「花見、行く?」
と友人の堤から聞かれた俺は、少しの間を空けて「行かない」と答えた。
高校三年生にもなると高いテンションというのを忘れる。元からそう高いわけではないけど、時間と共にどんどんと低くなっていく。
大人になるとはそういうことだろうと思うけど、それは俺特有の考えなのかもしれない。金曜日のせいもあってなのかクラスメイトたちのテンションが高い。
現在は四月。放課後の教室は賑やかで学年始め特有の一体感が漂っていて、俺はそれについて行けないでいた。
花見の提案をしたのはクラスの中心になりつつある女子たちで、理由は桜が咲いている間で授業が午前中で終わるのはきょうぐらいなものだから、ということだった。
その話に他の女子たちが乗って男子のほうにも広がってきた。女子たちと同じように数人が話に乗って、いまは一歩下がっている生徒たちがどう出るかというところだ。
堤は行く気があるらしく、俺の一言を聞いて少々残念そうな顔をしていた。「何で?」と理由を訊いてくる。
「何かもう眠いから」
はっきりした理由はないので適当に答えた。
「行けば目が覚めるかも」
「かも、じゃあな」
「なら覚める」
「ならって何?」
話が終わりそうにないので「帰る」とソフトに振り切って教室後ろのドアに向かった。