清志郎はあらゆる雑兵を蹴散らしながら、そして二人は彼の通った後の道を歩いて行った結果、その組の長がいるとされる部屋に辿り着く。
清志郎は一切の
躊躇なしに、固く閉じられた扉をたった一発の拳で殴り壊す。突然の衝撃に、その場にいた構成員数名と現状の長は思わず後ずさり。
「やあやあヤクザ諸君。事情ありありな小児科医、有馬清志郎が己の怒りの丈をぶつけに来たよ」
その名を聞いた途端、その場の全員がすぐさま戦闘態勢を取る。しかし、それら構成員全てが、清志郎の拳一発で沈んでいく。変身せずとも戦闘面においては随一の能力を持ち合わせているため、全員が舐めてかかっていたわけではないのにも拘らず、ワンパンチKOが常となってしまう。
「――確か、君は……この王漣組の若頭、だったかな? 組長はどこに行ったんだ」
「……今は、俺が組長代理を務めている」
その男の名は、
灰崎廉治。彼は、少し前まで王漣組若頭を務める存在であった。しかし、突然の王漣組組長の死亡により、組長代理としてこのグレープ・フルボディの闇を一身に背負っている男であるのだ。
見てくれはヤクザの中でも比較的インテリ寄りの風貌。筋骨隆々というよりは、全体的に引き締まった体をしている。顔も整っており、傷一つないもののその眼光は裏社会に生きてきた者の鋭さを持ち合わせている。
「……アンタ、ウチの組ほぼ崩壊させて、何がしたいんだ」
「他でもないさ、私の患者を取り戻しに来た」
グレープ・フルボディには、麻薬、多額の金、銃刀法違反の凶器たち以外に、悪い噂があった。それこそ、人身売買。しかも成人を売買しているのではなく、抵抗できない子供たちを元とするものであったのだ。
「――ここの『闇』だけは、職業柄……『俺』と信一郎は、どうあっても許すわけにはいかないんだよ」
今まで微笑を絶やさない清志郎であったが、初めて怒りが顔に表れたのだ。
そんな清志郎の怒りを感じ取ると、灰崎はすぐさま、卓上に置かれていたチーティングドライバーを装着する。しかし、その表情は諦めに満ちていた。
「あれって――」
「ンだよ、結局『教会』絡みか」
「…………」
清志郎や英雄の卵たちに抵抗するべく、すぐさま上部を押し込んで起動させる。
「――今までの日常を、もう誰にも奪わせるかよ。……変身」
『Loading――――Game Start』
変貌した灰崎は、さながら狼男のような風貌であった。全身の筋肉が盛り上がり、人間を遥かに超えた硬い体毛で全身を覆う。目は理性こそ消えてないものの、一切の部外者を許さない血走った瞳を三人に向ける。人間の体躯を超えた、三メートル級の巨大なものであったが、清志郎は一切平静を崩さない。
「――灰崎、とか言ったね。不本意ではあるが……俺も『狼』なんだよ。アイツが
飛蝗、俺が
狼……いい関係性だと、思わないか」
手にしたのは、デバイスドライバー・シン。すぐさま装着すると、認証するのはあの時の漆黒のカード……否、ライセンスであった。
「二人とも、ちょーっと距離……開けた方がいいよ。傷つきたくないならね」
『認証、狼王ロボ、戦場に立つ! 人間の知恵を超越した、狼の王! 究極不遜の存在は、あらゆる邪悪を食い潰す!!』
認証直後に装填すると、当人の周りを駆け回る二頭の狼。幻覚などではなく、それぞれが鋼鉄のビジョンで出来上がっている。一匹は群青、一匹は純白。その間にどんな障害物があろうと、壁は砕け椅子やテーブルは崩壊していくのみである。二人が距離を開けなかったら、間違いなく二頭の狼に為す術なく傷つけられるだけである。
「久方ぶりの戦いだ――少しは楽しませてくれよ? ――変身」
『GAME START! You Are SUPER HERO!!』
ドライバー両端を荒く押し込むと、二頭の狼は清志郎と機械的に融合。やがて現れるのは、信一郎のものと似たデザインでありながら、狼の荒々しさを表したような
装甲が姿を見せる。
青と白、そして金属光沢。男の子が夢見る変身ヒーローそのままの姿であり、狼のモチーフを頭部装甲、腕部装甲全体にあしらっている。装甲全体が、触れるもの全てを傷つけんと言わんばかりに刺々しく、野性味あふれるデザインとなっている。信一郎と同様のドライバーで変身する存在だからこそ、圧倒的な風格、圧倒的な魔力量を誇っていたのだ。
「アイツが……確か『アーマード・ダブルオー』と呼ばれていたか。俺は……このビジュから『ローン・ウルフ』と呼ばれていたよ。名前で呼ぶか、コードネームで呼ぶか……お好きにしていいぜ?」