6 対決
ー/ー
「ちょっと待ってください。事件はまだ終わっていません」
自信に満ちた声だ。私は自分で自分の声に感心してしまった。
「ミチル、どうしたのよ」
亜由美を手で抑えて、フォローお願いと小声で言う。
「ゆかり姉さんは死んでいません。ここに居るんです」
私が言うと、ざわめいていた周囲が急に静かになった。
『こことは何処だ』
「私の心の中です。ゆかり姉さんが死ぬときに、データ転送をしました」
『なるほど。わかった。話は神社で聞こう。来なさい』
神輿が動こうとしたけど、私はそれを静止させた。
「いやです。何処にも行きません。ここでみんなにも聞いて欲しいんです、男飼の本当の意味を。そして私達の村の意味を」
『やめなさい。それ以上言ってはいけない。言えば反逆罪になるぞ』
神輿が下ろされた。神輿を担いでいた4人の姉さん達が弓を取り出す。
そして矢を番えると引き搾り出した。
私は構わず言った。
「私の中のゆかり姉さんのデータは、最初ばらばらのジクソーパズルみたいに意味がわからない物でした。だからそれを検証するために調べたりする必要があったけど、今は違います。さっきの出来事で私の中のデータがきちんと並べ替えられて、意味を持った物に変ったんです。その中にはゆかり姉さんが必死の思いで探り出した村長自身の内部データも含まれています」
『撃て』
村長の命令で、十メートルの至近距離から姉さん達の強力な矢が私の胸をめがけて放たれる。
その矢は私の体の1メートル前で見えない手で叩き落されたみたいに地面に突き刺さった。
弓が無駄だと気付いた彼女達は剣を引きぬいた。
「亜由美ちゃん、力を貸して。姉さん達がこっちに来れないようにバリケードを張って」
「でも、長くは無理だよ」
亜由美は手を組んでしゃがんだ。亜由美が力を解放するときのお決まりのポーズだった。
『亜由美、ミチルの側を離れなさい。反逆罪の共犯になるぞ』
一瞬ひやりとしたけど、亜由美は微動だにしなかった。
私は思い切り大きな声で話を始める。
「男飼デビューが私達の命を縮めるのは周知の事実です。そしてそれは丈夫な子供を産むために仕方の無い事だと教えられてきました。でもそれは嘘だったんです。男飼デビューとは、ただのセックスではなくてオンの性器を食べさせられる事でした。そうすると体がたくましくなり強くなります。丈夫な子供も産めるけど、男飼デビューしなくても丈夫な子供は産めるんです。ただ、違うのは男飼いデビューしないと子供に超能力が備わらないというだけなんです。超能力は便利だけど、個人的には必ず必要なわけではありません。ただ、私達を生物兵器として利用しようとする意思のある者にとっては欠かせない物だったのです」
村長の手下の姉さん達七人がじわじわと近づいてきていた。
夕陽を浴びて炎のようにきらめく剣を大きく振りかぶっていた。
亜由美と力を合わせて見えないバリケードを造ってるけど、それでもじわじわ近づいてくる。
私達はそれに合わせて少しずつ後ろに下がらざるを得なかった。
周囲を取り巻く村人は、いったいどうなる事かと固唾を飲んで見守ってる。
村人たちがとりあえず敵にまわらなかった事に感謝した。
「ゆかり姉さんは男飼に疑問を持って調べ始めました。そのゆかり姉さんを殺したのは的屋だけど、邪魔に思って殺させたのは村長自身です」
ざわめきが上がった。そして、村人達が私達にゆっくり近づいてきた。
『ミチル、お前を消去する』
村長の球体が白い光を発した。ドンという衝撃が私の身体を包む。私がそれでも生きていられるのは亜由美のバリケードとゆかり姉さんの力のお陰だった。
私は更に話を続ける。
「的屋の集団は、実は村長の奴隷だったんです。村長に呪いの解除キーを握られていて、村長に逆らうと呪いが発令して身体が人間でなくなる様にされていました。普段でも興奮したりすると彼等は昆虫の本性をあらわしていましたが、村長の一存で限りなく体が崩壊していく定めだったんです。そして的屋は村長に命令されて遠くの国で他国のオトコを捕まえ、呪いをかけてオンに仕立て上げていたんです。呪いをかけられたオトコは知能も低くなり、身体も変化してオンに成り果てていきました。ここにいるジャックは誘拐されてきてオンになる呪いをかけられる寸前に脱出してきたわけです。だからまだ言葉がしゃべれます。他国の言葉だから意味はわからないけど」
私が促すと、ジャックは、僕は、ジャックとたどたどしいながらもはっきり言った。
横のほうから学校の友達が数人駆け寄ってきた。
幸子と由紀だった。
「私、ミチルを信じるよ。亜由美、協力するよ」
幸子が亜由美の横にしゃがんで力を解放し始めた。
「ミチル、大変だったね。実は私も男飼デビューいやだったんだよね」
由紀が私の肩を叩いて言った。
さらに一人二人と私の周りに友達が集まり出した。
こうなると村長達の方が劣勢になってくる。村長側の姉さん達は頭に電撃を受けて気絶させられた。
「村長、あなたを作った体制はもう崩壊してしまったんです。この国はすでに滅んでるんです。生物兵器として私達を飼育する必要はもうないんですよ。村長、あなたを解任します」
怒りの波動が周囲に渦巻いた。木の葉が舞い埃がひどくて目も開けていられない。
私は村長の側に歩いていった。
途中で気絶している姉さんの剣を拾いあげる。
その剣を滑らかな球体に押し当てた。村長の抵抗は亜由美たちが力でねじ伏せてくれている。
微かな隙間に剣先をねじ込んでひねると、卵の殻が剥けるみたいに薄い金属のカバーが外れた。
その中にあるいくつかのスイッチを操作すると、村長の怒りは忽然と消えていった。
そして柔らかなピンク色に輝き出した。
ゆかり姉さんが探し出してきた村長のバージョンアップデータをインストールしたのだ。
これで村長は生物兵器の飼育プログラムから開放され、本物の村長としてこの村の平和の為に尽力をつくすことになるはずだった。
しかし、予想は外れた。村長の球体がだんだん赤みを帯びて高熱を放射し出した。
「失敗したわ。みんな逃げて」
そばに寄っていた村人達が離れると同時に球体が破裂した。
それほど大きな爆発じゃなかったから、怪我人は少なくて怪我も大したことはないみたいだった。
「どうして爆発したの」
亜由美が立ちあがりながら聞いてきた。
「村長はこの村にだけいるわけじゃないからだと思う。ネットワークが出来ていたんだよ。それが村長を破壊したんじゃないかな」
「だとしたら、よその村が責めてくる事もありうるね。これは防備を整えないと」
小夏姉さんが太い腕で腕組みしながら、でも少し嬉しそうに言った。
男飼の呪いが解けたのが嬉しいのかな。
だとしたら私のした事は正しかったと思っていいはずだ。
みんなが喜んでくれたのだとしたら。
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自信に満ちた声だ。私は自分で自分の声に感心してしまった。
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『こことは何処だ』
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『なるほど。わかった。話は神社で聞こう。来なさい』
神輿が動こうとしたけど、私はそれを静止させた。
「いやです。何処にも行きません。ここでみんなにも聞いて欲しいんです、男飼の本当の意味を。そして私達の村の意味を」
『やめなさい。それ以上言ってはいけない。言えば反逆罪になるぞ』
神輿が下ろされた。神輿を担いでいた4人の姉さん達が弓を取り出す。
そして矢を番えると引き搾り出した。
私は構わず言った。
「私の中のゆかり姉さんのデータは、最初ばらばらのジクソーパズルみたいに意味がわからない物でした。だからそれを検証するために調べたりする必要があったけど、今は違います。さっきの出来事で私の中のデータがきちんと並べ替えられて、意味を持った物に変ったんです。その中にはゆかり姉さんが必死の思いで探り出した村長自身の内部データも含まれています」
『撃て』
村長の命令で、十メートルの至近距離から姉さん達の強力な矢が私の胸をめがけて放たれる。
その矢は私の体の1メートル前で見えない手で叩き落されたみたいに地面に突き刺さった。
弓が無駄だと気付いた彼女達は剣を引きぬいた。
「亜由美ちゃん、力を貸して。姉さん達がこっちに来れないようにバリケードを張って」
「でも、長くは無理だよ」
亜由美は手を組んでしゃがんだ。亜由美が力を解放するときのお決まりのポーズだった。
『亜由美、ミチルの側を離れなさい。反逆罪の共犯になるぞ』
一瞬ひやりとしたけど、亜由美は微動だにしなかった。
私は思い切り大きな声で話を始める。
「男飼デビューが私達の命を縮めるのは周知の事実です。そしてそれは丈夫な子供を産むために仕方の無い事だと教えられてきました。でもそれは嘘だったんです。男飼デビューとは、ただのセックスではなくてオンの性器を食べさせられる事でした。そうすると体がたくましくなり強くなります。丈夫な子供も産めるけど、男飼デビューしなくても丈夫な子供は産めるんです。ただ、違うのは男飼いデビューしないと子供に超能力が備わらないというだけなんです。超能力は便利だけど、個人的には必ず必要なわけではありません。ただ、私達を生物兵器として利用しようとする意思のある者にとっては欠かせない物だったのです」
村長の手下の姉さん達七人がじわじわと近づいてきていた。
夕陽を浴びて炎のようにきらめく剣を大きく振りかぶっていた。
亜由美と力を合わせて見えないバリケードを造ってるけど、それでもじわじわ近づいてくる。
私達はそれに合わせて少しずつ後ろに下がらざるを得なかった。
周囲を取り巻く村人は、いったいどうなる事かと固唾を飲んで見守ってる。
村人たちがとりあえず敵にまわらなかった事に感謝した。
「ゆかり姉さんは男飼に疑問を持って調べ始めました。そのゆかり姉さんを殺したのは的屋だけど、邪魔に思って殺させたのは村長自身です」
ざわめきが上がった。そして、村人達が私達にゆっくり近づいてきた。
『ミチル、お前を消去する』
村長の球体が白い光を発した。ドンという衝撃が私の身体を包む。私がそれでも生きていられるのは亜由美のバリケードとゆかり姉さんの力のお陰だった。
私は更に話を続ける。
「的屋の集団は、実は村長の奴隷だったんです。村長に呪いの解除キーを握られていて、村長に逆らうと呪いが発令して身体が人間でなくなる様にされていました。普段でも興奮したりすると彼等は昆虫の本性をあらわしていましたが、村長の一存で限りなく体が崩壊していく定めだったんです。そして的屋は村長に命令されて遠くの国で他国のオトコを捕まえ、呪いをかけてオンに仕立て上げていたんです。呪いをかけられたオトコは知能も低くなり、身体も変化してオンに成り果てていきました。ここにいるジャックは誘拐されてきてオンになる呪いをかけられる寸前に脱出してきたわけです。だからまだ言葉がしゃべれます。他国の言葉だから意味はわからないけど」
私が促すと、ジャックは、僕は、ジャックとたどたどしいながらもはっきり言った。
横のほうから学校の友達が数人駆け寄ってきた。
幸子と由紀だった。
「私、ミチルを信じるよ。亜由美、協力するよ」
幸子が亜由美の横にしゃがんで力を解放し始めた。
「ミチル、大変だったね。実は私も男飼デビューいやだったんだよね」
由紀が私の肩を叩いて言った。
さらに一人二人と私の周りに友達が集まり出した。
こうなると村長達の方が劣勢になってくる。村長側の姉さん達は頭に電撃を受けて気絶させられた。
「村長、あなたを作った体制はもう崩壊してしまったんです。この国はすでに滅んでるんです。生物兵器として私達を飼育する必要はもうないんですよ。村長、あなたを解任します」
怒りの波動が周囲に渦巻いた。木の葉が舞い埃がひどくて目も開けていられない。
私は村長の側に歩いていった。
途中で気絶している姉さんの剣を拾いあげる。
その剣を滑らかな球体に押し当てた。村長の抵抗は亜由美たちが力でねじ伏せてくれている。
微かな隙間に剣先をねじ込んでひねると、卵の殻が剥けるみたいに薄い金属のカバーが外れた。
その中にあるいくつかのスイッチを操作すると、村長の怒りは忽然と消えていった。
そして柔らかなピンク色に輝き出した。
ゆかり姉さんが探し出してきた村長のバージョンアップデータをインストールしたのだ。
これで村長は生物兵器の飼育プログラムから開放され、本物の村長としてこの村の平和の為に尽力をつくすことになるはずだった。
しかし、予想は外れた。村長の球体がだんだん赤みを帯びて高熱を放射し出した。
「失敗したわ。みんな逃げて」
そばに寄っていた村人達が離れると同時に球体が破裂した。
それほど大きな爆発じゃなかったから、怪我人は少なくて怪我も大したことはないみたいだった。
「どうして爆発したの」
亜由美が立ちあがりながら聞いてきた。
「村長はこの村にだけいるわけじゃないからだと思う。ネットワークが出来ていたんだよ。それが村長を破壊したんじゃないかな」
「だとしたら、よその村が責めてくる事もありうるね。これは防備を整えないと」
小夏姉さんが太い腕で腕組みしながら、でも少し嬉しそうに言った。
男飼の呪いが解けたのが嬉しいのかな。
だとしたら私のした事は正しかったと思っていいはずだ。
みんなが喜んでくれたのだとしたら。