それが現在。その敵対心が純粋な殺意に。待田よりも圧倒的に接した回数の少ないはずの礼安の肩を持つ。どちらが勝つのか、そんなスリルなどあったものではない。
一万五千トンの圧をかけたその場には、盛大な土煙が立つのみ。あと少しで全てが晴れたら、『教会』陣営は勝利、そして英雄たちを皆殺し。完璧なシナリオであった。
『――長かった、実に長かった。俺は、アンタを超えるべく――――』
「へえ、私を超える、ねえ。ちょーっと詰め、甘いんじゃあないかな」
衝撃の爆心地。傷一つなくその中心に立つのは、礼安らしき人物。待田は、恐怖した。
『な、何であの一撃を受けてなお無傷なんだよ!?』
「簡単な話だよ、待田君」
またもや超高電流と絶対零度の冷気を合わせた超電導の力で浮かび上がり、待田を鼻で笑う女。服のほつれや、柔肌に一切の傷が無い彼女が、待田の前方に立つ。
「そのゲームの祖たるゲームマスターが、たかだかたった一人のゲームプレイヤーに劣るはずが無いだろう? ゲームバランスの設計はゲームマスターが行っているんだ、どれほど度を越えた力だろうと……全ては想定内なんだよ、分かるかい?」
女は、待田の複雑な印を見よう見まねかつ、待田よりも圧倒的な速度で組み、魔力を待田の頭上へ集中させる。待田の練った魔力より、さらに濃密かつ凶悪。
「待田君は求めていたよね、あの言葉。――――『ありがとう』、そしてもう……『君は用済み』だよ」
『ッ!! き、貴様ァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
待田が恨み節を述べる前に、女は無情にも制裁を下す。
「――『圧倒的な圧』」
振り下ろされる鉄槌……否、圧の暴力は、待田の出力を優に超える威力であった。ダマスカス鋼を超える硬度を誇る肌を持ち合わせていようと、容赦なく圧縮し砕ききる、情け容赦の無い一撃。
たった一撃。その威力は一撃辺り三十万トン。世界最大の巨大客船がおよそ二十二万トン。その船内にあらゆるアクティビティが存在するその船が一個と少し。それが、たった一瞬で児戯の如くぶつけられる。しかも、これが待田の小細工を使用せず、ただ純粋な圧だけで生成。魔力の節約など一切考えず、純粋な暴力。ただそれだけであった。
「――ありゃ、少し設定間違えたかな? まさかこれくらいで死んでくれないよね? わざわざ私に喧嘩を売るくらいなんだ、まさか……三十万トンの圧『ごとき』で死ぬわけ……無いよね??」
彼女に悪魔が宿ったかのような、醜悪な高笑い。礼安の肉体を借り、完全なる『圧』勝。礼安がされた負け方を、そっくりそのまま竹箆返し。腹が立つほどに美しい勝利であったが、そこに爽快感などありはしない。
これにより、『教会』京都支部元支部長兼茨城支部副支部長、待田招来と、英雄学園英雄科一年一組、瀧本礼安――の姿をした何者か。その二人の、二十三区全体を巻き込んだ戦争は、礼安らしき人物の勝利と相成った。