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でも、ちょっと冷静になってもういちど考えてみたら、だんだんと、姉貴の言ってることが分かりかけてきたように俺は感じる。

それに人間じゃなくなっている自分は正直怖い。だけどちょっとばかり前向きに考えてみれば、この人間じゃない能力で夜の街を駆けてみるのも面白いのかもねって思えてくるんだ。

姉貴が俺の家に来た時もそうだったっけ。
「大丈夫、あたしはあなたから絶対に離れたりしない、だからこれからは二人で仲良くがんばって行こうね」
そう言って、姉貴は俺を思い切り抱きしめてくれた。
そうだ、俺は姉貴さえいてくれれば、どんなことだって乗り越えていける!
上着は、変身するときに体格変わって破れるから着ないでおく、いつものTシャツに、下は短パンだけで十分だ。
靴は……と。これダメにしちゃったらマジでこれからは裸足で学校行かないといけないってことで、思いきって裸足のまま外に出た。

そうだ、最初に無意識に変身した時以来、アパートの屋上へはもう行くことができなくなった。当然かなこりゃ。ドアぶち破っちゃったんだし。
ドアはオートロック式の頑丈な奴に取って代えられた。警備会社直通のセキュリティシステムまで装備されてるという念の入れようだ。
あの日、噂によると屋上から窃盗団が入ってきたんじゃないかってことで、被害届が出されたっぽい。
となるともう、屋上で変身を試すということはもう不可能だ。となるとどこに行けばいいのか……って。
どうこう考えてもまとまらないし、家の中で変身しちゃってもいけないし、まずは早く家を出て、どっか人気のない場所を探さなくちゃな。

深夜ともなると話は別だ、やっぱそれなりに寒い、なんていうか、身体の奥にまで寒さがじーんとしみてくる。やっぱトレーナー一枚くらい羽織っていればよかったかな、と今は後悔してる。
それと、靴履いてないからコンクリの地面がチクチクして痛い。それにだんだん足先が冷たくなってきたし。
いやいやそれだけじゃない。俺はまだ未成年なんだし!
だいいち、深夜12時過ぎに、俺みたいな小学生が半袖シャツにジャージのズボン、それに裸足で外を歩いてたら、即警察に通報されると思う。虐待されてるんじゃないかって。
いや思うじゃない。絶対だ。
ってなワケで、俺は今忍者みたいに人目を避けながら、深夜の街中を歩いてる。
運が悪いことに、この時間でも結構人がいるんだよね、残業帰りのサラリーマンとかが。
そういった人に見つからないように、電信柱のかげとか、ビルの隙間に身体を隠して移動してるんだけど……なんで俺、こんなバカなことしてるんだろうとふと思って、ちょっと帰りたくなって来ちゃった。

いやいやダメだろ! いま俺は狼男に変身しても大丈夫な場所を探してるんだ!
でも、また変身して記憶がなくなったら……と思うとすごく怖い。

図書室でその手の本読んだんだけど、月夜の晩に変身して、人を食い殺したりしてさんざん暴れまわった挙句に最後は殺されちゃう。
いろんな歴史から見てみても、人喰いモンスターな記述しか載ってない!
今のとこ俺は二回変身したんだけど、ラッキーな事に狼男に関する事件とかは全く無い。
だけど、俺のこの身体の中に狼の魔素が入っている限り、ふとしたはずみで野生に戻ったりして、人を襲ったりしちゃうことだってあるかも知れないんだ。
姉貴は狼男を楽しめって軽く話してたけど、やっぱ怖い。この先どうなっちゃうかわからない《もう一人の俺》が怖いんだ。
そのことはあまり口には出したくない。それに俺、姉貴を被害者にさせたくないもん。いや、襲うかどうかはまだ分からないけどさ。
だから俺はあえて、また変身しそうになった時には、人気のいない場所へ行こうって決心した。姉貴が給料前借りして買ってくれた最新スマホもあるんだ。これがあるだけで心配の種がかなり減ったし。

とか色々と考えを巡らせているうちに、住んでるアパートからだいたい十五分くらい離れた場所にある小高い山へと着いた。
ホントだったらそれくらいの時間で済むはずなんだけど、人目を避けてだし、それに靴履いてないだからこういう道を歩くのって、こんなに痛いとは思わなかった。だから我慢しながら歩いてたら、結局十分近くオーバーしちゃったんじゃないかって思う。時計持ってないけど。

それと、さっきから胸のドキドキが全然治まらないんだ。通行人に見つかるかどうかのドキドキじゃない。もう家にいる時からずっと続いてて、今じゃもう身体中が心臓になってるんじゃないかと思うくらい全身がドキドキ言ってる。それにものすごく暑くなってきた。やっぱ上着は着なくて正解だったわ。

さて、ここから先はちょっとした遠足とかで使われるハイキングコースになってるから、その道をたどればいい。でもしくじった、家から懐中電灯持ってくるの忘れた、外灯なんてここから先は全くない。これじゃ真っ暗な道を……

いや、なんか見える。それほど暗くない。見えるんだ、コースルートの看板も、その先の道も。

こんな道、夜に通る人なんて誰もいないから、明かりなんて一切ついてなかった。
それが見えちゃうんだ。さすがに色までは分からないけど、先までくっきりと見えてきた、なんでだろう、ここは真っ暗な道なのに。
もしかして、これって狼の能力ってやつ?
いや、きっとそうだ! この前からの異常に効く鼻といい、バカ力といい、狼としての能力が、普段の状態でも使えるようになってきたんだ。
って思わず有頂天になってダッシュで行こうとしたら……

痛ぇ!

尖った石みたいなのをおもいっきり踏んづけちまった!
くっそぉ…裸足だからめちゃくちゃ痛いよ……最悪!


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でも、ちょっと冷静になってもういちど考えてみたら、だんだんと、姉貴の言ってることが分かりかけてきたように俺は感じる。
それに人間じゃなくなっている自分は正直怖い。だけどちょっとばかり前向きに考えてみれば、この人間じゃない能力で夜の街を駆けてみるのも面白いのかもねって思えてくるんだ。
姉貴が俺の家に来た時もそうだったっけ。
「大丈夫、あたしはあなたから絶対に離れたりしない、だからこれからは二人で仲良くがんばって行こうね」
そう言って、姉貴は俺を思い切り抱きしめてくれた。
そうだ、俺は姉貴さえいてくれれば、どんなことだって乗り越えていける!
上着は、変身するときに体格変わって破れるから着ないでおく、いつものTシャツに、下は短パンだけで十分だ。
靴は……と。これダメにしちゃったらマジでこれからは裸足で学校行かないといけないってことで、思いきって裸足のまま外に出た。
そうだ、最初に無意識に変身した時以来、アパートの屋上へはもう行くことができなくなった。当然かなこりゃ。ドアぶち破っちゃったんだし。
ドアはオートロック式の頑丈な奴に取って代えられた。警備会社直通のセキュリティシステムまで装備されてるという念の入れようだ。
あの日、噂によると屋上から窃盗団が入ってきたんじゃないかってことで、被害届が出されたっぽい。
となるともう、屋上で変身を試すということはもう不可能だ。となるとどこに行けばいいのか……って。
どうこう考えてもまとまらないし、家の中で変身しちゃってもいけないし、まずは早く家を出て、どっか人気のない場所を探さなくちゃな。
深夜ともなると話は別だ、やっぱそれなりに寒い、なんていうか、身体の奥にまで寒さがじーんとしみてくる。やっぱトレーナー一枚くらい羽織っていればよかったかな、と今は後悔してる。
それと、靴履いてないからコンクリの地面がチクチクして痛い。それにだんだん足先が冷たくなってきたし。
いやいやそれだけじゃない。俺はまだ未成年なんだし!
だいいち、深夜12時過ぎに、俺みたいな小学生が半袖シャツにジャージのズボン、それに裸足で外を歩いてたら、即警察に通報されると思う。虐待されてるんじゃないかって。
いや思うじゃない。絶対だ。
ってなワケで、俺は今忍者みたいに人目を避けながら、深夜の街中を歩いてる。
運が悪いことに、この時間でも結構人がいるんだよね、残業帰りのサラリーマンとかが。
そういった人に見つからないように、電信柱のかげとか、ビルの隙間に身体を隠して移動してるんだけど……なんで俺、こんなバカなことしてるんだろうとふと思って、ちょっと帰りたくなって来ちゃった。
いやいやダメだろ! いま俺は狼男に変身しても大丈夫な場所を探してるんだ!
でも、また変身して記憶がなくなったら……と思うとすごく怖い。
図書室でその手の本読んだんだけど、月夜の晩に変身して、人を食い殺したりしてさんざん暴れまわった挙句に最後は殺されちゃう。
いろんな歴史から見てみても、人喰いモンスターな記述しか載ってない!
今のとこ俺は二回変身したんだけど、ラッキーな事に狼男に関する事件とかは全く無い。
だけど、俺のこの身体の中に狼の魔素が入っている限り、ふとしたはずみで野生に戻ったりして、人を襲ったりしちゃうことだってあるかも知れないんだ。
姉貴は狼男を楽しめって軽く話してたけど、やっぱ怖い。この先どうなっちゃうかわからない《もう一人の俺》が怖いんだ。
そのことはあまり口には出したくない。それに俺、姉貴を被害者にさせたくないもん。いや、襲うかどうかはまだ分からないけどさ。
だから俺はあえて、また変身しそうになった時には、人気のいない場所へ行こうって決心した。姉貴が給料前借りして買ってくれた最新スマホもあるんだ。これがあるだけで心配の種がかなり減ったし。
とか色々と考えを巡らせているうちに、住んでるアパートからだいたい十五分くらい離れた場所にある小高い山へと着いた。
ホントだったらそれくらいの時間で済むはずなんだけど、人目を避けてだし、それに靴履いてないだからこういう道を歩くのって、こんなに痛いとは思わなかった。だから我慢しながら歩いてたら、結局十分近くオーバーしちゃったんじゃないかって思う。時計持ってないけど。
それと、さっきから胸のドキドキが全然治まらないんだ。通行人に見つかるかどうかのドキドキじゃない。もう家にいる時からずっと続いてて、今じゃもう身体中が心臓になってるんじゃないかと思うくらい全身がドキドキ言ってる。それにものすごく暑くなってきた。やっぱ上着は着なくて正解だったわ。
さて、ここから先はちょっとした遠足とかで使われるハイキングコースになってるから、その道をたどればいい。でもしくじった、家から懐中電灯持ってくるの忘れた、外灯なんてここから先は全くない。これじゃ真っ暗な道を……
いや、なんか見える。それほど暗くない。見えるんだ、コースルートの看板も、その先の道も。
こんな道、夜に通る人なんて誰もいないから、明かりなんて一切ついてなかった。
それが見えちゃうんだ。さすがに色までは分からないけど、先までくっきりと見えてきた、なんでだろう、ここは真っ暗な道なのに。
もしかして、これって狼の能力ってやつ?
いや、きっとそうだ! この前からの異常に効く鼻といい、バカ力といい、狼としての能力が、普段の状態でも使えるようになってきたんだ。
って思わず有頂天になってダッシュで行こうとしたら……
痛ぇ!
尖った石みたいなのをおもいっきり踏んづけちまった!
くっそぉ…裸足だからめちゃくちゃ痛いよ……最悪!