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第三部 78話 全て

ー/ー



「対象は『エリーナ・コルト』『ソフィア・ターナー』『魔弾』よ。
 さらに視界の共有も行うわよ? 長時間の戦闘は難しいわ」

 エルの言葉に小さく頷いた。
 視界の共有はちょうどそこの森で使ったものだ。

 エルにはソフィアを優先的に見てもらうように言ってある。
 これで連携の質はさらに上がるはずだ。

 ただし、使いすぎると頭痛が酷くなるだろう。
 本当に短期決戦仕様だ。

『青い幻』と『視界共有』を確認すると、俺はエリーナへと踏み込んだ。
 同時にソフィアも踏み込んでいる。

 目的は足止めだ。
 こちらから仕掛けるべきだろう。

 まずは俺が右手で小剣を斬り払う。
 エリーナが軽く下がって避けた。

 その間にソフィアがリックを槍に錬金して、何度も突く。
 エリーナがひらひらと後ろへと下がり、避けていく。

 俺は左のナイフを抜きながら斬り返す。
 ソフィアの槍衾の隙間をすり抜けるようにエリーナの首を狙う。

 エリーナは俺の一撃に合わせて、一瞬だけ風の魔法でいなした。
 次に俺は多数の魔弾をエリーナ目掛けて放った。

 魔弾は狙い通りに槍衾の間を抜けながらエリーナに迫る。
 しかし、エリーナは後ろに下がりながら単純な体術で避け続けた。
 
 さらに障壁を展開する。
 魔弾が跳ね返る中、エリーナが槍衾を避けながら下がっていく。
 
 ……相変わらず、化物だな。
 一度、ソフィアに目配せをする。
 
 ソフィアが一際強く踏み込んだ。
 リックを長剣に変えると袈裟に斬り下ろす。
 
 俺は障壁をさらに展開して魔弾の向きを微調整する。
 頭と両手両足にそれぞれ五発。ソフィアの一撃に合わせる。
 
 俺自身は障壁の一つを足場に一度跳ぶ。
 エリーナの死角から小剣とナイフを左右に払った。
 
 ガキン、という硬い音が三つ。
 地面から突き出した白い剣が俺とソフィアの一撃を弾いた。
 
 迫る魔弾は風でいなす。
 それでも避け切れないものは空の左手で弾いた。
 
 すぐに白い煙が上がり、治癒魔法が発動する。
 この程度では負傷の内にも入らないだろう。
 
「さて、お互い準備はできたな」
「……いや、もうちょっとだけ待ってくれない?」
「……こちらはまだ準備中だわ。不公平よ」

 野営地を襲撃の上、二人掛かりで斬りかかった奴らの台詞である。
 俺たちの軽口に笑うと、今度はエリーナが踏み込んだ。
 
 赤い本を振るう。
 ……くそ、あの炎か。
 
 俺が障壁を踏んで上空へと逃げる。
 ソフィアはリックを盾に変えた。
 
 炎を何とか凌いだ俺たちへと白い剣が飛んできた。
 俺には二本、ソフィアは一本だ。ただし、エリーナ自身はソフィアへと向かった。

 俺は白い剣を一度弾くと障壁をもう一度蹴ってエリーナの上を取る。
 高さを一度確認すると――そのまま落下して小剣を突き立てようとする。

「――む」

 しかし、やはりというかエリーナは気が付いた。
 右に転がって避けて見せる。

 ――相変わらず呼吸すら乱れていない、か。
 ――仕方ない、使うか。

 俺は今まで使ってこなかった左手の甲にある魔法陣へと魔力を流した。
 普段使っている障壁は座標が完全に固定されている。
 ……要するに動かないのだ。

 しかし、この障壁は俺自身を中心とした相対座標を指定する。
 もっとも、常に魔力を消費し続けるから燃費は最悪だけどな。

「……初めて見るな」

 エリーナの驚いたような声。
 無理もない。これだけやり合えば手の内は全部見せたと思っているだろう。

 俺を中心に無数の障壁がゆっくりと回っている。
 大小様々な障壁が夕日に良く映えた。

「……!?」

 エリーナが慌てた様子で後ろに跳んだ。
 大急ぎで白い剣が戻っていく。

 次の瞬間――エリーナの周囲が切り裂かれた。
 テントも、木々も、野営の道具も何もかも……人以外は。
 
 エリーナは白い剣を三振り全て使って、どうにか防いでいた。
 初見で防ぐのは流石だな……レンでも避けられなかったのに。

「そっちもか……」

 やれやれと言わんばかりにエリーナが溜息を吐いた。
 しかし、その目は油断なくこちらを見つめている。

 俺の後ろではソフィアがナイフを握って立ち止まっていた。
 その刃は見えず、代わりにきらきらと輝いていた。

『アッシュ・クレフ』が『神鋼糸』と呼んでいた切札。
 こちらも長くは持たないだろう。

 頼んだぞ、ナタリー?
 ……本当にこの十五分間しか考えてないんだ。



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「対象は『エリーナ・コルト』『ソフィア・ターナー』『魔弾』よ。
 さらに視界の共有も行うわよ? 長時間の戦闘は難しいわ」
 エルの言葉に小さく頷いた。
 視界の共有はちょうどそこの森で使ったものだ。
 エルにはソフィアを優先的に見てもらうように言ってある。
 これで連携の質はさらに上がるはずだ。
 ただし、使いすぎると頭痛が酷くなるだろう。
 本当に短期決戦仕様だ。
『青い幻』と『視界共有』を確認すると、俺はエリーナへと踏み込んだ。
 同時にソフィアも踏み込んでいる。
 目的は足止めだ。
 こちらから仕掛けるべきだろう。
 まずは俺が右手で小剣を斬り払う。
 エリーナが軽く下がって避けた。
 その間にソフィアがリックを槍に錬金して、何度も突く。
 エリーナがひらひらと後ろへと下がり、避けていく。
 俺は左のナイフを抜きながら斬り返す。
 ソフィアの槍衾の隙間をすり抜けるようにエリーナの首を狙う。
 エリーナは俺の一撃に合わせて、一瞬だけ風の魔法でいなした。
 次に俺は多数の魔弾をエリーナ目掛けて放った。
 魔弾は狙い通りに槍衾の間を抜けながらエリーナに迫る。
 しかし、エリーナは後ろに下がりながら単純な体術で避け続けた。
 さらに障壁を展開する。
 魔弾が跳ね返る中、エリーナが槍衾を避けながら下がっていく。
 ……相変わらず、化物だな。
 一度、ソフィアに目配せをする。
 ソフィアが一際強く踏み込んだ。
 リックを長剣に変えると袈裟に斬り下ろす。
 俺は障壁をさらに展開して魔弾の向きを微調整する。
 頭と両手両足にそれぞれ五発。ソフィアの一撃に合わせる。
 俺自身は障壁の一つを足場に一度跳ぶ。
 エリーナの死角から小剣とナイフを左右に払った。
 ガキン、という硬い音が三つ。
 地面から突き出した白い剣が俺とソフィアの一撃を弾いた。
 迫る魔弾は風でいなす。
 それでも避け切れないものは空の左手で弾いた。
 すぐに白い煙が上がり、治癒魔法が発動する。
 この程度では負傷の内にも入らないだろう。
「さて、お互い準備はできたな」
「……いや、もうちょっとだけ待ってくれない?」
「……こちらはまだ準備中だわ。不公平よ」
 野営地を襲撃の上、二人掛かりで斬りかかった奴らの台詞である。
 俺たちの軽口に笑うと、今度はエリーナが踏み込んだ。
 赤い本を振るう。
 ……くそ、あの炎か。
 俺が障壁を踏んで上空へと逃げる。
 ソフィアはリックを盾に変えた。
 炎を何とか凌いだ俺たちへと白い剣が飛んできた。
 俺には二本、ソフィアは一本だ。ただし、エリーナ自身はソフィアへと向かった。
 俺は白い剣を一度弾くと障壁をもう一度蹴ってエリーナの上を取る。
 高さを一度確認すると――そのまま落下して小剣を突き立てようとする。
「――む」
 しかし、やはりというかエリーナは気が付いた。
 右に転がって避けて見せる。
 ――相変わらず呼吸すら乱れていない、か。
 ――仕方ない、使うか。
 俺は今まで使ってこなかった左手の甲にある魔法陣へと魔力を流した。
 普段使っている障壁は座標が完全に固定されている。
 ……要するに動かないのだ。
 しかし、この障壁は俺自身を中心とした相対座標を指定する。
 もっとも、常に魔力を消費し続けるから燃費は最悪だけどな。
「……初めて見るな」
 エリーナの驚いたような声。
 無理もない。これだけやり合えば手の内は全部見せたと思っているだろう。
 俺を中心に無数の障壁がゆっくりと回っている。
 大小様々な障壁が夕日に良く映えた。
「……!?」
 エリーナが慌てた様子で後ろに跳んだ。
 大急ぎで白い剣が戻っていく。
 次の瞬間――エリーナの周囲が切り裂かれた。
 テントも、木々も、野営の道具も何もかも……人以外は。
 エリーナは白い剣を三振り全て使って、どうにか防いでいた。
 初見で防ぐのは流石だな……レンでも避けられなかったのに。
「そっちもか……」
 やれやれと言わんばかりにエリーナが溜息を吐いた。
 しかし、その目は油断なくこちらを見つめている。
 俺の後ろではソフィアがナイフを握って立ち止まっていた。
 その刃は見えず、代わりにきらきらと輝いていた。
『アッシュ・クレフ』が『神鋼糸』と呼んでいた切札。
 こちらも長くは持たないだろう。
 頼んだぞ、ナタリー?
 ……本当にこの十五分間しか考えてないんだ。