4

ー/ー



だけど今は強盗を探すことのほうが先決だ、無我夢中であいつにつかまったのはいいけど、俺より強盗のほうがケガがひどかったりしたら、そっちのほうが一大事だ。それに姿も見えない、まさか、逃げちゃったとか……!?

俺はガードレールにつかまりながらよろよろと歩いた。くそ、情けない……これじゃ走ることもできねぇ。

ようやくのことで俺はバイクのところまで来ることができた。ヘッドライトは砕け、辺りに細かなガラスが散らばっている。それにハンドルも思いきり曲がってた、結構な速度出してたんだな。
でも強盗がいない、どこ行っちゃったんだろう。
そのときふと思いついたんだ、鼻を空に向け、すうっと深呼吸。そうだ、俺にはこの嗅覚があるんだ。強盗の匂いまでは分からなくても、それ以外になんか手がかりはあるはず。あとはこの耳。
足の痛みでガンガンする意識をぐっと落ち着かせ、風の音にも耳を傾ける……
とっても静かだ、それに草の香りしかしない。

すると突然、俺が捕まっていたガードレールの向こう側から、じゃらっと音が聞こえた、あれは強盗の持ってたリュック、詰め込まれたお金の音だ。
俺はガードレールを乗り越え、牙をぐっと食いしばりながら道路脇の草むらの方へと足を進めていった。
強盗がいるとこが草むらで助かった。ここなら歩くときの足の痛みも結構和らいでくれる。
そんなことを思いながらずっと暗闇の中を歩いてると、コツンと足先に何かがぶつかった。軽そうな音だ。
拾い上げてみると、それは真っ黒なフルフェイスのヘルメットだった。あちこち凹みができていて、バイザーの部分は割れている。ってことは、この持ち主は……

その時だった、後ろからいきなりガン! と俺の頭にすごい衝撃が響いたんだ。鉄パイプか何かで頭を思い切り殴られたような、そんな感じに。
唐突に喰らったんで、一瞬意識が飛んだ。
「な、なんだお前!? コスプレでもしてんのか」殴られた方向、背後から男の声が聞こえた。
強盗の野郎か、もしかして暗闇に隠れてて俺を殴ったとか!?
そう思い、俺は声のする方向へと振り向き、グルルと唸り声を上げてみた。
ついでに口の端っこを吊り上げてみて、犬で言うところの怒りの形相をしてみたんだ。っていうか狼だけどね。
俺と強盗、初めて目があった。
ちょっと年のいった男、姉貴よりずっと年上っぽそうだ、ボサボサの髪の毛に切れ長の目、それに無精髭を生やしている。
着ている黒いジャケットにはあちこちから白い綿が飛び出していた。転んだ時に破けたんだな。
そして左手には大きなリュックを、右手にはくの字に折れ曲がった金属バットを持っている。
……って、バットが曲がってる、これってもしかして俺を殴った時に!?

「何でだよ、思いきり殴ったのに! なななんで平気なんだよ!」強盗の声が震えていた。
殴られた頭をさすってみた、確かに鈍い痛みはするが、捻挫した足首ほどの痛さじゃない。
となると、今の俺の頭って、金属バットのフルスイングすら効かないくらい頑丈になってるのかな。
いやいや、そんなことは今はどうでもいい、とにかくこいつを、この強盗野郎を捕まえて警察に突き出さなくちゃ。
「な、なんだよ、やる気か!?」曲がったバットを放り投げ、後退りする強盗。言ってることとやってることが違うぞ、もしかして俺に怯えてるのかな?
すると強盗は、突然くるっと俺に背中を向けて逃げ出そうとした、この野郎、逃がすか!
俺は左足に全力を集中させて、強盗へと飛びついた。
このまま逃しちゃったら俺が今までやってきたことが無駄になっちまう、そうだ、俺はヒーローなんだ。絶対にこいつを懲らしめてやるんだ!
飛びついたその手で、俺は強盗の持っているリュックをぐっと掴んだ。片足だけのジャンプだと、いまいち奴には届いてくれなかったのは仕方ない。だけど今はそんなことはいい!
俺は思いっきりリュックを引っ張った。だけど強盗も必死だ、俺の顔面に何度も蹴ってくる。だけど衝撃だけで痛いとは全然感じなかった。
何度蹴られたかは分からなかったけど、強盗も諦めたのか、リュックを手放し、そのまま草むらのずっと奥へと走って逃げていった。

俺、どうにか勝ったのかな。本当ならあいつに何発かお返しして、それで警察へ連行させたかった。
けど結果は散々なだけだった、顔面蹴りまくられるわ足首折れたっぽいわで全身ボロボロだし。
でもとりあえず盗られたお金が入ったリュックだけは取り返すことができた、持ち上げるとじゃらっとかなりのお金が詰まった音がする。

おじさん、喜んでくれるかな……


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 5


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



だけど今は強盗を探すことのほうが先決だ、無我夢中であいつにつかまったのはいいけど、俺より強盗のほうがケガがひどかったりしたら、そっちのほうが一大事だ。それに姿も見えない、まさか、逃げちゃったとか……!?
俺はガードレールにつかまりながらよろよろと歩いた。くそ、情けない……これじゃ走ることもできねぇ。
ようやくのことで俺はバイクのところまで来ることができた。ヘッドライトは砕け、辺りに細かなガラスが散らばっている。それにハンドルも思いきり曲がってた、結構な速度出してたんだな。
でも強盗がいない、どこ行っちゃったんだろう。
そのときふと思いついたんだ、鼻を空に向け、すうっと深呼吸。そうだ、俺にはこの嗅覚があるんだ。強盗の匂いまでは分からなくても、それ以外になんか手がかりはあるはず。あとはこの耳。
足の痛みでガンガンする意識をぐっと落ち着かせ、風の音にも耳を傾ける……
とっても静かだ、それに草の香りしかしない。
すると突然、俺が捕まっていたガードレールの向こう側から、じゃらっと音が聞こえた、あれは強盗の持ってたリュック、詰め込まれたお金の音だ。
俺はガードレールを乗り越え、牙をぐっと食いしばりながら道路脇の草むらの方へと足を進めていった。
強盗がいるとこが草むらで助かった。ここなら歩くときの足の痛みも結構和らいでくれる。
そんなことを思いながらずっと暗闇の中を歩いてると、コツンと足先に何かがぶつかった。軽そうな音だ。
拾い上げてみると、それは真っ黒なフルフェイスのヘルメットだった。あちこち凹みができていて、バイザーの部分は割れている。ってことは、この持ち主は……
その時だった、後ろからいきなりガン! と俺の頭にすごい衝撃が響いたんだ。鉄パイプか何かで頭を思い切り殴られたような、そんな感じに。
唐突に喰らったんで、一瞬意識が飛んだ。
「な、なんだお前!? コスプレでもしてんのか」殴られた方向、背後から男の声が聞こえた。
強盗の野郎か、もしかして暗闇に隠れてて俺を殴ったとか!?
そう思い、俺は声のする方向へと振り向き、グルルと唸り声を上げてみた。
ついでに口の端っこを吊り上げてみて、犬で言うところの怒りの形相をしてみたんだ。っていうか狼だけどね。
俺と強盗、初めて目があった。
ちょっと年のいった男、姉貴よりずっと年上っぽそうだ、ボサボサの髪の毛に切れ長の目、それに無精髭を生やしている。
着ている黒いジャケットにはあちこちから白い綿が飛び出していた。転んだ時に破けたんだな。
そして左手には大きなリュックを、右手にはくの字に折れ曲がった金属バットを持っている。
……って、バットが曲がってる、これってもしかして俺を殴った時に!?
「何でだよ、思いきり殴ったのに! なななんで平気なんだよ!」強盗の声が震えていた。
殴られた頭をさすってみた、確かに鈍い痛みはするが、捻挫した足首ほどの痛さじゃない。
となると、今の俺の頭って、金属バットのフルスイングすら効かないくらい頑丈になってるのかな。
いやいや、そんなことは今はどうでもいい、とにかくこいつを、この強盗野郎を捕まえて警察に突き出さなくちゃ。
「な、なんだよ、やる気か!?」曲がったバットを放り投げ、後退りする強盗。言ってることとやってることが違うぞ、もしかして俺に怯えてるのかな?
すると強盗は、突然くるっと俺に背中を向けて逃げ出そうとした、この野郎、逃がすか!
俺は左足に全力を集中させて、強盗へと飛びついた。
このまま逃しちゃったら俺が今までやってきたことが無駄になっちまう、そうだ、俺はヒーローなんだ。絶対にこいつを懲らしめてやるんだ!
飛びついたその手で、俺は強盗の持っているリュックをぐっと掴んだ。片足だけのジャンプだと、いまいち奴には届いてくれなかったのは仕方ない。だけど今はそんなことはいい!
俺は思いっきりリュックを引っ張った。だけど強盗も必死だ、俺の顔面に何度も蹴ってくる。だけど衝撃だけで痛いとは全然感じなかった。
何度蹴られたかは分からなかったけど、強盗も諦めたのか、リュックを手放し、そのまま草むらのずっと奥へと走って逃げていった。
俺、どうにか勝ったのかな。本当ならあいつに何発かお返しして、それで警察へ連行させたかった。
けど結果は散々なだけだった、顔面蹴りまくられるわ足首折れたっぽいわで全身ボロボロだし。
でもとりあえず盗られたお金が入ったリュックだけは取り返すことができた、持ち上げるとじゃらっとかなりのお金が詰まった音がする。
おじさん、喜んでくれるかな……