの。

俺は右足にあまり負担をかけないようにゆっくりとコンビニに行った。
まだ変身の後遺症による筋肉痛は消えてないんだけど、かと言ってずっと寝続けて痛くもないし、それにニュースや新聞に報道されてないっていうのもおかしな話だし。
それとも、コンビニ強盗事件なんて大したことない扱いなのかな。なんてあれこれ考えて歩いているうちに、コンビニに着いた。

昨日の朝、盛大にぶち割ったガラスの自動ドアは、もう新しくなっていた。
ただ唯一違ってたのは、そのドアに張り紙がしてあったことだけ。
でも昨夜の強盗事件のことじゃない、もっとショックなことだった。

{都合により、X月XX日をもって閉店いたします}

え? え? それって一体どういうことだよ!?
レジの方をのぞいてみたけど誰もいない。閉店するなんて一体……まさかおじさんの身に何かあったのかな。
全身に冷たい汗が走ってきた。だけど外から眺めてるんじゃ一向に分かるわけがない。俺は店に入って中を見渡してみた。
「いらっしゃいませ」
店の奥から出てきた人はおじさんの方じゃなく、同い年くらいのおばさんだった。
棚から冷えた牛乳と、そして今日の新聞をレジへと持っていったんだ…けど、どうしたんだ、なんで俺の手震えちゃってるんだろう。
にこやかな笑顔でバーコードを読み取るおばさん、でもレジのテーブルはあちこちガムテープで補修してあるだけだった。昨日のあの出来事が、俺の脳内によみがえってくる。
でも黙ってちゃいけない。ごくっと生唾を飲んで、俺はおばさんに聞いてみた。
昨日の朝起こった事件のことと、おじさんの容態。そして、どうして店を閉めちゃうのかということを。
おばさんは「あら、よく知ってるわね」って笑いながら答えてくれた。
おじさんのことだけど、軽い脳震盪を起こしただけで夕方には家に帰れたって、金属バットで殴られたのに!?
でも話をよく聞くと、おじいさんは強盗が威嚇で振り上げたバットを避けようとした際、床においてあったタバコのケースにつまづいて、レジの角に頭をぶつけたらしい。

そして盗まれたお金。これは通報を受けて駆けつけた警察官が、逃げてったバイクを追って強盗を現行犯逮捕したそうだ。
話によると、強盗はそこから少し離れた神社の廃屋に隠れていたって。
えええ???
おじさんのことはいい、大事無くって無事で済んだんだし。でも強盗が逮捕されたってなんで?? 俺は強盗に逃げられて、お金取り戻した後警察に見つかって、今度は逆に追われたのに。
何故だ、俺が昨日やっちゃった出来事と、ぜんぜん違うじゃないか!!!
最後に、閉店のこと。
このコンビニは長いことおじさん夫婦の二人で経営してたんだけど、年齢的にそろそろやり続けていくのが限界に感じてきたらしい。
なもんで、今回強盗で痛い目にあったから、これを機に店じまいしようって決心したんだそうだ。

最後に俺は、長い間お疲れ様っておばさんに言ってコンビニを後にした。
わけわからねーよ、俺、今夢見てるわけじゃないのに。それにおばさんだってウソ言ってそうにも見えない。事実と全く違う。
それに、新聞にも全く取り上げられなかったっていうのも謎だ。変だらけだ。
変だって言えば、昨日俺が警察に追い詰められた時に現れた、別の存在もだ。
あとは姉貴に全部話してみようか、いや、もうちょっと事実がわかるまで置いといたほうがいいのか……とりあえずは俺の胸の中にしまっておこう。
そうそう、また狼になったときには、神社を一度捜索してみよう。別に今でも構わないんだけど、もしかしたら現場検証とかで警察がいるかもしれないし。

でも、なんかこの事件、ウラがありそうな気がする。
なんて自分のガラにもないことを考えながら、俺は家に戻っていった。


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そうそう、あともう一つ姉貴に聞きたかったことがあった。
「コンビニ強盗の件、ニュースに出た?」って。
だけど姉貴はそっけなく「ないよ」って答えただけ。テレビでもネットでも、そのニュースは一切報道されなかったみたいだ。
……これって、いいことなのかな、それとも悪いことなのかな。
まぁ、俺の存在が世間に知れ渡るのはマズイから、報道されてないのは嬉しいことなんだけど、でもなんか複雑。
ハァ……久々にでっかい溜息が俺の胸の奥から出てきた。
とりあえずメシ食いたい。でもってあそこのコンビニ行くか、って。
案の定、腹がすっげえ音を立ててきた。
冷蔵庫にウインナーはある。それ茹でて目玉焼きとセットで……いや、スクランブルエッグがいいかな。砂糖入れた甘めの。
俺は右足にあまり負担をかけないようにゆっくりとコンビニに行った。
まだ変身の後遺症による筋肉痛は消えてないんだけど、かと言ってずっと寝続けて痛くもないし、それにニュースや新聞に報道されてないっていうのもおかしな話だし。
それとも、コンビニ強盗事件なんて大したことない扱いなのかな。なんてあれこれ考えて歩いているうちに、コンビニに着いた。
昨日の朝、盛大にぶち割ったガラスの自動ドアは、もう新しくなっていた。
ただ唯一違ってたのは、そのドアに張り紙がしてあったことだけ。
でも昨夜の強盗事件のことじゃない、もっとショックなことだった。
{都合により、X月XX日をもって閉店いたします}
え? え? それって一体どういうことだよ!?
レジの方をのぞいてみたけど誰もいない。閉店するなんて一体……まさかおじさんの身に何かあったのかな。
全身に冷たい汗が走ってきた。だけど外から眺めてるんじゃ一向に分かるわけがない。俺は店に入って中を見渡してみた。
「いらっしゃいませ」
店の奥から出てきた人はおじさんの方じゃなく、同い年くらいのおばさんだった。
棚から冷えた牛乳と、そして今日の新聞をレジへと持っていったんだ…けど、どうしたんだ、なんで俺の手震えちゃってるんだろう。
にこやかな笑顔でバーコードを読み取るおばさん、でもレジのテーブルはあちこちガムテープで補修してあるだけだった。昨日のあの出来事が、俺の脳内によみがえってくる。
でも黙ってちゃいけない。ごくっと生唾を飲んで、俺はおばさんに聞いてみた。
昨日の朝起こった事件のことと、おじさんの容態。そして、どうして店を閉めちゃうのかということを。
おばさんは「あら、よく知ってるわね」って笑いながら答えてくれた。
おじさんのことだけど、軽い脳震盪を起こしただけで夕方には家に帰れたって、金属バットで殴られたのに!?
でも話をよく聞くと、おじいさんは強盗が威嚇で振り上げたバットを避けようとした際、床においてあったタバコのケースにつまづいて、レジの角に頭をぶつけたらしい。
そして盗まれたお金。これは通報を受けて駆けつけた警察官が、逃げてったバイクを追って強盗を現行犯逮捕したそうだ。
話によると、強盗はそこから少し離れた神社の廃屋に隠れていたって。
えええ???
おじさんのことはいい、大事無くって無事で済んだんだし。でも強盗が逮捕されたってなんで?? 俺は強盗に逃げられて、お金取り戻した後警察に見つかって、今度は逆に追われたのに。
何故だ、俺が昨日やっちゃった出来事と、ぜんぜん違うじゃないか!!!
最後に、閉店のこと。
このコンビニは長いことおじさん夫婦の二人で経営してたんだけど、年齢的にそろそろやり続けていくのが限界に感じてきたらしい。
なもんで、今回強盗で痛い目にあったから、これを機に店じまいしようって決心したんだそうだ。
最後に俺は、長い間お疲れ様っておばさんに言ってコンビニを後にした。
わけわからねーよ、俺、今夢見てるわけじゃないのに。それにおばさんだってウソ言ってそうにも見えない。事実と全く違う。
それに、新聞にも全く取り上げられなかったっていうのも謎だ。変だらけだ。
変だって言えば、昨日俺が警察に追い詰められた時に現れた、別の存在もだ。
あとは姉貴に全部話してみようか、いや、もうちょっと事実がわかるまで置いといたほうがいいのか……とりあえずは俺の胸の中にしまっておこう。
そうそう、また狼になったときには、神社を一度捜索してみよう。別に今でも構わないんだけど、もしかしたら現場検証とかで警察がいるかもしれないし。
でも、なんかこの事件、ウラがありそうな気がする。
なんて自分のガラにもないことを考えながら、俺は家に戻っていった。