こんな夢を見た。
黒いシルクのような空の端が、ほんのりと明るんできた。星がひとつ瞬いている。貴女と別れてから、この景色をもう何度見たかも分からない。この世に不変のものがあるとすれば、それはこの空くらいのものだろう。
ふと、星の破片を見下ろした。墓標である。土の下から私の方へ、ぬっと青い茎が伸びてきた。その茎の先に、美しい白百合の花が咲いた。ああ、ずっと貴女に逢いたかった。
右手に視線を遣ると、屋敷がある。辛うじてそれだと分かるが、もう朽ちていた。岩にこびりついた苔も、昔より増えているような気がした。あの縁側の奥。そうだ、あそこからずっと、貴女はこの庭を眺めていたのだ。
感傷に浸る私を呼び戻すように、貴女は私の胸をちょんと突いた。貴女は私に向かって、
「百年ぶりですね」と微笑んだ。鼻の奥をくすぐる、白百合の良い匂いがした。ぽたりと露が落ちた。花は、自分の重みでふらふらと揺れた。私は挨拶の代わりに花弁に接吻をした。
星はもうどこかへ消えてしまった。空は青かった。露に濡れた貴女は、眩しい陽の光を浴びて螺鈿のようにきらきらと輝いていた。