「えりか、一緒に帰らないか?」
教室のドアの外から声が掛かる。振り返ると、そこには幼馴染みの
悠斗が立っていた。
なんだか久し振りな気がする。二人とも毎日学校に来ているのに。
家が近く、幼稚園からずっと一緒だった二人。
クラスは離れることも多かったが、それでも小学校まではそれなりに親しくしていた。
けれど、中学入学以降は話すことも減っていた。特に高校、……中学卒業後は。
──最後にまともに話したのは、いつだったかな。
「……うん」
私は鞄を手に取り、立ち上がった。
正門を出て駅に向かい、電車に揺られること十五分。
自宅の最寄り駅を出て歩き出した途端、いきなり雨が降り出した。
家はまだ先だ。傘なしではずぶぬれになってしまう。
風とともに冷たい雨が顔を打った。灰色の空は低く垂れこめていて、世界の彩度をひとつ奪ったようだ。
「商店街のどっかの店の軒先でしばらく雨宿りするか。多分通り雨だからすぐ止むよ」
私たちは無言で走り出した。アスファルトを叩く雨音、濡れた制服が肌に張り付く感触。
「うわ、結構すごいな……。予報では降るなんて言ってなかったよな?」
「朝、家出るときは晴れてたしね」
天気の変わりやすい時期なので、予報は必ず確かめていたのに。確かに「快晴」ではなかったが、まさかこんなに激しく降るなんて。
通りの店々の灯りが、雨粒越しにぼやけて見えた。
二人が辿り着いたのは、数年前に閉店して後も入らない古びた元書店の軒下だった。アーケードではないので、路面から跳ね返る飛沫が足元を濡らす。
地方都市の郊外の商店街は、二割方はシャッターが下りたままで営業していない。この程度ならまだ「シャッター街」とまでは言わないのだろうか。よくわからなかった。