ベッドが軋むような音を立て、見るとユカが目を覚ましたところだった。今は何時なのだろう。時が止まったかのようにいつも薄暗いこの部屋の中にいると、時間の感覚がよくわからなくなる。
それがわかるのは一日に二回、多くて三回、お母さんがごはんを持ってきてくれるときだけだ。「朝ごはんだよ」なら朝で、「夜ごはんだよ」なら夜。それが、この部屋にある時間の全てだった。
ユカはベッドから降りると、そのままふらふらとあたしたちのほうに歩いてきた。見るからに栄養の足りていない青白い手があたしの横に向かって伸びる。何かを叩きつけるような音がした。身動きのとれないあたしたちにはお互いの様子を確認することはできないけど、たぶんあのタイチとかいう子が殴られたか蹴られたかした音だろう。
この部屋にやってきた当初はユカからずいぶんと可愛がられていたタイチだけど、ここ最近はすっかり彼女のサンドバッグだ。もしかしたらタイチは、自分がユカに飽きられたとか、嫌われたとか思っているのかもしれない。でも、そうじゃない。それは単にユカの気分の問題だ。可愛がりたい気分のときに可愛がり、殴りたい気分のときに殴っているだけ。
ユカの精神状態は常に安定しない。それはきっと、この狭い部屋にずっと閉じこもって生活しているせいだと思う。ユカがこの部屋から外に出ることはほとんどない。あるとすれば、それは――
また、何かを叩きつけるような音が聞こえた。もう何日連続で殴られ続けているだろう。そろそろこの子も限界かもしれない。きっともうすぐこの子も部屋からいなくなる。そして少ししたら、また新しい子がやってくる。これまでに何度も繰り返されてきたように。
ようやく音がやみ、気が済んだのかユカはまたベッドに横になる。すると外から別の音が聞こえてきた。お母さんが階段を踏む足音だ。
足音は部屋の前まで来て、止まった。