オーラの輝石
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四人はオーラの輝石があるというドワーフの村へ行く事になった。近いといっても都合十七日ほどの日程だった。道中での敵との遭遇はそれ程でもなく、野ウサギなどともあまり出会わなかった。
ドワーフの村はかなり小さかった。ドワーフ族が大人でも百二十㎝くらいしかないという事もあって、建物一つ一つが小さかったし、その建物の数もとても少なかった。トキの説明によれば、ドワーフ族は土の妖精の一種族で、地下に宮殿のようなものを造る習慣があるらしい。
そう言えば、英語の先生は白雪姫と七人の小人は英語で言うと「スノーホワイト&ザ・セブンドワーフス」だって言っていたような気がする。
そのドワーフの細工技術があまりにも素晴らしいので、歴史上の人間の国は、よく彼らに宮殿の造営や美術品の装飾などを頼んできたそうである。
このドワーフの村も、本来のテリトリーである地下には迷路のような大宮殿が広がっているだろうと言う事だ。
ノスリの友達だったというドワーフは、確かに存在していた。けど、ツグミの言っていた通りドワーフの寿命は五百年くらいで、そのドワーフは百五十年以上前に亡くなっていた。その孫というドワーフが四人に教えてくれたのは、オーラの輝石は地下の神殿に奉納されていてノスリが来たら渡してくれと遺言されているという事だった。
「本当に五百年以上生きてるんだ。ノスリ」
「どーだ」
と、胸を張るノスリを横目で見ながら、彼が寿命を大幅に超えて生き続けている事に悩むツグミだった。
孫のドワーフ、ヨダカに案内されて降りたドワーフの地下世界は広大で、スターンバー王国の王都よりもずっと立派で豪華だった。ツグミの創り出す中級魔法の明かり「燈明」では、奥まで見渡せない。道も狭く入り組んでいてドワーフに道案内してもらわなければ絶対に迷子になるだろう。ちなみに土の妖精ドワーフの目は暗闇でも見えるらしくて、地下世界のあちこちで普通に暮らしているようだった。ヨダカの説明では、地上は鉱物の精製や人間たちとの交渉の為にあるんだということだ。なるほど、それなら地上の村は小さくても問題ない。
かなり長い間歩いた。
セッカが疲れてきて休もうと言おうとした頃、遠くで荘厳な輝きに浮かび上がる大神殿が見えてきた。神殿に近付くと、神殿の中心から光が放たれている事が判った。
光は太陽の光のように熱がある訳でもなく、ツグミが創った魔法の光よりもずっと優しい感じがする。ノスリは、その光源こそが「オーラの輝石」なのだと自慢した。
神殿に入った一行は、その輝石を目の前にして息を呑む。
不思議な石だった。
こんなに遠くまで明るく照らしているのに、その光の中心である石を見つめても全然まぶしくない。石の形さえはっきり判るくらいだ。
ノスリの友達の孫だというヨダカが、ドワーフ語らしい言葉をいくつかつぶやいた。多分、お経みたいな言葉だったのだろう。台座から輝石を取り出すと、そのセッカのゲンコツくらいの輝石をノスリに差し出す。
「これはもともとあなたのもの。遺言もあるから渡すのは構わない。けど、なぜ今さらこれが欲しくなった?」
それにはトキが答える。
王国内の事件の事、闇の魔術師の事、ミサゴの事。そして、それらがブルーに関わっているらしい事を。
それを聞いたドワーフはヒゲだらけの顔をしかめて何か考えていたが、太いまゆ毛の下の穏やかだった瞳を鋭くセッカたちに向けてこう言った。
「ブルーの問題なら、我らドワーフもまた協力しなければいけない。最長老に会ってくれ」
地上に戻った一行は、最長老の家に案内された。家には長老衆と呼ばれる七人のドワーフが集められ、トキが改めてこれまでの経緯を語った。彼らはなにやらドワーフ語で話し合っていた。やがて、トキたちの方に向き直ると、最長老が聞き取りにくい人間語で話し始めた。
「我々はともに行動出来ない。しかし、協力はしなければならない。冒険に必要な道具を用意しよう」
彼らが用意してくれた道具は、ごきげんなものばかりだった。
オーラの輝石を納めるために作られたランタンは光量を調節出来るように作られていたし、セッカのために新しく打ってくれた剣は、今までの短剣よりずっと丈夫で使いやすい細身で諸刃のついた長剣だ。鎧は胸部に金属プレートを補強され、盾もより頑丈に作り直してくれた。それらは、さすがに鉱物のエキスパートと言われるドワーフ族の作る品物らしく、見た目も格好よくてまるで映画の主人公になったような気にさせてくれる。他にも野営の道具など小さなものまでいろいろ用意してくれた。ただ、トキの弓だけは用意してもらえなかった。
「どうして作ってもらわなかったの?」
「ドワーフだって何でも作れる訳じゃないって事だよ。金属や石を使った頑丈な道具を作るのは得意だけど、弓のようにしなやかな道具を作るのは上手じゃないんだ」
セッカの新しい剣を打ってくれた鍛冶屋のドワーフも豪快に笑いながら言う。
「作れない訳じゃないが、トキの弓よりいい弓はちょっと作れない。あの弓は、エルフ族が作った極上の弓だ。くやしいけどな」
三日間滞在したドワーフの村にお礼を言って出発した四人は、そのエルフ族の村へ向かう事になった。
ドワーフ族の最長老の話によると、スターンバー王国の南東、マンテル共和国にまでまたがる大森林にエルフ族の中でも古い種族がいて、そこには今でもオジロの冒険仲間が生きているはずだという。
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四人はオーラの輝石《きせき》があるというドワーフの村へ行く事になった。近いといっても都合十七日ほどの日程だった。道中での敵との遭遇《そうぐう》はそれ程でもなく、野ウサギなどともあまり出会わなかった。
ドワーフの村はかなり小さかった。ドワーフ族が大人でも百二十㎝くらいしかないという事もあって、建物一つ一つが小さかったし、その建物の数もとても少なかった。トキの説明によれば、ドワーフ族は土の妖精の一種族で、地下に宮殿のようなものを造る習慣があるらしい。
そう言えば、英語の先生は白雪姫と七人の小人は英語で言うと「スノーホワイト&ザ・セブンドワーフス」だって言っていたような気がする。
そのドワーフの細工技術があまりにも素晴らしいので、歴史上の人間の国は、よく彼らに宮殿の造営《ぞうえい》や美術品の装飾《そうしょく》などを頼んできたそうである。
このドワーフの村も、本来のテリトリーである地下には迷路のような大宮殿が広がっているだろうと言う事だ。
ノスリの友達だったというドワーフは、確かに存在していた。けど、ツグミの言っていた通りドワーフの寿命は五百年くらいで、そのドワーフは百五十年以上前に亡くなっていた。その孫というドワーフが四人に教えてくれたのは、オーラの輝石は地下の神殿に奉納《ほうのう》されていてノスリが来たら渡してくれと遺言《ゆいごん》されているという事だった。
「本当に五百年以上生きてるんだ。ノスリ」
「どーだ」
と、胸を張るノスリを横目で見ながら、彼が寿命を大幅に超えて生き続けている事に悩むツグミだった。
孫のドワーフ、ヨダカに案内されて降りたドワーフの地下世界は広大で、スターンバー王国の王都よりもずっと立派で豪華だった。ツグミの創り出す中級魔法の明かり「燈明《とうみょう》」では、奥まで見渡せない。道も狭く入り組んでいてドワーフに道案内してもらわなければ絶対に迷子になるだろう。ちなみに土の妖精ドワーフの目は暗闇でも見えるらしくて、地下世界のあちこちで普通に暮らしているようだった。ヨダカの説明では、地上は鉱物の精製や人間たちとの交渉の為にあるんだということだ。なるほど、それなら地上の村は小さくても問題ない。
かなり長い間歩いた。
セッカが疲れてきて休もうと言おうとした頃、遠くで荘厳《そうごん》な輝きに浮かび上がる大神殿が見えてきた。神殿に近付くと、神殿の中心から光が放たれている事が判った。
光は太陽の光のように熱がある訳でもなく、ツグミが創った魔法の光よりもずっと優しい感じがする。ノスリは、その光源こそが「オーラの輝石」なのだと自慢した。
神殿に入った一行は、その輝石を目の前にして息を呑む。
不思議な石だった。
こんなに遠くまで明るく照らしているのに、その光の中心である石を見つめても全然まぶしくない。石の形さえはっきり判るくらいだ。
ノスリの友達の孫だというヨダカが、ドワーフ語らしい言葉をいくつかつぶやいた。多分、お経みたいな言葉だったのだろう。台座から輝石を取り出すと、そのセッカのゲンコツくらいの輝石をノスリに差し出す。
「これはもともとあなたのもの。遺言もあるから渡すのは構わない。けど、なぜ今さらこれが欲しくなった?」
それにはトキが答える。
王国内の事件の事、闇の魔術師の事、ミサゴの事。そして、それらがブルーに関わっているらしい事を。
それを聞いたドワーフはヒゲだらけの顔をしかめて何か考えていたが、太いまゆ毛の下の穏やかだった瞳を鋭くセッカたちに向けてこう言った。
「ブルーの問題なら、我らドワーフもまた協力しなければいけない。最長老に会ってくれ」
地上に戻った一行は、最長老の家に案内された。家には長老衆と呼ばれる七人のドワーフが集められ、トキが改めてこれまでの経緯を語った。彼らはなにやらドワーフ語で話し合っていた。やがて、トキたちの方に向き直ると、最長老が聞き取りにくい人間語で話し始めた。
「我々はともに行動出来ない。しかし、協力はしなければならない。冒険に必要な道具を用意しよう」
彼らが用意してくれた道具は、ごきげんなものばかりだった。
オーラの輝石を納めるために作られたランタンは光量を調節出来るように作られていたし、セッカのために新しく打ってくれた剣は、今までの短剣よりずっと丈夫で使いやすい細身で諸刃《もろは》のついた長剣だ。鎧は胸部に金属プレートを補強され、盾もより頑丈に作り直してくれた。それらは、さすがに鉱物のエキスパートと言われるドワーフ族の作る品物らしく、見た目も格好よくてまるで映画の主人公になったような気にさせてくれる。他にも野営の道具など小さなものまでいろいろ用意してくれた。ただ、トキの弓だけは用意してもらえなかった。
「どうして作ってもらわなかったの?」
「ドワーフだって何でも作れる訳じゃないって事だよ。金属や石を使った頑丈な道具を作るのは得意だけど、弓のようにしなやかな道具を作るのは上手じゃないんだ」
セッカの新しい剣を打ってくれた鍛冶屋《かじや》のドワーフも豪快に笑いながら言う。
「作れない訳じゃないが、トキの弓よりいい弓はちょっと作れない。あの弓は、エルフ族が作った極上の弓だ。くやしいけどな」
三日間滞在したドワーフの村にお礼を言って出発した四人は、そのエルフ族の村へ向かう事になった。
ドワーフ族の最長老の話によると、スターンバー王国の南東、マンテル共和国にまでまたがる大森林にエルフ族の中でも古い種族がいて、そこには今でもオジロの冒険仲間が生きているはずだという。