表示設定
表示設定
目次 目次




第四部 30話 自称神出鬼没

ー/ー



「兄さん兄さん! どうでしたか!?」

 帰りの馬車で、ティアナは得意げに胸を張った。
 分かりやすく「褒めてくださいっ」ということだろう。

「ああ、良かったよ」
「へへへ……」

 ティアナは嬉しそうに微笑むと、俺の頭からエルを奪った。
 ご機嫌でエルと一緒に戯れている。

「……二人とも、戦えるんだね。ちょっと意外だった」
 フレアが俺の正面で言った。

「そう見えても仕方ないか。
 でも、ここに来てるメンバーは全員戦えるぞ」

「そりゃそうだよね……。
 王国としても重要な任務だろうし」

 俺の言葉にフレアは納得した様子で頷いた。
 連合に潜入するのに中途半端なメンバーでは来ない。

「あ、ナタリー以外」
「あれは役割が違うでしょ」

 俺の補足に、フレアがすぐに返した。
 ……流石によく分かってる。



「おぉ!?」
「きゃ……!」

 その時、急に馬車が大きく揺れた。
 咄嗟に隣のティアナを抱き止める。

「申し訳ありません! 馬車の部品が破損したようです。
 すぐに交換しますので、少しだけお待ちください」

 少し待つと、御者が声を掛けてきた。馬車の故障らしい。
 ティアナが「いいですよー」と応じる。

「俺は外に出てるよ」
「うん、その方が良いね」

 俺の言葉にフレアが頷いた。
 一人は外の様子を窺った方が良いだろう。

 馬車の外に出る。
 外は夕暮れ時の大きな通りだった。

 まだ人通りも少なくない。
 流石に仕掛けてくることはないかな。

「……エル」
 念のため『青い幻』を準備しようとする。

「あれ? ……くそ」

 エルはまだ馬車の中だ。
 ティアナと一緒にいるのだろう。

 一度、馬車に戻ろうと――

「あのぉ、ちょっと良いですかぁ」
 聞き覚えのある声がした。

 ――足を止める。

「……連合にも出てくるんですか?」
「いやぁ、行商人なもので……」

 声は近くの路地裏から聞こえてきた。
『自称神様で良いや』の使い。どこでも現れる行商人だ。

 こうなることを『知って』……いや『聞いて』いたから待ち伏せたのか。おそらく、エルがいないことも織り込み済みだ。

「はぁ……用件は何ですか?」
「酷い言い草ですねぇ! こっちは伝言を伝えてるだけですよぉ」

 一度、混ぜっ返してから行商人は続けた。

「……ブローチを確保しろ、とだけ」
「……!?」
 
 ブローチと言えば、あの老婆のブローチか。
 それはつまり『ハーフエルフの小国』の王女が重要ということか?
 
「では……」
 行商人が去ってゆく。

 すぐに馬車は走り出した。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第四部 31話 キーアイテム


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「兄さん兄さん! どうでしたか!?」
 帰りの馬車で、ティアナは得意げに胸を張った。
 分かりやすく「褒めてくださいっ」ということだろう。
「ああ、良かったよ」
「へへへ……」
 ティアナは嬉しそうに微笑むと、俺の頭からエルを奪った。
 ご機嫌でエルと一緒に戯れている。
「……二人とも、戦えるんだね。ちょっと意外だった」
 フレアが俺の正面で言った。
「そう見えても仕方ないか。
 でも、ここに来てるメンバーは全員戦えるぞ」
「そりゃそうだよね……。
 王国としても重要な任務だろうし」
 俺の言葉にフレアは納得した様子で頷いた。
 連合に潜入するのに中途半端なメンバーでは来ない。
「あ、ナタリー以外」
「あれは役割が違うでしょ」
 俺の補足に、フレアがすぐに返した。
 ……流石によく分かってる。
「おぉ!?」
「きゃ……!」
 その時、急に馬車が大きく揺れた。
 咄嗟に隣のティアナを抱き止める。
「申し訳ありません! 馬車の部品が破損したようです。
 すぐに交換しますので、少しだけお待ちください」
 少し待つと、御者が声を掛けてきた。馬車の故障らしい。
 ティアナが「いいですよー」と応じる。
「俺は外に出てるよ」
「うん、その方が良いね」
 俺の言葉にフレアが頷いた。
 一人は外の様子を窺った方が良いだろう。
 馬車の外に出る。
 外は夕暮れ時の大きな通りだった。
 まだ人通りも少なくない。
 流石に仕掛けてくることはないかな。
「……エル」
 念のため『青い幻』を準備しようとする。
「あれ? ……くそ」
 エルはまだ馬車の中だ。
 ティアナと一緒にいるのだろう。
 一度、馬車に戻ろうと――
「あのぉ、ちょっと良いですかぁ」
 聞き覚えのある声がした。
 ――足を止める。
「……連合にも出てくるんですか?」
「いやぁ、行商人なもので……」
 声は近くの路地裏から聞こえてきた。
『自称神様で良いや』の使い。どこでも現れる行商人だ。
 こうなることを『知って』……いや『聞いて』いたから待ち伏せたのか。おそらく、エルがいないことも織り込み済みだ。
「はぁ……用件は何ですか?」
「酷い言い草ですねぇ! こっちは伝言を伝えてるだけですよぉ」
 一度、混ぜっ返してから行商人は続けた。
「……ブローチを確保しろ、とだけ」
「……!?」
 ブローチと言えば、あの老婆のブローチか。
 それはつまり『ハーフエルフの小国』の王女が重要ということか?
「では……」
 行商人が去ってゆく。
 すぐに馬車は走り出した。