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第1話 試験終わりの居酒屋トーク1

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 新しいシリーズを自分で決めたにもかかわらず、登場人物の名前が覚えられません。他の物語シリーズでは、実在の人物(?)の名前を使っていたので大丈夫だったのですが、今回は初めて全員が架空の人物です。わからん、忘れる。

 それに、話が進むとさらに登場人物が増えて、最終的に数十人になって収集がつかなくなるのが、私の話の特徴です。長いし。やれやれ。

 整理しておきましょう。まず、登場するのは、出身地は異なるが、同じ千葉大学教育学部を卒業し、同じ中高併設の高校に就職した男女6人の新米教師です。全員2001年生まれで、2025年現在24歳。教師歴は2年目になります。

 女性の主人公:(さきやま みさき)。誕生日は2001年8月15日(終戦記念日。私は敗戦記念日だと思っていますけどね)、血液型はAB型。出身地は長崎県で、酔うと長崎弁が出ます。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は生物。勤務先は千葉県立船橋〇〇高等学校。ショートカットにピアスを付け、ギャル風の見た目ですが、礼儀正しく生徒に丁寧に接するギャップが魅力。元ギャルです。

 男性の主人公:(せと だいと)。誕生日は2001年1月20日、血液型はA型。出身地は神奈川県横浜市(「なぜヨコハマだけ都道府県名で言わん!」と怒られます)。酔っても標準語です。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は物理。勤務先は美咲と同じ。「生徒の世話」が趣味と自称する軽い雰囲気で、美咲に惹かれています。

 美咲と大翔はお互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、それを言い出せません。美咲の性格上、すぐ大翔に突っかかります。

 副主人公:(ながお はるか)。誕生日は2001年4月22日、血液型はAB型。出身地は長崎県で、美咲と同じ高校出身(設定矛盾修正)。酔うと長崎弁になります(「酔っても標準語」は誤りと判断)。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は数学(「物理」は誤りと判断)。勤務先は美咲と同じ。普段は柔らかい雰囲気ですが、授業ではテスト対策を緻密に計画する計算高い一面も。純粋さゆえに悪者になれない性格で、美咲を支えます。元生徒会長の「良い子ちゃん」ですが、裏では少し腹黒い一面も。

 副主人公:(かわしま ゆうま)。誕生日は2001年6月30日、血液型はO型。出身地は埼玉県で、酔っても標準語。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は化学(「物理」は誤りと判断)。勤務先は美咲と同じ。数学教師・長尾遥香と職員室で出会い、彼女の緻密さに惹かれます。真っ直ぐで真面目な性格です。

 遥香と悠馬も美咲と大翔と同じく、お互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、言い出せません。

 副主人公:(ふくなが あやか)。誕生日は2001年10月10日、血液型はO型。出身地は福岡県で、美咲と同じ九州出身。酔うと福岡弁になります。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は国語。上記4人が理系なので異色の文系。勤務先は美咲と同じ。子供時代に「綾香」と間違えられ「幽霊っぽい」と言われた経験から内向的ですが、純粋で努力家。生徒に感謝されると感動し、他人の言葉を誤解しがちですが、嫌味を気にしない幸運な性格。不思議ちゃんです。

 副主人公:(まくた ゆうと)。誕生日は2001年11月5日、血液型はB型。出身地は地元千葉県で、酔っても標準語。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は社会歴史。彩花と同じ文系で、勤務先は美咲と同じ。寡黙で感情表現が乏しく、生徒の名前を覚えるのが苦手。歴史部顧問で、船橋の歴史を熱く語ります。野球好きで、高校時代はキャッチャー。国語教師・福永彩花と図書室で資料整理中に仲良くなり、彼女の純粋さに惹かれます。熱血な平成野郎です。

 彩花と悠斗も美咲と大翔と同じく、お互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、言い出せません。

 やった!普段の私と違って、ラブコメらしいまともな人物設定ができました!

 さて、JR船橋駅近くの居酒屋で、三学期の期末試験が終了。崎山美咲、長尾遥香、瀬戸大翔、川島悠馬がつまみを食べつつ酒を飲んで試験終了の打ち上げをしています。長尾遥香が「生徒の恋愛レス、恋愛意識希薄」について愚痴をこぼし、それをきっかけに、現在の高校生の意識と自分たちの高校時代を語り合う4人。途中で、瀬戸大翔と川島悠馬が崎山美咲と長尾遥香の長崎弁に突っ込み、長尾遥香が地方の誇りを主張。さらに、瀬戸大翔が方言の魅力を語り、崎山美咲が瀬戸大翔に迫る場面を展開します。

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 JR船橋駅南口から徒歩5分、雑居ビルの2階にある居酒屋「海鮮丸」は、2025年3月の夜、ほろ酔いの教師たちで賑わっていた。外の看板には「船橋港直送!」と赤い文字で書かれ、店内には潮の香りがほのかに漂う。三学期の期末試験が終わり、千葉県立船橋〇〇高等学校の若手教師——崎山美咲、長尾遥香、瀬戸大翔、川島悠馬——が集まり、ビールと焼き鳥で打ち上げを楽しんでいた。テーブルにはイカの塩辛、枝豆、ポテトフライが並び、壁には船橋の三番瀬の写真が飾られている。窓の外には、東京湾の遠くの灯りがちらちらと見え、時折、電車の音が遠くから響いてくる。

 崎山美咲はビールジョッキを片手に持ったまま、隣に座る瀬戸大翔の肩を軽く叩いた。「なぁ、大翔、今日の生物の試験でさ、ウチのクラスの子が『カブトガニって恋愛せんっちゃろか』って聞いてきてさ。なんじゃそりゃって笑ったけど、意外と深い質問やったかもしれんね」長崎弁が柔らかく響き、彼女のショートカットに揺れるピアスが蛍光灯の光を反射する。試験の採点を終えたばかりで、肩の荷が下りた解放感に浸っていた。彼女は高校時代、ギャル仲間と長崎の港で騒いでいたが、大学で生物学に目覚め、真面目な教師に転身した過去を持つ。そのギャップが今でも彼女の魅力だ。

 大翔が「へえ」と笑いながら応える。「確かに深いね。カブトガニに恋愛観があるなら、俺らの生徒よりマシかもな。今の子ってさ、恋愛よりスマホに夢中じゃん。俺、物理の授業で『電磁波って恋愛に効くんですか』って聞かれて、マジで困ったよ」彼は美咲の目を見つめ、彼女の明るさに心が軽くなるのを感じる。修学旅行で船橋港の夜景を見ながら歩いた時、彼女が「海って生き物みたいっちゃね」と呟いた声が今でも耳に残っている。あの夜、彼女が寒そうに肩をすぼめた時、ジャケットを貸そうかと迷ったが、結局何もできなかった自分を思い出して、少し後悔していた。恋人未満の距離が心地よいが、もっと近づきたい衝動を抑えるのに苦労している。

 長尾遥香が唐揚げを箸でつまみながら割り込んだ。「なぁ、大翔、それなんよ。私、さっきから思っとったんやけどさ、今の子、恋愛レスすぎん?意識薄すぎん?私ら2年勤務して、6歳から8歳下の高校生見てきたけどさ、私らの頃より全然ちゃうやん」彼女はビールを一口飲んで、隣の川島悠馬に視線を移す。「ねえ、悠馬、どう思う?数学の授業でもさ、生徒が『恋愛方程式とかないんですか』って聞いてきて、私、呆れたっちゃ」遥香の栗色の髪が揺れ、彼女の大きな瞳が少し酔いで潤んでいる。彼女は美咲と同じ長崎の高校で生徒会長を務めていたが、裏では友達に「恋愛なんて計算通りにならんっちゃね」と愚痴をこぼす腹黒い一面もあった。今でもその癖が抜けず、授業の計画は完璧に立てるが、自分の気持ちは整理しきれていない。

 悠馬がビールジョッキをテーブルに置いて応えた。「確かにさ。2024年の内閣府の調査でも、高校生の交際経験率って18%くらいまで落ちてるらしいよ。俺らの頃——2016年とか2017年——はさ、部活終わりに告白とか普通にあったじゃん。化学の実験でさ、好きな子とペアになったらドキドキしてたしさ。遥香はどうだった?」彼は遥香の熱っぽい目にドキッとしつつ、彼女の勢いに押されながらも穏やかに返す。文化祭で一緒に模擬店を準備した時、彼女が「唐揚げの揚げ方、計算通りやん!」と笑った顔が忘れられない。あの時、彼女が油で少し手を火傷したのを心配して絆創膏を渡した瞬間、彼女の「ありがとね」と柔らかい笑顔に心を奪われた記憶が蘇る。

 遥香が目を丸くして返す。「え、私?長崎やとさ、テスト終わりに『誰か好き?』って話で盛り上がったっちゃ。友達と教会の裏でこっそり好きな子の名前言い合ったりしてさ。あのドキドキ、今の子にはわからんやろね。悠馬は?埼玉じゃどうやったん?」彼女は悠馬の笑顔に心が温かくなり、もっと彼の話を聞きたいと思う。ビールの酔いが彼女の長崎弁をさらに強くし、高校時代の思い出が次々と溢れてくる。彼女は生徒会長として文化祭の準備に奔走していたが、実は好きな男子に手作りのクッキーを渡そうとして失敗した経験があり、その話を今でも美咲と笑いものにしている。

「埼玉じゃ地味だったよ」と悠馬が笑う。「文化祭で好きな子に手紙渡すとか、そんな感じ。でもさ、確かにドキドキはあった。部活の帰りにさ、友達と『あの子可愛いよな』って話して、ちょっとした恋愛気分味わってたよ。今の子はインスタで『いいね』押すだけで満足してるっぽいよね。大翔はどうだった?」彼は遥香の勢いに癒されつつ、彼女との微妙な距離感を楽しんでいる。高校時代、野球部の練習後に好きな子がグラウンドの横を通るのを待っていたが、結局声をかけられなかった自分を思い出し、少し苦笑いする。

 大翔が頷きながら答えた。「横浜じゃ、デートはみなとみらいで夜景見ながらが定番だったよ。でも告白はあんまり派手じゃなかったかな。友達と『あの子の横顔やばいな』とか言いながら、こっそり見てるだけで満足してた。美咲の長崎はどうだった?」彼は美咲に話を振る。彼女の反応を引き出したくて、つい絡んでしまう癖が顔を出す。高校時代、彼は物理部の実験で失敗して友達に笑われていたが、好きな子が「頑張ってたよ」と励ましてくれたことがあり、その一言が今でも心に残っている。

 美咲が「長崎はねぇ」と笑いながら続ける。「坂道でこっそり『好き』って言う感じやったっちゃ。教会の裏とかでさ、友達と『あの子に告白しようかな』って話して、ドキドキが止まらんかったよ。大翔、横浜ってそんな感じやなかったん?」彼女は大翔の笑顔に目を細め、彼の軽い雰囲気に心が揺れる。試験の疲れが抜けた今、彼との距離を少し縮めたい気持ちが湧いてくる。彼女は高校時代、ギャル仲間と港で騒いでいたが、ある日、生物の授業でカブトガニの話を聞いて感動し、教師を目指すきっかけになった。その話を大翔にいつか聞いてほしいと思っている。

「いや、横浜はもっとカジュアルだったかな」と大翔が返す。「ポケモンGOやりながら好きな子と歩いたりさ。2017年くらいの話だけど、夜のみなとみらいでさ、友達と『あの子と一緒にポケモン捕まえたいな』とか冗談言い合ってたよ——」


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 新しいシリーズを自分で決めたにもかかわらず、登場人物の名前が覚えられません。他の物語シリーズでは、実在の人物(?)の名前を使っていたので大丈夫だったのですが、今回は初めて全員が架空の人物です。わからん、忘れる。
 それに、話が進むとさらに登場人物が増えて、最終的に数十人になって収集がつかなくなるのが、私の話の特徴です。長いし。やれやれ。
 整理しておきましょう。まず、登場するのは、出身地は異なるが、同じ千葉大学教育学部を卒業し、同じ中高併設の高校に就職した男女6人の新米教師です。全員2001年生まれで、2025年現在24歳。教師歴は2年目になります。
 女性の主人公:《《崎山美咲》》(さきやま みさき)。誕生日は2001年8月15日(終戦記念日。私は敗戦記念日だと思っていますけどね)、血液型はAB型。出身地は長崎県で、酔うと長崎弁が出ます。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は生物。勤務先は千葉県立船橋〇〇高等学校。ショートカットにピアスを付け、ギャル風の見た目ですが、礼儀正しく生徒に丁寧に接するギャップが魅力。元ギャルです。
 男性の主人公:《《 瀬戸大翔》》(せと だいと)。誕生日は2001年1月20日、血液型はA型。出身地は神奈川県横浜市(「なぜヨコハマだけ都道府県名で言わん!」と怒られます)。酔っても標準語です。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は物理。勤務先は美咲と同じ。「生徒の世話」が趣味と自称する軽い雰囲気で、美咲に惹かれています。
 美咲と大翔はお互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、それを言い出せません。美咲の性格上、すぐ大翔に突っかかります。
 副主人公:《《長尾遥香》》(ながお はるか)。誕生日は2001年4月22日、血液型はAB型。出身地は長崎県で、美咲と同じ高校出身(設定矛盾修正)。酔うと長崎弁になります(「酔っても標準語」は誤りと判断)。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は数学(「物理」は誤りと判断)。勤務先は美咲と同じ。普段は柔らかい雰囲気ですが、授業ではテスト対策を緻密に計画する計算高い一面も。純粋さゆえに悪者になれない性格で、美咲を支えます。元生徒会長の「良い子ちゃん」ですが、裏では少し腹黒い一面も。
 副主人公:《《川島悠馬》》(かわしま ゆうま)。誕生日は2001年6月30日、血液型はO型。出身地は埼玉県で、酔っても標準語。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は化学(「物理」は誤りと判断)。勤務先は美咲と同じ。数学教師・長尾遥香と職員室で出会い、彼女の緻密さに惹かれます。真っ直ぐで真面目な性格です。
 遥香と悠馬も美咲と大翔と同じく、お互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、言い出せません。
 副主人公:《《福永彩花》》(ふくなが あやか)。誕生日は2001年10月10日、血液型はO型。出身地は福岡県で、美咲と同じ九州出身。酔うと福岡弁になります。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は国語。上記4人が理系なので異色の文系。勤務先は美咲と同じ。子供時代に「綾香」と間違えられ「幽霊っぽい」と言われた経験から内向的ですが、純粋で努力家。生徒に感謝されると感動し、他人の言葉を誤解しがちですが、嫌味を気にしない幸運な性格。不思議ちゃんです。
 副主人公:《《幕田悠斗》》(まくた ゆうと)。誕生日は2001年11月5日、血液型はB型。出身地は地元千葉県で、酔っても標準語。千葉大学教育学部卒で、高校の指導科目は社会歴史。彩花と同じ文系で、勤務先は美咲と同じ。寡黙で感情表現が乏しく、生徒の名前を覚えるのが苦手。歴史部顧問で、船橋の歴史を熱く語ります。野球好きで、高校時代はキャッチャー。国語教師・福永彩花と図書室で資料整理中に仲良くなり、彼女の純粋さに惹かれます。熱血な平成野郎です。
 彩花と悠斗も美咲と大翔と同じく、お互いに好意を持っていて付き合いたいと思いつつ、言い出せません。
 やった!普段の私と違って、ラブコメらしいまともな人物設定ができました!
 さて、JR船橋駅近くの居酒屋で、三学期の期末試験が終了。崎山美咲、長尾遥香、瀬戸大翔、川島悠馬がつまみを食べつつ酒を飲んで試験終了の打ち上げをしています。長尾遥香が「生徒の恋愛レス、恋愛意識希薄」について愚痴をこぼし、それをきっかけに、現在の高校生の意識と自分たちの高校時代を語り合う4人。途中で、瀬戸大翔と川島悠馬が崎山美咲と長尾遥香の長崎弁に突っ込み、長尾遥香が地方の誇りを主張。さらに、瀬戸大翔が方言の魅力を語り、崎山美咲が瀬戸大翔に迫る場面を展開します。
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 JR船橋駅南口から徒歩5分、雑居ビルの2階にある居酒屋「海鮮丸」は、2025年3月の夜、ほろ酔いの教師たちで賑わっていた。外の看板には「船橋港直送!」と赤い文字で書かれ、店内には潮の香りがほのかに漂う。三学期の期末試験が終わり、千葉県立船橋〇〇高等学校の若手教師——崎山美咲、長尾遥香、瀬戸大翔、川島悠馬——が集まり、ビールと焼き鳥で打ち上げを楽しんでいた。テーブルにはイカの塩辛、枝豆、ポテトフライが並び、壁には船橋の三番瀬の写真が飾られている。窓の外には、東京湾の遠くの灯りがちらちらと見え、時折、電車の音が遠くから響いてくる。
 崎山美咲はビールジョッキを片手に持ったまま、隣に座る瀬戸大翔の肩を軽く叩いた。「なぁ、大翔、今日の生物の試験でさ、ウチのクラスの子が『カブトガニって恋愛せんっちゃろか』って聞いてきてさ。なんじゃそりゃって笑ったけど、意外と深い質問やったかもしれんね」長崎弁が柔らかく響き、彼女のショートカットに揺れるピアスが蛍光灯の光を反射する。試験の採点を終えたばかりで、肩の荷が下りた解放感に浸っていた。彼女は高校時代、ギャル仲間と長崎の港で騒いでいたが、大学で生物学に目覚め、真面目な教師に転身した過去を持つ。そのギャップが今でも彼女の魅力だ。
 大翔が「へえ」と笑いながら応える。「確かに深いね。カブトガニに恋愛観があるなら、俺らの生徒よりマシかもな。今の子ってさ、恋愛よりスマホに夢中じゃん。俺、物理の授業で『電磁波って恋愛に効くんですか』って聞かれて、マジで困ったよ」彼は美咲の目を見つめ、彼女の明るさに心が軽くなるのを感じる。修学旅行で船橋港の夜景を見ながら歩いた時、彼女が「海って生き物みたいっちゃね」と呟いた声が今でも耳に残っている。あの夜、彼女が寒そうに肩をすぼめた時、ジャケットを貸そうかと迷ったが、結局何もできなかった自分を思い出して、少し後悔していた。恋人未満の距離が心地よいが、もっと近づきたい衝動を抑えるのに苦労している。
 長尾遥香が唐揚げを箸でつまみながら割り込んだ。「なぁ、大翔、それなんよ。私、さっきから思っとったんやけどさ、今の子、恋愛レスすぎん?意識薄すぎん?私ら2年勤務して、6歳から8歳下の高校生見てきたけどさ、私らの頃より全然ちゃうやん」彼女はビールを一口飲んで、隣の川島悠馬に視線を移す。「ねえ、悠馬、どう思う?数学の授業でもさ、生徒が『恋愛方程式とかないんですか』って聞いてきて、私、呆れたっちゃ」遥香の栗色の髪が揺れ、彼女の大きな瞳が少し酔いで潤んでいる。彼女は美咲と同じ長崎の高校で生徒会長を務めていたが、裏では友達に「恋愛なんて計算通りにならんっちゃね」と愚痴をこぼす腹黒い一面もあった。今でもその癖が抜けず、授業の計画は完璧に立てるが、自分の気持ちは整理しきれていない。
 悠馬がビールジョッキをテーブルに置いて応えた。「確かにさ。2024年の内閣府の調査でも、高校生の交際経験率って18%くらいまで落ちてるらしいよ。俺らの頃——2016年とか2017年——はさ、部活終わりに告白とか普通にあったじゃん。化学の実験でさ、好きな子とペアになったらドキドキしてたしさ。遥香はどうだった?」彼は遥香の熱っぽい目にドキッとしつつ、彼女の勢いに押されながらも穏やかに返す。文化祭で一緒に模擬店を準備した時、彼女が「唐揚げの揚げ方、計算通りやん!」と笑った顔が忘れられない。あの時、彼女が油で少し手を火傷したのを心配して絆創膏を渡した瞬間、彼女の「ありがとね」と柔らかい笑顔に心を奪われた記憶が蘇る。
 遥香が目を丸くして返す。「え、私?長崎やとさ、テスト終わりに『誰か好き?』って話で盛り上がったっちゃ。友達と教会の裏でこっそり好きな子の名前言い合ったりしてさ。あのドキドキ、今の子にはわからんやろね。悠馬は?埼玉じゃどうやったん?」彼女は悠馬の笑顔に心が温かくなり、もっと彼の話を聞きたいと思う。ビールの酔いが彼女の長崎弁をさらに強くし、高校時代の思い出が次々と溢れてくる。彼女は生徒会長として文化祭の準備に奔走していたが、実は好きな男子に手作りのクッキーを渡そうとして失敗した経験があり、その話を今でも美咲と笑いものにしている。
「埼玉じゃ地味だったよ」と悠馬が笑う。「文化祭で好きな子に手紙渡すとか、そんな感じ。でもさ、確かにドキドキはあった。部活の帰りにさ、友達と『あの子可愛いよな』って話して、ちょっとした恋愛気分味わってたよ。今の子はインスタで『いいね』押すだけで満足してるっぽいよね。大翔はどうだった?」彼は遥香の勢いに癒されつつ、彼女との微妙な距離感を楽しんでいる。高校時代、野球部の練習後に好きな子がグラウンドの横を通るのを待っていたが、結局声をかけられなかった自分を思い出し、少し苦笑いする。
 大翔が頷きながら答えた。「横浜じゃ、デートはみなとみらいで夜景見ながらが定番だったよ。でも告白はあんまり派手じゃなかったかな。友達と『あの子の横顔やばいな』とか言いながら、こっそり見てるだけで満足してた。美咲の長崎はどうだった?」彼は美咲に話を振る。彼女の反応を引き出したくて、つい絡んでしまう癖が顔を出す。高校時代、彼は物理部の実験で失敗して友達に笑われていたが、好きな子が「頑張ってたよ」と励ましてくれたことがあり、その一言が今でも心に残っている。
 美咲が「長崎はねぇ」と笑いながら続ける。「坂道でこっそり『好き』って言う感じやったっちゃ。教会の裏とかでさ、友達と『あの子に告白しようかな』って話して、ドキドキが止まらんかったよ。大翔、横浜ってそんな感じやなかったん?」彼女は大翔の笑顔に目を細め、彼の軽い雰囲気に心が揺れる。試験の疲れが抜けた今、彼との距離を少し縮めたい気持ちが湧いてくる。彼女は高校時代、ギャル仲間と港で騒いでいたが、ある日、生物の授業でカブトガニの話を聞いて感動し、教師を目指すきっかけになった。その話を大翔にいつか聞いてほしいと思っている。
「いや、横浜はもっとカジュアルだったかな」と大翔が返す。「ポケモンGOやりながら好きな子と歩いたりさ。2017年くらいの話だけど、夜のみなとみらいでさ、友達と『あの子と一緒にポケモン捕まえたいな』とか冗談言い合ってたよ——」