地下鉄の出口から、なだらかな坂道が延びている。沿道の桜並木が花びらを散らしていた。
「あったね、桜。私たちの高校にも」
隣の彼女が目を細める。
昇降口を出た先に、桜の古樹が立っていた。卒業する日、その下に呼び出された。あれはもう十年も前になる。
「ね、あの頃、本当はどっちが好きだったの?」
ともに大事な友だちだった。一人を選べば別の一人を傷つける。二人の仲も壊すだろう。答えを出さないままでいた。それが正しいことだと信じていた。
「ごめん。蒸し返したみたいになっちゃった。そんな顔しないでよ。おめでたい日なんだから」
微笑む彼女の黒髪に、花びらがはらりと落ちた。そっと右手で摘まみ上げる。照れ臭そうに、彼女が上目遣いで僕を見た。「さあ、行こう」
桜並木のその先に、教会が建っている。
今日、僕らは夫婦になる。