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【2】

ー/ー



    ◇  ◇  ◇
 高校の卒業式も終わり、みんな大学進学で散り散りになってしまう。

 そろそろ桜も満開が近かった。
 ほとんどの国立大の発表の後、仲の良い友達で集まって「こっちに残った子たちだけでもお花見しようよ」って話してたのよ。
 見頃はまだもう少し先だけど、地元の大学構内の桜の大木が何本も植えられた、学校案内のパンフにも必ず載せられる自慢のスポットで。
 卒業式と入学式の間なら、部外者の高校生が立ち入っても邪魔にはならないから。
 解散したあと、約束してた「彼」とよく行く公園で会ったんだ。
 
「俺たち、これ以上一緒にいる意味あんの?」
 冷たい口調。冷たい態度。
 もうお前に興味なんか欠片もないと、全身で表すような。
 原因の一つはわかってたわ。
 受験勉強で、私は彼のことは二の次どころかそれ以下だった。

 年が明けて三年生が自由登校になってからは《会いたい。》って連絡が来ても《今は無理。》って断ることが多かった。
 今が一番大事でしょ? あんたもそうじゃないの?
 大学入ったらいくらでも会えるし、一緒にいられるじゃない。二人とも、自宅通学できる大学希望なんだから。

 だけど彼は違ったんだよね、きっと。「恋愛は今は不要」だった私と、「恋愛が受験の励みになった」彼……?

「……そっか、わかった」
 あっさりした私の返事で、二人の関係は簡単に終わった。
 強がりには違いないけど、彼に縋る気なんかなかったのよ。そこまで捨て身にはなれなかった。

 ──つまり、こっちもその程度の気持ちだった、のかな。

 突然の風に顔の前にかざした右手に、小さな花びら。
 私を気にする素振りさえなく立ち去る彼を、指と透き通るようなピンク越しに見送った。
 上手く行っていた頃なら心配してくれた筈だよね。「大丈夫か? 目に入ってないよな?」なんて。

 もう私は、彼にとってそんな気を遣う相手じゃなくなったってことか。
 落とした視線の先の地面にも、無数の花びら。時間が経ったものは、もう色も形も『桜』を留めていない。
 今はまだ咲き誇ってるけど、桜の季節はあっという間に終わりになってしまう。この恋と同じく。

 十八のあの日、私は一人残された公園でただそれだけを嚙み締めていた。
 桜には期間限定だからこその儚い美しさもある、とは思う。だけど人の想いは違うよね。

 私はなんで、彼と付き合ってたんだろう。互いにどこが気に入ってたんだろう。もう思い出せない。
 だけど確かに好きだった。
 彼だけ見つめて笑い合った時間は嘘じゃなかったわ。それだけは、事実。

 今なら素直に言えるのに。
 本当は続けたかった。だけど続かなかった、続ける努力さえしなかった、幼かった私の恋。
 あのとき泣いて縋っていたら何かが変わったのかな。

 ……私にそんな真似できるわけないのに、詮無いことがふと浮かんで消える。








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    ◇  ◇  ◇
 高校の卒業式も終わり、みんな大学進学で散り散りになってしまう。
 そろそろ桜も満開が近かった。
 ほとんどの国立大の発表の後、仲の良い友達で集まって「こっちに残った子たちだけでもお花見しようよ」って話してたのよ。
 見頃はまだもう少し先だけど、地元の大学構内の桜の大木が何本も植えられた、学校案内のパンフにも必ず載せられる自慢のスポットで。
 卒業式と入学式の間なら、部外者の高校生が立ち入っても邪魔にはならないから。
 解散したあと、約束してた「彼」とよく行く公園で会ったんだ。
「俺たち、これ以上一緒にいる意味あんの?」
 冷たい口調。冷たい態度。
 もうお前に興味なんか欠片もないと、全身で表すような。
 原因の一つはわかってたわ。
 受験勉強で、私は彼のことは二の次どころかそれ以下だった。
 年が明けて三年生が自由登校になってからは《会いたい。》って連絡が来ても《今は無理。》って断ることが多かった。
 今が一番大事でしょ? あんたもそうじゃないの?
 大学入ったらいくらでも会えるし、一緒にいられるじゃない。二人とも、自宅通学できる大学希望なんだから。
 だけど彼は違ったんだよね、きっと。「恋愛は今は不要」だった私と、「恋愛が受験の励みになった」彼……?
「……そっか、わかった」
 あっさりした私の返事で、二人の関係は簡単に終わった。
 強がりには違いないけど、彼に縋る気なんかなかったのよ。そこまで捨て身にはなれなかった。
 ──つまり、こっちもその程度の気持ちだった、のかな。
 突然の風に顔の前にかざした右手に、小さな花びら。
 私を気にする素振りさえなく立ち去る彼を、指と透き通るようなピンク越しに見送った。
 上手く行っていた頃なら心配してくれた筈だよね。「大丈夫か? 目に入ってないよな?」なんて。
 もう私は、彼にとってそんな気を遣う相手じゃなくなったってことか。
 落とした視線の先の地面にも、無数の花びら。時間が経ったものは、もう色も形も『桜』を留めていない。
 今はまだ咲き誇ってるけど、桜の季節はあっという間に終わりになってしまう。この恋と同じく。
 十八のあの日、私は一人残された公園でただそれだけを嚙み締めていた。
 桜には期間限定だからこその儚い美しさもある、とは思う。だけど人の想いは違うよね。
 私はなんで、彼と付き合ってたんだろう。互いにどこが気に入ってたんだろう。もう思い出せない。
 だけど確かに好きだった。
 彼だけ見つめて笑い合った時間は嘘じゃなかったわ。それだけは、事実。
 今なら素直に言えるのに。
 本当は続けたかった。だけど続かなかった、続ける努力さえしなかった、幼かった私の恋。
 あのとき泣いて縋っていたら何かが変わったのかな。
 ……私にそんな真似できるわけないのに、詮無いことがふと浮かんで消える。