表示設定
表示設定
目次 目次




月は半分、浮かんでいる。

ー/ー



 目的も無く、街を歩いていた。
 正体不明の焦燥感に駆られ、追われるように家を飛び出してきたのだ。
 うるさく鳴る蝉の声が、僕の心を掻き立てる。
 ふと、空を見上げると、夏の白々しい青空に、薄白い月が浮かんでいた。
 薄雲をクッキー型でくり抜いたような、ひどく不自然な月だった。
 僕は、とても不安な気持ちになった。
 風が吹いたら、煙のように溶けて消えてしまいそうだったから。
 この世界が嘘でできている気さえした。
 僕は居ても立っても居られず、月に向かって恐る恐る息を吹いた。
 汗が頬を伝う。
 月は。
 月は淡く、そこにあり続けていた。
「なんだ……」
 僕はやっと安心した。




スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 三日月の影には


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 目的も無く、街を歩いていた。
 正体不明の焦燥感に駆られ、追われるように家を飛び出してきたのだ。
 うるさく鳴る蝉の声が、僕の心を掻き立てる。
 ふと、空を見上げると、夏の白々しい青空に、薄白い月が浮かんでいた。
 薄雲をクッキー型でくり抜いたような、ひどく不自然な月だった。
 僕は、とても不安な気持ちになった。
 風が吹いたら、煙のように溶けて消えてしまいそうだったから。
 この世界が嘘でできている気さえした。
 僕は居ても立っても居られず、月に向かって恐る恐る息を吹いた。
 汗が頬を伝う。
 月は。
 月は淡く、そこにあり続けていた。
「なんだ……」
 僕はやっと安心した。