「支店長呼んで来て!」
騒ぎに気づいて駆けつけた
井上 勇治の小さくとも鋭い声の助け舟。
年度末も近く、窓口には客が数人待っている。
亜沙美は微かに顎を引いて承諾を示し一歩後ろに下がった。
相手をこれ以上刺激しないようにさりげなく。
「私、おかしなこと言ってる!?」
背中で聞こえる、苛立ちを隠しきれない女性客の言葉は誰も否定できない。
「すみません、お客様。私が伺いますので──」
「また一から説明しなきゃならないの!?」
「……申し訳ございません。誤解なきようにどうかもう一度」
単なる新人アルバイトの自分が居ても何の役にも立たないのは明白なので、心の中で他のスタッフに手を合わせバックヤードに急いだ。
「支店長、あの! あの、えっと──」
専用の部屋のドアをノックして、
応えがあると同時に開く。用件を伝えようと焦るあまり言葉が出てこない。
「どうした? 君、この間入ったアルバイトだよね?」
落ち着いた態度ながらも、普通ではない事態を察してか真剣な顔で問うてくる支店長の
上坂 龍弘。
「はい、佐原です。すみません、あの。──来ていただけますか!?」
とにかく何よりも急がなければ。亜沙美は失礼は承知で彼を急かした。
「……わかった。何かあった? 上手く話そうとしなくていいからちょっとでも情報くれるか?」
「その、
今野さんがお客様を『クレーマー扱い』っていうかそういう……」
小走りで現場に戻りながら上坂に訥々と事情を話す。
今野
由布子は四十代のパートタイマーだ。
仕事ができないわけではないが、思い込みで客に威圧的に対応して何度か騒ぎを起こしたことがあると亜沙美も聞かされていた。
「結局、
今野さんの言い分が間違ってたってことでいいのか?」
「はい。お客様がロビーで本社に電話で問い合わせて確認されたんです。戻ってそれ言われても、今野さんが『ああ、じゃあ仕方ないから受けますね』みたいな感じで。謝りもしないで『あとはこの子に』って私を出して言われたんで、たぶんそれにも怒ってらして」
「……それは怒らせても無理ないな」
「あ、支店長!」
二人は井上の心底ほっとしたような声に迎えられた。
「こちらの方?」
客に会釈してそっと井上に確認する上坂に、彼が答える。
「そうです。事情は?」
「アウトラインは訊いたけど、肝心の詳細はまだ。教えてくれ」
上坂の言葉に、井上がごく簡潔にそれでも漏れなく流れを説明する。