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第百五十四話

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 三人の目の前に広がっていたのは、ミディアム以上に金と性に塗れた地であった。
 そこらを歩く人々に、堅気の人間などいるはずもなく、ほぼすべてが厳(いか)ついヤクザの人間。それらが露出の激しい女を侍らせ、辺りを練り歩く。食欲を満たす場はもちろん存在するが、それらは非合法なルートで入手した超高級品ばかり。
 さらに、日本のヤクザだけではなく、世界各国のマフィア的存在もそこら中に。二人は、自分の安全を保つべく、清志郎の傍を離れない。
(実に正しい判断だ。私が侍らせている童顔の風俗嬢……そういった顔をしていれば、基本ちょっかいは出されないだろうね)
 不本意ではあったが、二人は少しでも怪しまれないよう清志郎により近づく。
 一歩道を行けば、売られているものはさらに様変わり。女や食ばかりだったのが、合成麻薬や銃刀法など知らないと言わんばかりの武器のオンパレード。日頃、巷を騒がせるニュースの中に、「暴力団による傷害事件」があるものだが、その武器の調達先は大概ここである。
「――なぜこれを、政府は知らないのでしょう」
「それは至極単純、このグレープ・フルボディを含む全ての建設に、ここを拠点とするヤクザ以外にも、それぞれの県の重鎮が関わっているからさ」
 建設の根幹にいるのは、れっきとしたヤクザ。しかし、山梨の重鎮やら何やらが、それらの事実を丁寧に包み隠す。最初は自分たちの至高かつ究極の遊び場として用意した場こそ、グレープ・フルボディの原型。今でいう、ミディアムボディの在り方に近しいものであった。そこから快楽を求める他県の重鎮も静かに加担、その娯楽に身を浸らせ、さらなる喜びを希求し続けた。そのために、援助を惜しむことはない。
 次第に豪華になるフルボディの原型とミディアムボディであったが、それ以上の楽しみを望んだヤクザが、一蓮托生と言わんばかりに秘密を共有。反社会的勢力が主体となり、数多くの企業の協賛を募り、作り上げたのが今のようなフルボディであったのだ。秘密を知った人間がゲロった瞬間に、自分たちがこよなく楽しんできた、この遊び場はなくなる。ある種無言の脅しであった。
 自らの遊び場を共有する代わりに、汚れた深層についての言及はしない。それとある程度の資金援助だけで、自分たちの遊び場は永遠不変のもの。ゆくゆくは政府関係者も取り込み、国全体で作り上げる公然の秘密になろうとしている。それこそが、グレープの真相であったのだ。
「――強迫観念っていうのかな。失うことは、いつだって辛いもの。だからこそ、今あるこの居場所を守ろうとする。皆が皆、ここに世話になっているからね」
「――だから、これほどの犯罪の温床が無くならない、と。すげえ結託っぷりだな。マフィア同士の結託もかなりのもんだ、って聞くしよ……ある種当然と言えるのかもな」
 一行はこのフルボディの経緯を知りながら、ある場所に辿り着く。それは、他でもないこの現グレープ・フルボディの統治をおこなう王漣≪オウレン≫組事務所であった。
「――おいちょっと待てよ、ここヤクザの組事務所だろ」
「? そうだよ、どこに行くと思っていたの」
「いやあの……私たち流石に反社にはなりたくはありませんわよ??」
「大丈夫……その心配はないさ」
 メリケンサックをはめつつ、清志郎はその組事務所の扉を蹴破り、まさかの宣戦布告。何事か、とその場にいた構成員は皆清志郎を睨みつける。
「だって、こっちからケンカ売りに行くからね」
「もっと賢い手段はありませんの!?」
 学生二人の有無を言わせず、王漣組と英雄側の強制抗争が始まった。



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 三人の目の前に広がっていたのは、ミディアム以上に金と性に塗れた地であった。
 そこらを歩く人々に、堅気の人間などいるはずもなく、ほぼすべてが厳|厳《いか》ついヤクザの人間。それらが露出の激しい女を侍らせ、辺りを練り歩く。食欲を満たす場はもちろん存在するが、それらは非合法なルートで入手した超高級品ばかり。
 さらに、日本のヤクザだけではなく、世界各国のマフィア的存在もそこら中に。二人は、自分の安全を保つべく、清志郎の傍を離れない。
(実に正しい判断だ。私が侍らせている童顔の風俗嬢……そういった顔をしていれば、基本ちょっかいは出されないだろうね)
 不本意ではあったが、二人は少しでも怪しまれないよう清志郎により近づく。
 一歩道を行けば、売られているものはさらに様変わり。女や食ばかりだったのが、合成麻薬や銃刀法など知らないと言わんばかりの武器のオンパレード。日頃、巷を騒がせるニュースの中に、「暴力団による傷害事件」があるものだが、その武器の調達先は大概ここである。
「――なぜこれを、政府は知らないのでしょう」
「それは至極単純、このグレープ・フルボディを含む全ての建設に、ここを拠点とするヤクザ以外にも、それぞれの県の重鎮が関わっているからさ」
 建設の根幹にいるのは、れっきとしたヤクザ。しかし、山梨の重鎮やら何やらが、それらの事実を丁寧に包み隠す。最初は自分たちの至高かつ究極の遊び場として用意した場こそ、グレープ・フルボディの原型。今でいう、ミディアムボディの在り方に近しいものであった。そこから快楽を求める他県の重鎮も静かに加担、その娯楽に身を浸らせ、さらなる喜びを希求し続けた。そのために、援助を惜しむことはない。
 次第に豪華になるフルボディの原型とミディアムボディであったが、それ以上の楽しみを望んだヤクザが、一蓮托生と言わんばかりに秘密を共有。反社会的勢力が主体となり、数多くの企業の協賛を募り、作り上げたのが今のようなフルボディであったのだ。秘密を知った人間がゲロった瞬間に、自分たちがこよなく楽しんできた、この遊び場はなくなる。ある種無言の脅しであった。
 自らの遊び場を共有する代わりに、汚れた深層についての言及はしない。それとある程度の資金援助だけで、自分たちの遊び場は永遠不変のもの。ゆくゆくは政府関係者も取り込み、国全体で作り上げる公然の秘密になろうとしている。それこそが、グレープの真相であったのだ。
「――強迫観念っていうのかな。失うことは、いつだって辛いもの。だからこそ、今あるこの居場所を守ろうとする。皆が皆、ここに世話になっているからね」
「――だから、これほどの犯罪の温床が無くならない、と。すげえ結託っぷりだな。マフィア同士の結託もかなりのもんだ、って聞くしよ……ある種当然と言えるのかもな」
 一行はこのフルボディの経緯を知りながら、ある場所に辿り着く。それは、他でもないこの現グレープ・フルボディの統治をおこなう王漣≪オウレン≫組事務所であった。
「――おいちょっと待てよ、ここヤクザの組事務所だろ」
「? そうだよ、どこに行くと思っていたの」
「いやあの……私たち流石に反社にはなりたくはありませんわよ??」
「大丈夫……その心配はないさ」
 メリケンサックをはめつつ、清志郎はその組事務所の扉を蹴破り、まさかの宣戦布告。何事か、とその場にいた構成員は皆清志郎を睨みつける。
「だって、こっちからケンカ売りに行くからね」
「もっと賢い手段はありませんの!?」
 学生二人の有無を言わせず、王漣組と英雄側の強制抗争が始まった。