【11】⑤
ー/ー「よし、これで全部終わった! 瑛璃ちゃん、こんなん面白かった?」
「当たり前じゃない。私、つまんなそうに見えた?」
いや、と微笑む従兄と、一本ずつバケツの水につけて消していた花火を再度確認し、用意していた袋に入れた。
いや、と微笑む従兄と、一本ずつバケツの水につけて消していた花火を再度確認し、用意していた袋に入れた。
「じゃあ帰ろうか」
「うん。ありがとう、航くん。本当にすっごく楽しかった!」
花火を終えて帰宅し、持ち帰った残骸を片付けるのも手伝う。
部屋に戻った瑛璃は、ノックの音に『一人の顔』を浮かべつつドアへ数歩足を運んだ。
開けたドアの向こうに立っていたのは、予想通り従兄だった。
「瑛璃ちゃん。あの、これ」
緊張を隠し切れない様子で彼が突き出した右手には、小振りな可愛らしいピンクの布製の袋。口の部分に同色のリボンが結ばれていた。
「あ、ありがと……?」
戸惑いつつも受け取った瑛璃は、航の開けるように、との身振りに従う。
「わあ。すごい、綺麗」
リボンを解いて逆さまにした袋の口から掌に零れたのは、透き通ったハート型のバッグチャームだ。
つるりと滑らかな表面ではなく、多面カットで光を反射して煌めいている。
「それ、水晶なんだ」
ああ、そうか。航の言葉に、瑛璃へのプレゼントを買うための街行きだったのか、とふいに思い当たった。
普通の買い物なら、航は別の日に瑛璃を誘ってくれた気がする。
「最初の日にさあ、名前の話になったじゃん? 母さんが瑛璃ちゃんの名前のこと『キラキラで~』みたいに言ってて、『キラキラネームって悪口だろ! 何言ってんだこのおばちゃん!』って青褪めたっていうか」
確かにそうだった、と思い出す。
「うん。ありがとう、航くん。本当にすっごく楽しかった!」
花火を終えて帰宅し、持ち帰った残骸を片付けるのも手伝う。
部屋に戻った瑛璃は、ノックの音に『一人の顔』を浮かべつつドアへ数歩足を運んだ。
開けたドアの向こうに立っていたのは、予想通り従兄だった。
「瑛璃ちゃん。あの、これ」
緊張を隠し切れない様子で彼が突き出した右手には、小振りな可愛らしいピンクの布製の袋。口の部分に同色のリボンが結ばれていた。
「あ、ありがと……?」
戸惑いつつも受け取った瑛璃は、航の開けるように、との身振りに従う。
「わあ。すごい、綺麗」
リボンを解いて逆さまにした袋の口から掌に零れたのは、透き通ったハート型のバッグチャームだ。
つるりと滑らかな表面ではなく、多面カットで光を反射して煌めいている。
「それ、水晶なんだ」
ああ、そうか。航の言葉に、瑛璃へのプレゼントを買うための街行きだったのか、とふいに思い当たった。
普通の買い物なら、航は別の日に瑛璃を誘ってくれた気がする。
「最初の日にさあ、名前の話になったじゃん? 母さんが瑛璃ちゃんの名前のこと『キラキラで~』みたいに言ってて、『キラキラネームって悪口だろ! 何言ってんだこのおばちゃん!』って青褪めたっていうか」
確かにそうだった、と思い出す。
しかし、まるで遥か遠い出来事のようだ。まだ一か月しか経っていないというのに。
不安に溺れそうだったあの頃からは信じられないほど馴染んでいる自分がいた。
「そんなの全然。私は悪い意味には取らなかったよ、それに──」
「うん。瑛璃ちゃんが上手く流してくれて助かった~、ってすごいホッとしたんだ」
瑛璃が言い掛けるのに、航が決まりが悪そうに続ける。
「でも、今更だけど昨日調べたらさ。『瑛璃』って漢字が宝石とかそういう意味なんだって初めて知って」
そういや母さん国文科だったんだよな、と彼は目を伏せた。
「あのとき瑛璃ちゃんの前で余計なこと言って、『こいつ頭悪いんだ』って恥かかなくて済んでよかった! ってもう昨日は生きた心地しなかったくらいで」
「……正直、慣れてるから。いちいちそんな風に感じないよ」
良くも悪くも今風の名として、「キラキラネーム」と揶揄されることは珍しくもない。
面と向かっては少ないとしても、陰で嘲笑されていることもあったのは気づいていた。
「それで、瑛璃ちゃんの名前って『透明な宝石』とか『水晶』みたいな感じだから、じゃあ何かそういうもの記念に贈りたいと思って」
だから、水晶。
掌に載せたハートを見つめて口の中で呟く。
瑛璃の名にちなんだ、煌めく透明な石。
不安に溺れそうだったあの頃からは信じられないほど馴染んでいる自分がいた。
「そんなの全然。私は悪い意味には取らなかったよ、それに──」
「うん。瑛璃ちゃんが上手く流してくれて助かった~、ってすごいホッとしたんだ」
瑛璃が言い掛けるのに、航が決まりが悪そうに続ける。
「でも、今更だけど昨日調べたらさ。『瑛璃』って漢字が宝石とかそういう意味なんだって初めて知って」
そういや母さん国文科だったんだよな、と彼は目を伏せた。
「あのとき瑛璃ちゃんの前で余計なこと言って、『こいつ頭悪いんだ』って恥かかなくて済んでよかった! ってもう昨日は生きた心地しなかったくらいで」
「……正直、慣れてるから。いちいちそんな風に感じないよ」
良くも悪くも今風の名として、「キラキラネーム」と揶揄されることは珍しくもない。
面と向かっては少ないとしても、陰で嘲笑されていることもあったのは気づいていた。
「それで、瑛璃ちゃんの名前って『透明な宝石』とか『水晶』みたいな感じだから、じゃあ何かそういうもの記念に贈りたいと思って」
だから、水晶。
掌に載せたハートを見つめて口の中で呟く。
瑛璃の名にちなんだ、煌めく透明な石。
「えっと、ア、アクセサリーとかの方がよかったと思うんだけど! どうしても『水晶』にしたくて、他は置物っていうか飾っとくようなのばっかでさ」
言い訳するように早口になる従兄。
「宝石屋さんはやっぱ、……俺なんか場違いだし。親にもらった小遣いで買うのは違うじゃん? これ、ゴールデンウィークに単発バイトした分だから!」
「私はすごく好きよ。とっても綺麗で可愛い。それに、アクセサリーは確かに素敵だけど普段付けられないでしょ。校則違反だし。これなら毎日持ってられるわ」
溢れる喜びを乗せた言葉に、彼は安心したように口元に笑みを湛える。
言い訳するように早口になる従兄。
「宝石屋さんはやっぱ、……俺なんか場違いだし。親にもらった小遣いで買うのは違うじゃん? これ、ゴールデンウィークに単発バイトした分だから!」
「私はすごく好きよ。とっても綺麗で可愛い。それに、アクセサリーは確かに素敵だけど普段付けられないでしょ。校則違反だし。これなら毎日持ってられるわ」
溢れる喜びを乗せた言葉に、彼は安心したように口元に笑みを湛える。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「よし、これで全部終わった! 瑛璃ちゃん、こんなん面白かった?」
「当たり前じゃない。私、つまんなそうに見えた?」
いや、と微笑む従兄と、一本ずつバケツの水につけて消していた花火を再度確認し、用意していた袋に入れた。
いや、と微笑む従兄と、一本ずつバケツの水につけて消していた花火を再度確認し、用意していた袋に入れた。
「じゃあ帰ろうか」
「うん。ありがとう、航くん。本当にすっごく楽しかった!」
花火を終えて帰宅し、持ち帰った残骸を片付けるのも手伝う。
部屋に戻った瑛璃は、ノックの音に『一人の顔』を浮かべつつドアへ数歩足を運んだ。
開けたドアの向こうに立っていたのは、予想通り従兄だった。
「瑛璃ちゃん。あの、これ」
緊張を隠し切れない様子で彼が突き出した右手には、小振りな可愛らしいピンクの布製の袋。口の部分に同色のリボンが結ばれていた。
「あ、ありがと……?」
戸惑いつつも受け取った瑛璃は、航の開けるように、との身振りに従う。
「わあ。すごい、綺麗」
リボンを解いて逆さまにした袋の口から掌に零れたのは、透き通ったハート型のバッグチャームだ。
つるりと滑らかな表面ではなく、多面カットで光を反射して煌めいている。
「それ、水晶なんだ」
ああ、そうか。航の言葉に、|瑛璃へのプレゼント《これ》を買うための街行きだったのか、とふいに思い当たった。
普通の買い物なら、航は別の日に瑛璃を誘ってくれた気がする。
「最初の日にさあ、名前の話になったじゃん? 母さんが瑛璃ちゃんの名前のこと『キラキラで~』みたいに言ってて、『キラキラネームって悪口だろ! 何言ってんだこのおばちゃん!』って青褪めたっていうか」
確かにそうだった、と思い出す。
「うん。ありがとう、航くん。本当にすっごく楽しかった!」
花火を終えて帰宅し、持ち帰った残骸を片付けるのも手伝う。
部屋に戻った瑛璃は、ノックの音に『一人の顔』を浮かべつつドアへ数歩足を運んだ。
開けたドアの向こうに立っていたのは、予想通り従兄だった。
「瑛璃ちゃん。あの、これ」
緊張を隠し切れない様子で彼が突き出した右手には、小振りな可愛らしいピンクの布製の袋。口の部分に同色のリボンが結ばれていた。
「あ、ありがと……?」
戸惑いつつも受け取った瑛璃は、航の開けるように、との身振りに従う。
「わあ。すごい、綺麗」
リボンを解いて逆さまにした袋の口から掌に零れたのは、透き通ったハート型のバッグチャームだ。
つるりと滑らかな表面ではなく、多面カットで光を反射して煌めいている。
「それ、水晶なんだ」
ああ、そうか。航の言葉に、|瑛璃へのプレゼント《これ》を買うための街行きだったのか、とふいに思い当たった。
普通の買い物なら、航は別の日に瑛璃を誘ってくれた気がする。
「最初の日にさあ、名前の話になったじゃん? 母さんが瑛璃ちゃんの名前のこと『キラキラで~』みたいに言ってて、『キラキラネームって悪口だろ! 何言ってんだこのおばちゃん!』って青褪めたっていうか」
確かにそうだった、と思い出す。
しかし、まるで遥か遠い出来事のようだ。まだ一か月しか経っていないというのに。
不安に溺れそうだったあの頃からは信じられないほど馴染んでいる自分がいた。
「そんなの全然。私は悪い意味には取らなかったよ、それに──」
「うん。瑛璃ちゃんが上手く流してくれて助かった~、ってすごいホッとしたんだ」
瑛璃が言い掛けるのに、航が決まりが悪そうに続ける。
「でも、今更だけど昨日調べたらさ。『瑛璃』って漢字が宝石とかそういう意味なんだって初めて知って」
そういや母さん国文科だったんだよな、と彼は目を伏せた。
「あのとき瑛璃ちゃんの前で余計なこと言って、『こいつ頭悪いんだ』って恥かかなくて済んでよかった! ってもう昨日は生きた心地しなかったくらいで」
「……正直、慣れてるから。いちいちそんな風に感じないよ」
良くも悪くも今風の名として、「キラキラネーム」と揶揄されることは珍しくもない。
面と向かっては少ないとしても、陰で嘲笑されていることもあったのは気づいていた。
「それで、瑛璃ちゃんの名前って『透明な宝石』とか『水晶』みたいな感じだから、じゃあ何かそういうもの記念に贈りたいと思って」
だから、水晶。
掌に載せたハートを見つめて口の中で呟く。
瑛璃の名にちなんだ、煌めく透明な石。
不安に溺れそうだったあの頃からは信じられないほど馴染んでいる自分がいた。
「そんなの全然。私は悪い意味には取らなかったよ、それに──」
「うん。瑛璃ちゃんが上手く流してくれて助かった~、ってすごいホッとしたんだ」
瑛璃が言い掛けるのに、航が決まりが悪そうに続ける。
「でも、今更だけど昨日調べたらさ。『瑛璃』って漢字が宝石とかそういう意味なんだって初めて知って」
そういや母さん国文科だったんだよな、と彼は目を伏せた。
「あのとき瑛璃ちゃんの前で余計なこと言って、『こいつ頭悪いんだ』って恥かかなくて済んでよかった! ってもう昨日は生きた心地しなかったくらいで」
「……正直、慣れてるから。いちいちそんな風に感じないよ」
良くも悪くも今風の名として、「キラキラネーム」と揶揄されることは珍しくもない。
面と向かっては少ないとしても、陰で嘲笑されていることもあったのは気づいていた。
「それで、瑛璃ちゃんの名前って『透明な宝石』とか『水晶』みたいな感じだから、じゃあ何かそういうもの記念に贈りたいと思って」
だから、水晶。
掌に載せたハートを見つめて口の中で呟く。
瑛璃の名にちなんだ、煌めく透明な石。
「えっと、ア、アクセサリーとかの方がよかったと思うんだけど! どうしても『水晶』にしたくて、他は置物っていうか飾っとくようなのばっかでさ」
言い訳するように早口になる従兄。
「宝石屋さんはやっぱ、……俺なんか場違いだし。親にもらった小遣いで買うのは違うじゃん? これ、ゴールデンウィークに単発バイトした分だから!」
「私はすごく好きよ。とっても綺麗で可愛い。それに、アクセサリーは確かに素敵だけど普段付けられないでしょ。校則違反だし。これなら毎日持ってられるわ」
溢れる喜びを乗せた言葉に、彼は安心したように口元に笑みを湛える。
言い訳するように早口になる従兄。
「宝石屋さんはやっぱ、……俺なんか場違いだし。親にもらった小遣いで買うのは違うじゃん? これ、ゴールデンウィークに単発バイトした分だから!」
「私はすごく好きよ。とっても綺麗で可愛い。それに、アクセサリーは確かに素敵だけど普段付けられないでしょ。校則違反だし。これなら毎日持ってられるわ」
溢れる喜びを乗せた言葉に、彼は安心したように口元に笑みを湛える。