16 チョー気持ちいい夜

ー/ー



「1、2、3!」

「にゃあ!」

「1、2、3!」

「うにゃあ!」

 ジンの掛け声に合わせてミチルは蹴りの練習をさせられている。
 目標は、ジン同様、蹴りで音速を超えること。
 だが、その腑抜けた掛け声からも、ミチルがそれを習得するのは絶望的だ。

「ぬるいぞ、シウレン! もっと鋭く! 空気を切り裂くように!」

「無茶言うな! こちとら三年間帰宅部だぞ!」

 ミチルの体力はすでに限界。何度やってもミチルの蹴りにはトンボがとまる。
 そんな無駄な修行を始めて、はや三日。初日と今日で比べても、一切上達がみられない。

「うぬぅ……大会は明日だと言うのに、困った事になった」

 何故、ジンが急に武道大会にこだわっているかと言うと。
 大会の優勝者には、都に行って、皇帝の御前試合をするという名誉が与えられる。
 ジンは、例の腕輪の逸話が偽りである仮説を皇帝に進言するために、なんとしても都に行きたいのである。

「こうなればせめて今夜の稽古で、気の扱いだけでも完璧にしなければ」

「イヤだあ! 毎晩毎晩、あんなイヤラシ……痛いマッサージ、もうヤだあ!」

 日中のしごきに加えて、夜はジンからイヤラシ……じゃなくて、イタ気持ちいいマッサージを受け続けるミチル。
 体中を揉みほぐされて、毎晩ミチルは昇天している。もっとも、そのおかげで血流が良くなり、日中の激しい稽古の疲れを明日に持ち込まずに済んでいるのだが。

「今夜は最後の仕上げだな。貴様の×××××に太い×××を……」

「ギャアアア! そんなことしてみろ、絶対××してやるからなあ!」

 ジンから伝授されたのは、今のところ、伏せ字の使い方だけのミチルであった。

「はあはあ……もう、他のお弟子さんがやったらいいじゃないですかぁ……」

 ジンがミチルに付きっきりで稽古をしている、この三日間。ミチルにとっては正に針のむしろ。
 ミチルは変わらず、ジンの居室に繋がる中庭で練習をしている。そこにジンから放置された弟子達が代わるがわる覗きに来て、ミチルに冷たい視線を投げつけるのだ。

 爺さん(スノードロップ)から冷たい視線を浴びたと思ったら、今度は不特定多数の少年達から冷たい視線を浴びる。
 爺さんの視線は、そばにイケメン達がいたからそれに甘えられた。
 だがここではドS師範が睨みつけて、全然甘やかしてくれない。もっとも、ジンに甘えたら即ぱっくんちょの刑だろうから、それも良くない。

 そんな訳で、ミチルは八方塞がり。ジェイ、アニー、エリオットとはぐれて一週間近い。
 みんな、今頃どうしてるかな……
 オレはイケメン欠乏症だよ……

「確かに、儂の弟子なら大会でもいいセンはいくだろう」

「それなら……」

「だが儂は、シウレン、貴様に優勝して欲しいのだ!」

 ここまでのオレの体たらくを見て、よくもまだそんな事を言えるものだ。先生の愛が重いです。
 ミチルは過剰な期待と、過剰な稽古でとうとう膝をつく。

「もう、むりぃ……しんじゃうよぉ……」

「たわけ、そういう言葉は(とこ)の上で言うものだ」

「なんでもエロ変換してんじゃねえ!」

 そんなミチルの叫びとともに、日が暮れた。





「あ……」

 体に熱いものが注がれている。

「ああ……」

 ミチルは今夜も、ジンからの熱いほとばしりを受けていた。

「どうだ、シウレン……」

「ああ、先生ぇ……」

 ヤバい。今夜はマジでヤバい。
 ミチルはジンが完全に「本気」であると実感する。

 その手の熱さが、これまでと全く違ううねりで、ミチルの体をかき混ぜていた。

「ああっ! こんなの、おかしくなっちゃう!」

 念の為断っておくと、これはそういう意図は全くない表現である。

「いいぞ、シウレン……なかなか上手になったではないか」

「あう、ううっ!」

 そういう表現では全く、全然、ない。

「最後の仕上げだ、いくぞ……受け止めろ、シウレン!」

「ああ──ッ!」

「……っ!」

 ミチルは視界がチカチカ瞬いた。お腹の、奥の奥が熱い。

「やった……ついに、やったぞシウレン」

 ジンは達成感に満ちた声で、ミチルの体から手を離す。

「……へ?」

 ミチルはよくわからないまま、うつ伏せになっていた上体を起こし、無意識に腹をさすった。
 なんだか、ある一点が熱い感じがする。

「成功だ。貴様の丹田に、今、気が溜まっている」

「あ、そ、そうなんです……か?」

「来い。そこに立って蹴ってみろ」

 ジンはミチルの腕を引いて、冷たい床の上に立たせた。

「いくぞ! 1、2……」

「はいっ!」

 ビュン!
 ミチルの回し蹴りは、これまでとは全く違う鋭さで空を切る。

「ウッソ、体が軽い!」

 蹴りを繰り出したミチル自身も、その変化に驚いた。
 ちょっと達人ぽい!

「いいぞ、その感覚を忘れるな!」

「はい!」

 修行の成果が出るって、チョー気持ちいい!

「明日の大会は、シウレンが優勝をもらったな!」

「それは無理!!」

 いよいよ、明日は武道大会……!


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 17 逆に無理


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「1、2、3!」
「にゃあ!」
「1、2、3!」
「うにゃあ!」
 ジンの掛け声に合わせてミチルは蹴りの練習をさせられている。
 目標は、ジン同様、蹴りで音速を超えること。
 だが、その腑抜けた掛け声からも、ミチルがそれを習得するのは絶望的だ。
「ぬるいぞ、シウレン! もっと鋭く! 空気を切り裂くように!」
「無茶言うな! こちとら三年間帰宅部だぞ!」
 ミチルの体力はすでに限界。何度やってもミチルの蹴りにはトンボがとまる。
 そんな無駄な修行を始めて、はや三日。初日と今日で比べても、一切上達がみられない。
「うぬぅ……大会は明日だと言うのに、困った事になった」
 何故、ジンが急に武道大会にこだわっているかと言うと。
 大会の優勝者には、都に行って、皇帝の御前試合をするという名誉が与えられる。
 ジンは、例の腕輪の逸話が偽りである仮説を皇帝に進言するために、なんとしても都に行きたいのである。
「こうなればせめて今夜の稽古で、気の扱いだけでも完璧にしなければ」
「イヤだあ! 毎晩毎晩、あんなイヤラシ……痛いマッサージ、もうヤだあ!」
 日中のしごきに加えて、夜はジンからイヤラシ……じゃなくて、イタ気持ちいいマッサージを受け続けるミチル。
 体中を揉みほぐされて、毎晩ミチルは昇天している。もっとも、そのおかげで血流が良くなり、日中の激しい稽古の疲れを明日に持ち込まずに済んでいるのだが。
「今夜は最後の仕上げだな。貴様の×××××に太い×××を……」
「ギャアアア! そんなことしてみろ、絶対××してやるからなあ!」
 ジンから伝授されたのは、今のところ、伏せ字の使い方だけのミチルであった。
「はあはあ……もう、他のお弟子さんがやったらいいじゃないですかぁ……」
 ジンがミチルに付きっきりで稽古をしている、この三日間。ミチルにとっては正に針のむしろ。
 ミチルは変わらず、ジンの居室に繋がる中庭で練習をしている。そこにジンから放置された弟子達が代わるがわる覗きに来て、ミチルに冷たい視線を投げつけるのだ。
 爺さん(スノードロップ)から冷たい視線を浴びたと思ったら、今度は不特定多数の少年達から冷たい視線を浴びる。
 爺さんの視線は、そばにイケメン達がいたからそれに甘えられた。
 だがここではドS師範が睨みつけて、全然甘やかしてくれない。もっとも、ジンに甘えたら即ぱっくんちょの刑だろうから、それも良くない。
 そんな訳で、ミチルは八方塞がり。ジェイ、アニー、エリオットとはぐれて一週間近い。
 みんな、今頃どうしてるかな……
 オレはイケメン欠乏症だよ……
「確かに、儂の弟子なら大会でもいいセンはいくだろう」
「それなら……」
「だが儂は、シウレン、貴様に優勝して欲しいのだ!」
 ここまでのオレの体たらくを見て、よくもまだそんな事を言えるものだ。先生の愛が重いです。
 ミチルは過剰な期待と、過剰な稽古でとうとう膝をつく。
「もう、むりぃ……しんじゃうよぉ……」
「たわけ、そういう言葉は|床《とこ》の上で言うものだ」
「なんでもエロ変換してんじゃねえ!」
 そんなミチルの叫びとともに、日が暮れた。
「あ……」
 体に熱いものが注がれている。
「ああ……」
 ミチルは今夜も、ジンからの熱いほとばしりを受けていた。
「どうだ、シウレン……」
「ああ、先生ぇ……」
 ヤバい。今夜はマジでヤバい。
 ミチルはジンが完全に「本気」であると実感する。
 その手の熱さが、これまでと全く違ううねりで、ミチルの体をかき混ぜていた。
「ああっ! こんなの、おかしくなっちゃう!」
 念の為断っておくと、これはそういう意図は全くない表現である。
「いいぞ、シウレン……なかなか上手になったではないか」
「あう、ううっ!」
 そういう表現では全く、全然、ない。
「最後の仕上げだ、いくぞ……受け止めろ、シウレン!」
「ああ──ッ!」
「……っ!」
 ミチルは視界がチカチカ瞬いた。お腹の、奥の奥が熱い。
「やった……ついに、やったぞシウレン」
 ジンは達成感に満ちた声で、ミチルの体から手を離す。
「……へ?」
 ミチルはよくわからないまま、うつ伏せになっていた上体を起こし、無意識に腹をさすった。
 なんだか、ある一点が熱い感じがする。
「成功だ。貴様の丹田に、今、気が溜まっている」
「あ、そ、そうなんです……か?」
「来い。そこに立って蹴ってみろ」
 ジンはミチルの腕を引いて、冷たい床の上に立たせた。
「いくぞ! 1、2……」
「はいっ!」
 ビュン!
 ミチルの回し蹴りは、これまでとは全く違う鋭さで空を切る。
「ウッソ、体が軽い!」
 蹴りを繰り出したミチル自身も、その変化に驚いた。
 ちょっと達人ぽい!
「いいぞ、その感覚を忘れるな!」
「はい!」
 修行の成果が出るって、チョー気持ちいい!
「明日の大会は、シウレンが優勝をもらったな!」
「それは無理!!」
 いよいよ、明日は武道大会……!