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第四部 27話 一夜漬け焼き刃と厚顔無知スマイル

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 開会式が終わると、俺たちは塔の一つに移動した。
 四つの塔は魔法の『地』『水』『火』『風』を表しているとのことだった。

 この四つの系統が『統一学舎』の学問の区分になっているようだ。
『王立学院』の場合は『魔法』『スキル』『剣技』で才能や適性で分ける。
 学問の体系からして、王国と連合では多少異なっているらしい。

 ティアナとグレイに続いて、塔を登っていく。
 指定された部屋に入ると、すぐに授業が始まった。

 ……なるほど。
 分類は違っても、仕組み自体はそんなに変わらないのか。

 後ろから授業を聞き流していると、やがて授業は終わったようだった。
 教師が大した挨拶もなしに出て行った。

「お?」

 すると、一瞬でティアナとグレイが生徒に囲まれていた。
 流石に向上心が強い生徒も多いらしい。

「わっ!?」

 まずティアナがあっという間に囲まれる。一気に質問攻めにあっていた。
 男子の比率が多い気がするのは少し不愉快だが。

「ティアナさんは二年生なんですか?」
「あ、そうですよ」
「すごいですね! 二年生なんて初めてですよ?」
「えへへ……ありがとうございます。嬉しいですね」
 
 ティアナが恐縮するように笑いながら小さくなる。
 こういう動作が敵を作りにくいタイプなんだろうな。

 ……何故か俺は別のことが気になった。
 ……今日『統一学舎』でも補習授業はあるのだろうか。

 考えないことにした。

「……?」
「質問しても良いですか?」

 当然、グレイの方にも生徒がやってくる。
 グレイは一瞬だけ面食らった顔をしたが、ナタリー直伝のスマイルを浮かべた。

「ああ、良いぞ」

 あの恰好でこういう表情を浮かべれば、グレイでも賢そうに見えるものだな。
 ナタリーを褒めるべきなのか。学院を卒業したのに賢く見えないグレイに非があるのか。

「グレイ君は剣術が主だとか。
 スキルと魔法に対して、剣術や体術の意義をどう考えます?」

 生徒の一人が質問してきた。
 確か『統一学舎』では魔術とスキルを育てるのであり、剣術は対象外だとか。

「そうだなぁ……。
 まずはその三つの区別を明確にするところからじゃないか?」

 グレイが笑みを浮かべたまま、考え込むような素振りを見せる。
 さらに、疑問を投げかけた。

「なるほど。スキルも直接作用するものとそうでないものがあるか」
「ああ、それに魔法だって剣術と組み合わせることができないわけではない……」

 生徒たちは頷いている。
 教育対象ではなくても、実際に剣術が使える生徒も多いのだろう。

「その通り。連合の英雄が剣術を極めていたのが良い証拠だろ。
 ……他の英雄と大きな差があったとは思えない」

 グレイが語り掛けるように続ける。
 周りの生徒が納得したように頷いた。

 いやー、大したものだ。
 ほんと、すげーよナタリー。

 ナタリーの秘策。
 その一、話しかけるな。
 その二、話しかけられたら、笑って頷け。
 その三、質問されたら、質問で返せ。
 その四、『その三』の後、指定した台詞から適したものを口にしろ。

 そう。きっとアイツは本当に天才なんだな。
 この台詞はナタリーが事前に準備していたのだ。

『その通り。連合の英雄が剣術を極めていたのが良い証拠だろ。
 ……他の英雄と大きな差があったとは思えない』

 グレイは笑いながら一度訊き返した後、準備された台詞から口に出しているだけだ。ナタリーは早々にこの手法に路線変更し、台詞の丸暗記を進めた。

「…………」

 だけどグレイも頑張っている。
 正直、俺は褒めてやりたい。

 だって、凄いじゃねぇか!
 あいつ、あれで何も分かってないんだぜ?

 間違いないさ。
 賭けてもいい。

 何を訊かれてるかも分かってない!
 何を言ってるのかも分かってない!



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 開会式が終わると、俺たちは塔の一つに移動した。
 四つの塔は魔法の『地』『水』『火』『風』を表しているとのことだった。
 この四つの系統が『統一学舎』の学問の区分になっているようだ。
『王立学院』の場合は『魔法』『スキル』『剣技』で才能や適性で分ける。
 学問の体系からして、王国と連合では多少異なっているらしい。
 ティアナとグレイに続いて、塔を登っていく。
 指定された部屋に入ると、すぐに授業が始まった。
 ……なるほど。
 分類は違っても、仕組み自体はそんなに変わらないのか。
 後ろから授業を聞き流していると、やがて授業は終わったようだった。
 教師が大した挨拶もなしに出て行った。
「お?」
 すると、一瞬でティアナとグレイが生徒に囲まれていた。
 流石に向上心が強い生徒も多いらしい。
「わっ!?」
 まずティアナがあっという間に囲まれる。一気に質問攻めにあっていた。
 男子の比率が多い気がするのは少し不愉快だが。
「ティアナさんは二年生なんですか?」
「あ、そうですよ」
「すごいですね! 二年生なんて初めてですよ?」
「えへへ……ありがとうございます。嬉しいですね」
 ティアナが恐縮するように笑いながら小さくなる。
 こういう動作が敵を作りにくいタイプなんだろうな。
 ……何故か俺は別のことが気になった。
 ……今日『統一学舎』でも補習授業はあるのだろうか。
 考えないことにした。
「……?」
「質問しても良いですか?」
 当然、グレイの方にも生徒がやってくる。
 グレイは一瞬だけ面食らった顔をしたが、ナタリー直伝のスマイルを浮かべた。
「ああ、良いぞ」
 あの恰好でこういう表情を浮かべれば、グレイでも賢そうに見えるものだな。
 ナタリーを褒めるべきなのか。学院を卒業したのに賢く見えないグレイに非があるのか。
「グレイ君は剣術が主だとか。
 スキルと魔法に対して、剣術や体術の意義をどう考えます?」
 生徒の一人が質問してきた。
 確か『統一学舎』では魔術とスキルを育てるのであり、剣術は対象外だとか。
「そうだなぁ……。
 まずはその三つの区別を明確にするところからじゃないか?」
 グレイが笑みを浮かべたまま、考え込むような素振りを見せる。
 さらに、疑問を投げかけた。
「なるほど。スキルも直接作用するものとそうでないものがあるか」
「ああ、それに魔法だって剣術と組み合わせることができないわけではない……」
 生徒たちは頷いている。
 教育対象ではなくても、実際に剣術が使える生徒も多いのだろう。
「その通り。連合の英雄が剣術を極めていたのが良い証拠だろ。
 ……他の英雄と大きな差があったとは思えない」
 グレイが語り掛けるように続ける。
 周りの生徒が納得したように頷いた。
 いやー、大したものだ。
 ほんと、すげーよナタリー。
 ナタリーの秘策。
 その一、話しかけるな。
 その二、話しかけられたら、笑って頷け。
 その三、質問されたら、質問で返せ。
 その四、『その三』の後、指定した台詞から適したものを口にしろ。
 そう。きっとアイツは本当に天才なんだな。
 この台詞はナタリーが事前に準備していたのだ。
『その通り。連合の英雄が剣術を極めていたのが良い証拠だろ。
 ……他の英雄と大きな差があったとは思えない』
 グレイは笑いながら一度訊き返した後、準備された台詞から口に出しているだけだ。ナタリーは早々にこの手法に路線変更し、台詞の丸暗記を進めた。
「…………」
 だけどグレイも頑張っている。
 正直、俺は褒めてやりたい。
 だって、凄いじゃねぇか!
 あいつ、あれで何も分かってないんだぜ?
 間違いないさ。
 賭けてもいい。
 何を訊かれてるかも分かってない!
 何を言ってるのかも分かってない!