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タイチ

ー/ー



 白い布団が微かに揺れ動き、ユカちゃんが目を覚ました。
 ユカちゃんはベッドの上でゆっくりと上半身だけを起こす。まだ寝ぼけているのか、虚ろな目をしていた。
 この部屋に連れてこられてからしばらくが過ぎて、最近、ユカちゃんのことが少しずつわかってきた。
 まず、ユカちゃんは基本的にこの部屋の中だけで生活している。寝る時間も起きる時間もバラバラで、一日中横になったまま起きないこともある。あまり健康的な生活はしていないようだ。
 ユカちゃんの部屋には本棚があって、そこにたくさんの本が並んでいる。実際に読んでいるところはあまり見ないけど、ユカちゃんは本が好きなのかもしれない。たまにユカちゃんが取り出す本の表紙にはどれも、小さな男の子や女の子の絵が描かれている。
 それからもう一つ。この家にはユカちゃんの他にもう一人、誰か別の人が住んでいるようだ。その人は毎日ほぼ決まった時間にユカちゃんの部屋に料理を持ってくる。料理はどれも美味しそうだけど、ユカちゃんはあまり美味しそうにそれらを食べない。全く手を付けないこともある。食の細いユカちゃんは、最初に会ったときより少し痩せたように見える。
 ユカちゃんは小さく息を吐いて、またベッドに横になる。今日もこのまま寝て過ごすのだろうか。目を閉じたユカちゃんの顔は、生気がなく疲れているように見えた。
 最近、ユカちゃんは僕をベッドに連れて行こうとしない。声をかけてくることすらほとんどなくなった。
 ユカちゃんはもう僕に飽きてしまったのかもしれない。
 ユカちゃんに飽きられた僕は、どうなってしまうのだろう。前にここにいたという誰かのように、ここからいなくなるのだろうか。「いなくなる」とは具体的にどうなることをいうのだろう。
 ベッドから静かな寝息が聞こえてくる。その音以外、聞こえるものは何もなかった。


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 白い布団が微かに揺れ動き、ユカちゃんが目を覚ました。
 ユカちゃんはベッドの上でゆっくりと上半身だけを起こす。まだ寝ぼけているのか、虚ろな目をしていた。
 この部屋に連れてこられてからしばらくが過ぎて、最近、ユカちゃんのことが少しずつわかってきた。
 まず、ユカちゃんは基本的にこの部屋の中だけで生活している。寝る時間も起きる時間もバラバラで、一日中横になったまま起きないこともある。あまり健康的な生活はしていないようだ。
 ユカちゃんの部屋には本棚があって、そこにたくさんの本が並んでいる。実際に読んでいるところはあまり見ないけど、ユカちゃんは本が好きなのかもしれない。たまにユカちゃんが取り出す本の表紙にはどれも、小さな男の子や女の子の絵が描かれている。
 それからもう一つ。この家にはユカちゃんの他にもう一人、誰か別の人が住んでいるようだ。その人は毎日ほぼ決まった時間にユカちゃんの部屋に料理を持ってくる。料理はどれも美味しそうだけど、ユカちゃんはあまり美味しそうにそれらを食べない。全く手を付けないこともある。食の細いユカちゃんは、最初に会ったときより少し痩せたように見える。
 ユカちゃんは小さく息を吐いて、またベッドに横になる。今日もこのまま寝て過ごすのだろうか。目を閉じたユカちゃんの顔は、生気がなく疲れているように見えた。
 最近、ユカちゃんは僕をベッドに連れて行こうとしない。声をかけてくることすらほとんどなくなった。
 ユカちゃんはもう僕に飽きてしまったのかもしれない。
 ユカちゃんに飽きられた僕は、どうなってしまうのだろう。前にここにいたという誰かのように、ここからいなくなるのだろうか。「いなくなる」とは具体的にどうなることをいうのだろう。
 ベッドから静かな寝息が聞こえてくる。その音以外、聞こえるものは何もなかった。