私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。
今日は、いよいよStar☆Dream(スタドリ)の握手会当日。私ははやる鼓動を抑えながら、ショッピングモールのCDショップに向かった。
一方、そのころ。
ショッピングモールに向かう別の2つの影があることを、私はまだ知らなかった。
CDショップに行くと、すでに3人とも揃っていた。
「遅くなりました。」
「ケンジくん、また最後ー。」
ミドリさんは、手厳しい。
「まあまあ、ケンジくんは家族がいるし、大変なんだよ。」
流石、マサさん、年の功。
「ケンジくん、予習はバッチリ?」
アヤ師匠は、今日もカッコいい。
「もちろんです!師匠!」
「ケンジくん、頼もしい!」
ミドリさんが笑いながら私の肩を叩く。スタドリの人気は、まだまだのようで、それらしきファンの姿は見当たらない。しかし、その方がライバルが減っていいとも言える。ファンとしては複雑ではあるが。「じゃあ、CD買いに行こうか。」
アヤ師匠を先頭にCDを買いに行く。スタドリは、今話題の新人として、コーナーが作られていた。ファーストシングルも売っている。私は、まだCDを買っていなかったので、セカンドシングルと両方買うことにした。「スタドリのCD購入特典。握手会参加券です。握手会は15:00から、広場で行います。」
店員からCDと握手会参加券を受け取り、店を後にする。ついに握手会参加券を手に入れた。私は、早くもドキドキしていた。
一方そのころ。
別の2人の影は、ショッピングモールで買い物を楽しんでいた。
CDを買った私たちは、ショッピングモールのフードコートで時間を潰すことにした。ソファ席が空いていたので、そこに陣取る。
「じゃあ、ハンバーガーでも買ってこようか?」
「僕は、ビックモックでとコーラで!」
マサさん、速い!
「私は、テリヤキモックバーガーとアイスティ。」
ミドリさんらしい(?)チョイスだ。
「私は、クノイチモックにしようかな。あと、コーヒーで。」
アヤ師匠は、大人のチョイスだ。
「じゃあ、私はダブルチーズバーガーとコーヒーで。」
私も迷いながら、やっと決めた。「じゃあ、スタドリの握手会の壮行会ってことで、乾杯!」
「かんぱーい!」「カンペー!」「乾杯!」
ソフトドリンクで乾杯をして、腹が満たされたところで、スタドリ話に花が咲く。「ケンジくん、CDにサインもらうんだったら、ペンがあった方が良いけど、持ってる?」
ペン!忘れてしまった!
「わ、忘れました。」
「私の貸してあげるよ。まあ、ショッピングモールだから、売ってるけどね。」
「ミドリさん、ありがとうございます!」
ミドリさんに助けられた。今後は、出かける前に持ち物をちゃんと確認しなければ。。。
「時間そんなにないから、慌てないでね。ケンジくん。本人の前に来たら、ペンのキャップを外して渡すこと。あらかじめ、サインが欲しい場所を決めておくこと。お礼を忘れないこと。注意点はこれくらいかな。」
さすが、アヤ師匠の指示はいつも的確だ。
「わかりました。師匠。ありがとうございます。」
「やっぱり、師匠はまだ、なれないなー。」
ミドリさんに、また、笑われた。。。「握手会ってさ、推しと触れ合える唯一の機会なんだよね。」
アヤ師匠が、感慨深げに話しだす。
「もし、スタドリが人気者になって、トップスターになったら。ファンとしては嬉しいけど、きっと、もう握手会なんてやってくれなくなる。寂しいけど、そうやって、推しが育ってくれるのが一番の喜びなんだよね。」
アヤ師匠・・・。
「だからこそ、今回の握手会は、貴重なんだよ。ケンジくん。」
「はい。全身に焼き付けます。」
そうだ、今日の握手会は、一度しかない。今日の推しの姿を忘れないようにしなければ。
一方、そのころ。
2人の影は、広場にいた。
「お母さん、スタドリの握手会だって。CD買わないとだめなのかー。」
「今、売り出し中のアイドルよね。」
「学校でも、ジワジワ話題になってきてるよ。マジプリにはかなわないけどネ。」
「この子達も人気出ると良いわね。」
「さて、そろそろ行こうか。」
アヤ師匠がテーブルを片付け始める。
握手会の集合時間が迫ってきた。30分前に広場に集合だ。
「私が捨ててきます。」
こういう雑用は下っ端の役目だ。私は4人分のゴミをまとめると、ゴミを捨てに行った。
「ケンジくん、ありがとう!」
他の人は不思議に思うだろうな。ふと、我に返ると、今の状況がオカシク感じる。握手会会場は、一つ下のフロアだ。私たちは、会場に向かった。
広場に着くと、周りがぐるっとパーテーションに囲まれていて。スタドリのポスターが貼ってある。
【握手会待機列】と書かれたボードを持ったスタッフがいたので、列の最後尾に取り合えず並んだ。すると、並んでいる他のファンに「何番ですか?」と聞かれ、ファン同士の連携で、番号順に列が並び替えられる。私たちは、10,11,12,13番だ。時間が迫り、ドキドキしてくる。
さあ、いよいよ握手会本番だ。