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#1

ー/ー



『ごめんなひもじい思いさせて、家も買ってやれなかった……』

 これが父の最期の言葉でした。

 ***

 オルガンの美しい音色が伝う教会の祭壇、そこに一人の男性の遺体が入った棺がある。
 その男性は美しく死化粧を施されているが対照的に席に座る喪服を着た者たちは悲しみに暮れ俯いている。
 その中で彼の息子だという青年が壇に上がった、そして父にまつわるスピーチを行った。

「五年前のダスト・ショック、異世界に繋がるゲートが開きやって来た"ビヨンド"がこの世界で居場所を求めて起こした歴史的事件……」

 まずはこの世界の歴史からである。
 父が傷付いたきっかけを改めて語っていた。
 
「その影響で体が弱った父は満足に働けず母と俺に迷惑をかけてしまっていると嘆いてました。ただでさえ住む場所も奪われて難民として苦しんでいるのにと」

 派手な色の逆立った髪をしており喪服が絶妙に似合っていない。
 そして席から啜り泣く声が聞こえる中、遺体の男の妻であり青年の母である女性は死んだような目をしていた。

「そう、俺たち家族はサテライトシティから追われた"汚染難民"です。ビヨンドの襲撃により住む場所を奪われたにも関わらず隣のアストラルシティ政府は俺たちを受け入れてくれなかった、なけなしの仮設住宅じゃマトモに暮らせません」

 参列に来ている子綺麗なスーツを着たアストラルシティの者を見て訴えかけるように言う。
 尚もスピーチを続ける青年。

「父は不器用でしたが他人を想い一生懸命やりました、それなのに……難民だからマトモな支援も受けられなかった」

 自分の立場から来る込み上げる想いを吐露しているのだ。

「……すみません、少し熱くなってしまいました。まぁ何が言いたいのかというと」

 一度咳払いをしてから青年は結論を述べた。

「俺が父さんの分も働いて家を買います、役に立って市民権を得るんです。そして何とか母さんには自宅で暮らしてもらいたいんです」

 こうしてスピーチは終了する。
 その場にいた者たちは複雑な心境を抱いていた。





 葬儀の最後、家族である青年と母が棺の前で参列してくれた人々に感謝の意を述べていく。
 父の生前の友人や仕事仲間たちが一人ずつ並び遺体に別れを告げていくのだ。

「マイク、残念だったな……」

「ジョンおじさん……」

 父の仕事仲間であったジョンという男性から"マイク"と呼ばれた青年は彼と握手する。
 そしてそのジョンは父の遺体を見て嘆いた。

「こんなに痩せ細っちまって、チクショウ……」

 彼も同様に汚染難民という存在た、使い古した喪服が貧困を表していた。

「生前はマトモな支援すらしてくれない癖に死んだ途端にいっちょまえに葬儀費だけ出しやがって、誠意見せてるみたいにしてるけどよぉ……っ」

 政府への愚痴が止まらなくなってしまうジョン。
 その姿をマイクは同じ事を思いながら見つめていた。

 ***

 そして数名が父に別れを告げる中で次にやって来た人々を見てマイクは表情が強張る。
 その者たち、二人組は他の者より小綺麗にしており喪服も新品同然のものだった。

「やぁ、久しぶりだなマイク……」

 一人はガタイの良い初老の男。
 彼も父の友人ではある、マイクと握手を交わした。

「リチャードさん、お久しぶりです」

 そのままリチャードと呼ばれた男の隣にいたマイクと年の近そうな青年も握手を求めマイクもそれに応じた。

「アレックスも久しぶり」

 少し年上らしいその青年、アレックスもマイクの父の死を悼んでいるようだ。

「あぁ、気の毒に……」

 しかしそんな小綺麗な彼らを見た他の参列者たちはヒソヒソと小声で話していた。

「何でピュリファインがここに……? アストラル政府の犬がよ」

「ダスト・ショック前の友人だったらしいぜ……」

「マジかよ、お前らのせいでもあるだろうに……」

 そのような声が聞こえて来たのでリチャードとアレックスはここが自分たちの居場所ではないと悟っていく。

「んじゃ悪いな、俺たち帰るとするよ」

 明らかに貧困層ではない彼らは周囲の視線を気にしてその場から去る事を選んだ。
 そして最後にアレックスがマイクに向かって呟いた。

「安心してくれ、ダスト・ショックを引き起こしたカオス・レクスは必ず俺が捕える。仇は取るから」

 決意を固めたように告げるアレックスだが対するマイクはまだ気持ちの整理が出来ていなかった。
 そのまま去っていくアレックスとリチャードの背中をを見つめながらマイクは呟いた。

「……そーゆー事じゃねぇよ」







『Purifine/ピュリファイン』
 第1話 親と息子







 リチャードとアレックスの親子はガスマスクを身に付け多くの部下を従えていた。
 こちらから仕掛けるまで"敵"に見つからぬように足音を立てずにとある廃墟の中を進んで行く。

「全然気配がない、本当のこの先にいるの父さん?」

「アレックス、現場では隊長と呼べ」

「すみません……」

「しかしこれは勘付かれてるかもな……」

 親子らしいやり取りをした後にリチャードが呟く。
 その瞬間だった。

「っ……⁈」

 突如として廃墟の床が崩れたのだ。
 アレックスとリチャード、そしてその部下たちは下の階に落下してしまう。

「おい大丈夫か⁈」

 部下の一人の足に瓦礫の破片が刺さってしまっているのを見つけたアレックスは慌てて彼に駆け寄る。

「痛いっ、ぐっ……」

 ドクドクと血が流れて行く部下を見て慌てていると父であり隊長のリチャードがアレックスを呼ぶ。

「彼は救護班に任せろ、お前はお前のやる事があるだろ……!」

 アレックスの方を振り向かずある方を見たまま呼んだ。
 その視線の先にいる者をアレックスも認知する。

「まさかいきなり……⁈」

 そこに立っていたのは長年追っている今最も危険な存在、カオス・レクスだった。
 しかしいつもは部下を従える大将という立場だと言うのに何故いきなり現れたのだろう。

「大将の出迎えたぁ熱烈な歓迎してくれるじゃねぇか、どういう風の吹き回しだ?」

 威圧感に少し恐れを抱いてしまうアレックスとは対照的に隊長のリチャードは逆に煽ってみせる。
 すると長年追われている敵の主犯格にしては若く見える逆立った赤毛を靡かせたカオス・レクスは細い目を更に細めて煽り返した。

「アンタの部下を重んじる精神に感動したんだよなぁ」

「けっ、冗談抜かせ!」

 そしてリチャードは戦闘態勢に入る。
 アレックスは忘れない内に一度無線で他の仲間にも報告を行った。

『C地点、リチャード部隊。カオス・レクスと遭遇、敵は単体と思われますっ』

 そして負傷した部下の事も報告した。

『あと一名負傷、救護班お願いしますっ』

 目が合った部下に決意を固めた瞳を見せて頷きながら彼を抱えて一度安全な所へ移す。
 その間にリチャードどレクスは戦闘を開始していた。

「ふんっ」

 リチャードは胸に装備した特殊な蒼いエネルギーを形成する近未来的な装置に触れる。
 その瞬間、装置に繋がれた全身にその蒼いエネルギーが伝わった。

「おぉぉっ!」

 そして腿に装着した剣の柄のようなものを胸のエネルギーに押し当てる。
 すると柄はそのエネルギーを纏い武器を形成していく。
 そのまま巨体なリチャードによく似合った蒼いエネルギーの大剣が胸から引き抜かれた。

「相変わらずその大剣か」

 レクスも呼応するように自身の体から赤黒いエネルギーを放つ。
 その赤黒いエネルギーは全身から右腕へと伝わり鋭利な刃へと変形させた。

「所詮は俺たちビヨンドの真似事、紛い物の力だ」

 そして一気に突っ込んで行く。

「ホンモノには勝てないと良い加減理解しなっ!」

 刃に変形した右腕を思い切り振り下ろしリチャードに斬りかかる。
 リチャードも大剣で防御していく。
 しかしレクスの猛攻は凄まじくなかなか反撃が出来ない。

「相変わらず見た目からは想像できないバカ力だな!」

「アンタも見た目から想像できないほど非力だよ!」

 その後、何とか大剣を振りレクスを引き剥がす事に成功するリチャードだが単独での戦闘はキツいだろう。
 そこへ息子であるアレックスが参戦する。

「アレックス、加勢します」

 部下は救護班に任せ自分の仕事を行うのだ。
 彼もリチャードと同じように胸に装備した蒼いエネルギーを生み出す装置に触れ柄を押し当てる。

「はぁぁっ!」

 全身に巡るエネルギーから彼は細い刀剣を作り出した。
 まるで日本の侍のように構えてみせる。

「浄化警察ピュリファイン、リチャード部隊所属アレックス・ガルシア行きます!」

 そして苦戦する父親の手助けに入るアレックス。
 ここから彼らは凄まじい死闘を繰り広げる事となる。





 翌日、父の葬儀を終えたマイクは現在の住まいである仮説住宅で食事や生活用品などの配給があるため列に並んでいた。
 自分の番が来たため受け取るとその少なさに驚く。

「え、これだけ……?」

「ごめんなさいね、政府も資金不足で……」

「そうっすか……」

 うだつの上がらぬまま自分と母の暮らす所へ戻ろうとすると住人たちが一つのラジオに群がっているのを見つける。
 何やら騒ついているため楽しい話題ではないだろう。

「何のニュースっすか?」

 近付いてみると音声が少し聞こえて来てニュース番組だという事が分かる。

「聞いてろって」

 父の葬儀にも来ていたジョンおじさんがマイクをラジオ機器に近づけニュース内容を聞かせた。
 その声を聞いたマイクは複雑な心境を抱く事となる。

『繰り返します。浄化警察ピュリファインがダスト・ショックを起こしたビヨンドのテロリスト、カオス・レクスの逮捕に成功しました』

 自分たちの住む場所を奪い父の死ぬ原因を作った人物、そして今の世界を創り出したとも言える存在。
 カオス・レクスが遂に逮捕されたのだ。

「っ……」

 マイクは言葉にならぬ複雑な気持ちを抱きながら後退りしてしまう。
 そして後ろを振り返り空を見上げた。

「別に逮捕した所で"あの壁"が消える訳じゃねーのによぉ……」

 隣に立つジョンおじさんも同じ方を見上げながら"あの壁"という発言をする。
 尚もラジオのニュースは音声を放っている。

『約半世紀前、異世界から来たと言うビヨンド。姿こそ我々人間と同じですがこの世界の環境は合わないと言い特殊な力、エレメントを駆使し環境汚染を始めました』

 改めてこの世界の現状を若者向けに伝えているのだ。
 忘れてはいけない歴史だからである。

『そして五年前、事件は起こります。環境汚染を行っていた主犯格であるカオス・レクスがこのサテライトシティに大量の汚染物質を投下し浄化は困難となりったのです。後に"ダスト・ショック"と呼ばれる事件です』

 それにより住む場所を奪われた汚染難民がマイク達なのである。

『その結果、見つけ次第処分されるだけであったビヨンドは生きる権利を得ました。ダスト・ショックの中心部、特に汚染濃度が高いエリアを高い壁で覆い隔離する事によって』
 
 マイク達の視線の先にはニュース言葉の通り、まるで何かを隔離しているかのような巨大な壁な聳えていた。
 禍々しくある一帯を囲う壁の存在によりこの世界は変わってしまったのである。





TO BE CONTINUED……


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 これが父の最期の言葉でした。
 ***
 オルガンの美しい音色が伝う教会の祭壇、そこに一人の男性の遺体が入った棺がある。
 その男性は美しく死化粧を施されているが対照的に席に座る喪服を着た者たちは悲しみに暮れ俯いている。
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 父が傷付いたきっかけを改めて語っていた。
「その影響で体が弱った父は満足に働けず母と俺に迷惑をかけてしまっていると嘆いてました。ただでさえ住む場所も奪われて難民として苦しんでいるのにと」
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 そして席から啜り泣く声が聞こえる中、遺体の男の妻であり青年の母である女性は死んだような目をしていた。
「そう、俺たち家族はサテライトシティから追われた"汚染難民"です。ビヨンドの襲撃により住む場所を奪われたにも関わらず隣のアストラルシティ政府は俺たちを受け入れてくれなかった、なけなしの仮設住宅じゃマトモに暮らせません」
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 その場にいた者たちは複雑な心境を抱いていた。
 葬儀の最後、家族である青年と母が棺の前で参列してくれた人々に感謝の意を述べていく。
 父の生前の友人や仕事仲間たちが一人ずつ並び遺体に別れを告げていくのだ。
「マイク、残念だったな……」
「ジョンおじさん……」
 父の仕事仲間であったジョンという男性から"マイク"と呼ばれた青年は彼と握手する。
 そしてそのジョンは父の遺体を見て嘆いた。
「こんなに痩せ細っちまって、チクショウ……」
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 その者たち、二人組は他の者より小綺麗にしており喪服も新品同然のものだった。
「やぁ、久しぶりだなマイク……」
 一人はガタイの良い初老の男。
 彼も父の友人ではある、マイクと握手を交わした。
「リチャードさん、お久しぶりです」
 そのままリチャードと呼ばれた男の隣にいたマイクと年の近そうな青年も握手を求めマイクもそれに応じた。
「アレックスも久しぶり」
 少し年上らしいその青年、アレックスもマイクの父の死を悼んでいるようだ。
「あぁ、気の毒に……」
 しかしそんな小綺麗な彼らを見た他の参列者たちはヒソヒソと小声で話していた。
「何でピュリファインがここに……? アストラル政府の犬がよ」
「ダスト・ショック前の友人だったらしいぜ……」
「マジかよ、お前らのせいでもあるだろうに……」
 そのような声が聞こえて来たのでリチャードとアレックスはここが自分たちの居場所ではないと悟っていく。
「んじゃ悪いな、俺たち帰るとするよ」
 明らかに貧困層ではない彼らは周囲の視線を気にしてその場から去る事を選んだ。
 そして最後にアレックスがマイクに向かって呟いた。
「安心してくれ、ダスト・ショックを引き起こしたカオス・レクスは必ず俺が捕える。仇は取るから」
 決意を固めたように告げるアレックスだが対するマイクはまだ気持ちの整理が出来ていなかった。
 そのまま去っていくアレックスとリチャードの背中をを見つめながらマイクは呟いた。
「……そーゆー事じゃねぇよ」
『Purifine/ピュリファイン』
 第1話 親と息子
 リチャードとアレックスの親子はガスマスクを身に付け多くの部下を従えていた。
 こちらから仕掛けるまで"敵"に見つからぬように足音を立てずにとある廃墟の中を進んで行く。
「全然気配がない、本当のこの先にいるの父さん?」
「アレックス、現場では隊長と呼べ」
「すみません……」
「しかしこれは勘付かれてるかもな……」
 親子らしいやり取りをした後にリチャードが呟く。
 その瞬間だった。
「っ……⁈」
 突如として廃墟の床が崩れたのだ。
 アレックスとリチャード、そしてその部下たちは下の階に落下してしまう。
「おい大丈夫か⁈」
 部下の一人の足に瓦礫の破片が刺さってしまっているのを見つけたアレックスは慌てて彼に駆け寄る。
「痛いっ、ぐっ……」
 ドクドクと血が流れて行く部下を見て慌てていると父であり隊長のリチャードがアレックスを呼ぶ。
「彼は救護班に任せろ、お前はお前のやる事があるだろ……!」
 アレックスの方を振り向かずある方を見たまま呼んだ。
 その視線の先にいる者をアレックスも認知する。
「まさかいきなり……⁈」
 そこに立っていたのは長年追っている今最も危険な存在、カオス・レクスだった。
 しかしいつもは部下を従える大将という立場だと言うのに何故いきなり現れたのだろう。
「大将の出迎えたぁ熱烈な歓迎してくれるじゃねぇか、どういう風の吹き回しだ?」
 威圧感に少し恐れを抱いてしまうアレックスとは対照的に隊長のリチャードは逆に煽ってみせる。
 すると長年追われている敵の主犯格にしては若く見える逆立った赤毛を靡かせたカオス・レクスは細い目を更に細めて煽り返した。
「アンタの部下を重んじる精神に感動したんだよなぁ」
「けっ、冗談抜かせ!」
 そしてリチャードは戦闘態勢に入る。
 アレックスは忘れない内に一度無線で他の仲間にも報告を行った。
『C地点、リチャード部隊。カオス・レクスと遭遇、敵は単体と思われますっ』
 そして負傷した部下の事も報告した。
『あと一名負傷、救護班お願いしますっ』
 目が合った部下に決意を固めた瞳を見せて頷きながら彼を抱えて一度安全な所へ移す。
 その間にリチャードどレクスは戦闘を開始していた。
「ふんっ」
 リチャードは胸に装備した特殊な蒼いエネルギーを形成する近未来的な装置に触れる。
 その瞬間、装置に繋がれた全身にその蒼いエネルギーが伝わった。
「おぉぉっ!」
 そして腿に装着した剣の柄のようなものを胸のエネルギーに押し当てる。
 すると柄はそのエネルギーを纏い武器を形成していく。
 そのまま巨体なリチャードによく似合った蒼いエネルギーの大剣が胸から引き抜かれた。
「相変わらずその大剣か」
 レクスも呼応するように自身の体から赤黒いエネルギーを放つ。
 その赤黒いエネルギーは全身から右腕へと伝わり鋭利な刃へと変形させた。
「所詮は俺たちビヨンドの真似事、紛い物の力だ」
 そして一気に突っ込んで行く。
「ホンモノには勝てないと良い加減理解しなっ!」
 刃に変形した右腕を思い切り振り下ろしリチャードに斬りかかる。
 リチャードも大剣で防御していく。
 しかしレクスの猛攻は凄まじくなかなか反撃が出来ない。
「相変わらず見た目からは想像できないバカ力だな!」
「アンタも見た目から想像できないほど非力だよ!」
 その後、何とか大剣を振りレクスを引き剥がす事に成功するリチャードだが単独での戦闘はキツいだろう。
 そこへ息子であるアレックスが参戦する。
「アレックス、加勢します」
 部下は救護班に任せ自分の仕事を行うのだ。
 彼もリチャードと同じように胸に装備した蒼いエネルギーを生み出す装置に触れ柄を押し当てる。
「はぁぁっ!」
 全身に巡るエネルギーから彼は細い刀剣を作り出した。
 まるで日本の侍のように構えてみせる。
「浄化警察ピュリファイン、リチャード部隊所属アレックス・ガルシア行きます!」
 そして苦戦する父親の手助けに入るアレックス。
 ここから彼らは凄まじい死闘を繰り広げる事となる。
 翌日、父の葬儀を終えたマイクは現在の住まいである仮説住宅で食事や生活用品などの配給があるため列に並んでいた。
 自分の番が来たため受け取るとその少なさに驚く。
「え、これだけ……?」
「ごめんなさいね、政府も資金不足で……」
「そうっすか……」
 うだつの上がらぬまま自分と母の暮らす所へ戻ろうとすると住人たちが一つのラジオに群がっているのを見つける。
 何やら騒ついているため楽しい話題ではないだろう。
「何のニュースっすか?」
 近付いてみると音声が少し聞こえて来てニュース番組だという事が分かる。
「聞いてろって」
 父の葬儀にも来ていたジョンおじさんがマイクをラジオ機器に近づけニュース内容を聞かせた。
 その声を聞いたマイクは複雑な心境を抱く事となる。
『繰り返します。浄化警察ピュリファインがダスト・ショックを起こしたビヨンドのテロリスト、カオス・レクスの逮捕に成功しました』
 自分たちの住む場所を奪い父の死ぬ原因を作った人物、そして今の世界を創り出したとも言える存在。
 カオス・レクスが遂に逮捕されたのだ。
「っ……」
 マイクは言葉にならぬ複雑な気持ちを抱きながら後退りしてしまう。
 そして後ろを振り返り空を見上げた。
「別に逮捕した所で"あの壁"が消える訳じゃねーのによぉ……」
 隣に立つジョンおじさんも同じ方を見上げながら"あの壁"という発言をする。
 尚もラジオのニュースは音声を放っている。
『約半世紀前、異世界から来たと言うビヨンド。姿こそ我々人間と同じですがこの世界の環境は合わないと言い特殊な力、エレメントを駆使し環境汚染を始めました』
 改めてこの世界の現状を若者向けに伝えているのだ。
 忘れてはいけない歴史だからである。
『そして五年前、事件は起こります。環境汚染を行っていた主犯格であるカオス・レクスがこのサテライトシティに大量の汚染物質を投下し浄化は困難となりったのです。後に"ダスト・ショック"と呼ばれる事件です』
 それにより住む場所を奪われた汚染難民がマイク達なのである。
『その結果、見つけ次第処分されるだけであったビヨンドは生きる権利を得ました。ダスト・ショックの中心部、特に汚染濃度が高いエリアを高い壁で覆い隔離する事によって』
 マイク達の視線の先にはニュース言葉の通り、まるで何かを隔離しているかのような巨大な壁な聳えていた。
 禍々しくある一帯を囲う壁の存在によりこの世界は変わってしまったのである。
TO BE CONTINUED……