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第三部 34話 相対

ー/ー



 昼休みのことだった。
 俺、グレイ、セシルの三人にソフィアが一緒だった。

「後期授業は良い成績を取りたいんだ」
 グレイが唐突に言い出した。

「まぁ、そうだよなぁ」
「お姉ちゃんに怒られたくない……」
 しかしすぐに俺とセシルは頷いた。

「でだ、何か賭けをしよう。そうでもないと身が入らないんだと思う」
「……分かった。確かに集中できていないかもしれない」
「なるほどな。でも何を賭けるんだよ? あまり大きすぎるものは……」
 セシルと俺も同意する。だが、大事にしすぎてはまずいだろう。

「分かってる。何か罰ゲーム程度で済むものが良いんだけどなぁ」
「んー、難しい」
 グレイとセシルが首を傾げた。

「土下座とかどうだ?」
 冗談めかして言ってみる。

「土下座?」
 グレイとセシル、それにソフィアも首を傾げた。

 そうか。この世界に土下座なんてないか。
 俺は軽く土下座について説明してみた。

「? 聞き覚えがあるような?」
 リックが小さく首を傾げていた。

 ちょうど、午後の授業で小テストが返ってくる。

「なら、俺が前回のテストよりも点数が低かったら土下座してやるよ。
 代わりに高かったら今日の宿題を見せろよ」
 グレイが笑いながら言った。

「じゃあ、俺が平均点の半分よりも点数が低かったら土下座する。
 もしも高かったら今度の休みは付き合ってもらう。エルの飯を買いに行く」
 俺も笑って応じた。

「……私が最高点の四分の一よりも点数が低かったら土下座する。
 逆に高かったら帰りに何か食べ物を奢って」
 セシルも頷く。

「なんて低レベルなの?」
 ソフィアが呆然と呟いた。



 小テストの答案が返ってきた後の休み時間。
 俺たち三人とソフィアは空き教室に集まった。
 ……ソフィアは心底迷惑そうである。

 全員、まだ自分の点数すら見ていない。
 机の上に裏返して答案を置いた状態である。

「行くぞ?」
 俺の言葉にグレイとソフィアが頷いた。

「せーの!」
 ばん、と一斉に自分の答案を裏返す。



「あの……もうやめないかしら?」
 ソフィアが気まずそうに呟いた。

 三人が向かい合って、互いに土下座していた。
 世にも珍しい三土下座だった。それも相土下座とでも言うべきか。

 ……経験したことがないタイプの地獄だった。



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 昼休みのことだった。
 俺、グレイ、セシルの三人にソフィアが一緒だった。
「後期授業は良い成績を取りたいんだ」
 グレイが唐突に言い出した。
「まぁ、そうだよなぁ」
「お姉ちゃんに怒られたくない……」
 しかしすぐに俺とセシルは頷いた。
「でだ、何か賭けをしよう。そうでもないと身が入らないんだと思う」
「……分かった。確かに集中できていないかもしれない」
「なるほどな。でも何を賭けるんだよ? あまり大きすぎるものは……」
 セシルと俺も同意する。だが、大事にしすぎてはまずいだろう。
「分かってる。何か罰ゲーム程度で済むものが良いんだけどなぁ」
「んー、難しい」
 グレイとセシルが首を傾げた。
「土下座とかどうだ?」
 冗談めかして言ってみる。
「土下座?」
 グレイとセシル、それにソフィアも首を傾げた。
 そうか。この世界に土下座なんてないか。
 俺は軽く土下座について説明してみた。
「? 聞き覚えがあるような?」
 リックが小さく首を傾げていた。
 ちょうど、午後の授業で小テストが返ってくる。
「なら、俺が前回のテストよりも点数が低かったら土下座してやるよ。
 代わりに高かったら今日の宿題を見せろよ」
 グレイが笑いながら言った。
「じゃあ、俺が平均点の半分よりも点数が低かったら土下座する。
 もしも高かったら今度の休みは付き合ってもらう。エルの飯を買いに行く」
 俺も笑って応じた。
「……私が最高点の四分の一よりも点数が低かったら土下座する。
 逆に高かったら帰りに何か食べ物を奢って」
 セシルも頷く。
「なんて低レベルなの?」
 ソフィアが呆然と呟いた。
 小テストの答案が返ってきた後の休み時間。
 俺たち三人とソフィアは空き教室に集まった。
 ……ソフィアは心底迷惑そうである。
 全員、まだ自分の点数すら見ていない。
 机の上に裏返して答案を置いた状態である。
「行くぞ?」
 俺の言葉にグレイとソフィアが頷いた。
「せーの!」
 ばん、と一斉に自分の答案を裏返す。
「あの……もうやめないかしら?」
 ソフィアが気まずそうに呟いた。
 三人が向かい合って、互いに土下座していた。
 世にも珍しい三土下座だった。それも相土下座とでも言うべきか。
 ……経験したことがないタイプの地獄だった。