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第2話 燻製の第一歩

ー/ー



 リナの笑顔が頭から離れねえ。
 焦げたジャーキーで喜んでくれるなんて、なんて純粋なガキだ。
 だが、あんな半端な味じゃ満足できねえ。
 俺は日本の燻製ジャーキーをこのエルドランドに根付かせるんだ。

 朝早く、森に桜の木を切りに行く。
 枝を細かく刻んでチップにし、乾燥させる。
 火加減も見直すぜ。前回は火が強すぎた。
 今回は弱火でじっくり燻す。
 村の広場で燻製器をセットすると、また子供たちが野次馬みたいに集まる。

「またハルキが変なことしてる!」
「煙くさいぞ!」

 うるせえな、と思いつつ無視。
 そこへリナがトコトコやってくる。
 手に雑草の花束を持って。

「ハルキ、これあげる! ジャーキー、今日こそ美味しいんだよね?」
「おう、今回は自信あるぜ。待ってろよ!」

 調味液も改良した。
 醤油にみりんを少し混ぜ、甘みを加える。
 モーモウ獣の肉は繊維が硬いから、薄く切って漬け込み時間を長くした。
 燻製器から漂う香りは、初めて「日本のジャーキー」に近い。
 リナが鼻をクンクンさせる。

「すっごい匂い! あたし、お腹すいてきた!」

 燻製が完成し、一切れをリナに渡す。
 彼女は大事そうに両手で受け取り、口に放り込む。
 目を閉じて味わう姿が可愛い。

「うわっ! すっごく美味しい! 塩ジャーキーなんて目じゃないよ!」

 その声に、子供たちが「ずるい! 俺も食いたい!」と群がる。
 仕方ねえ、一切れずつ配る。
 意外にも、ガキどもが「うまっ!」「なんだこれ!」と騒ぎ出す。
 村の大人たちが様子を見に来るが「怪しい食べ物だ」と眉をひそめる。
 村長のジジイがやってきて、杖を突きながら言う。

「ハルキ、こんな煙を出すな! 村に害を及ぼすぞ!」

「害じゃねえよ! これは食い物だ! 試してみろよ!」

 村長は渋い顔だが、リナがジャーキーを差し出す。

「村長おじいちゃん、食べてみて! ハルキのジャーキー、最高だよ!」

 村長は渋々口に入れ、しばらく黙る。やがて目を丸くする。

「こ、これは……確かに美味い。だが、村の伝統を乱すわけには……」

 伝統って、ただの塩漬け肉じゃねえか!
 俺は村長を説得するため、最高のジャーキーを作ると決める。
 夜、燻製器の火を見ながら、リナが隣に座る。

「ハルキ、絶対みんな好きになるよ。あたし、信じてる!」

 その言葉に、俺の心に火が灯る。
 森の奥で、誰かが俺たちを見ていた。
 長いローブの少女。


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 リナの笑顔が頭から離れねえ。
 焦げたジャーキーで喜んでくれるなんて、なんて純粋なガキだ。
 だが、あんな半端な味じゃ満足できねえ。
 俺は日本の燻製ジャーキーをこのエルドランドに根付かせるんだ。
 朝早く、森に桜の木を切りに行く。
 枝を細かく刻んでチップにし、乾燥させる。
 火加減も見直すぜ。前回は火が強すぎた。
 今回は弱火でじっくり燻す。
 村の広場で燻製器をセットすると、また子供たちが野次馬みたいに集まる。
「またハルキが変なことしてる!」
「煙くさいぞ!」
 うるせえな、と思いつつ無視。
 そこへリナがトコトコやってくる。
 手に雑草の花束を持って。
「ハルキ、これあげる! ジャーキー、今日こそ美味しいんだよね?」
「おう、今回は自信あるぜ。待ってろよ!」
 調味液も改良した。
 醤油にみりんを少し混ぜ、甘みを加える。
 モーモウ獣の肉は繊維が硬いから、薄く切って漬け込み時間を長くした。
 燻製器から漂う香りは、初めて「日本のジャーキー」に近い。
 リナが鼻をクンクンさせる。
「すっごい匂い! あたし、お腹すいてきた!」
 燻製が完成し、一切れをリナに渡す。
 彼女は大事そうに両手で受け取り、口に放り込む。
 目を閉じて味わう姿が可愛い。
「うわっ! すっごく美味しい! 塩ジャーキーなんて目じゃないよ!」
 その声に、子供たちが「ずるい! 俺も食いたい!」と群がる。
 仕方ねえ、一切れずつ配る。
 意外にも、ガキどもが「うまっ!」「なんだこれ!」と騒ぎ出す。
 村の大人たちが様子を見に来るが「怪しい食べ物だ」と眉をひそめる。
 村長のジジイがやってきて、杖を突きながら言う。
「ハルキ、こんな煙を出すな! 村に害を及ぼすぞ!」
「害じゃねえよ! これは食い物だ! 試してみろよ!」
 村長は渋い顔だが、リナがジャーキーを差し出す。
「村長おじいちゃん、食べてみて! ハルキのジャーキー、最高だよ!」
 村長は渋々口に入れ、しばらく黙る。やがて目を丸くする。
「こ、これは……確かに美味い。だが、村の伝統を乱すわけには……」
 伝統って、ただの塩漬け肉じゃねえか!
 俺は村長を説得するため、最高のジャーキーを作ると決める。
 夜、燻製器の火を見ながら、リナが隣に座る。
「ハルキ、絶対みんな好きになるよ。あたし、信じてる!」
 その言葉に、俺の心に火が灯る。
 森の奥で、誰かが俺たちを見ていた。
 長いローブの少女。