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第七話:筆記テストとお手洗い

ー/ー



 アリシアは不貞腐れていた。自らの実力をいかんなく発揮すれば簡単に乗り切れる盤面。だが、どうしようもないもどかしさ。

「あーー、むーーかーーつーーくーー」

 周りに人がいることなどどうでもいいと言わんばかりに騒ぐアリシア。次の勇者認定試験は半年後。それまで足踏みだなんてできるはずがない。

「おい、見ろよ。あの689番、スキル"馬鹿"ってなんだよ」

 スキルチェックを持つ観客がヴァンを笑った。

「わはははは、ほんとだ。あいつ、この筆記テストを突破できるわけねぇな」

 そんな観客共の爆笑は、勇者候補生には届かない。アリシアは指をくるくると回した。ヴァンのスキルを確認した観客の頭上に小さな石が落ち、「痛ってぇ」と口にした。

「はい、試験終了でーーす」

 司会の男がそう叫ぶが、アリシアはそっぽを向いていた。

 過去最高に地味な勇者認定試験。答案用紙が集められ、試験官達が高速で採点し、15分程度で採点が完了した。

 そして、結果が司会の男に手渡された。

「レディース&ジェントルメン、お待たせお待たせ。今回は地味な試験だったね。だけど今、結果が出た」

 司会の男がその結果をチラッと見た。

「今回の試験は二部制で、筆記テストと戦闘能力テストの両方に合格した者が勇者になれる。そして、受験者1585人に対し、筆記テストの合格ボーダーラインである90点を獲得できたのは58人だと言っておこう。そんな超難関テストをクリアした者の名を、発表していくぜ?」

 勇者候補生と観客は司会の発表を心して待つ。アリシアはというと近くに止まっていたトンボの目の前で指をくるくると回していた。

「もったいぶらず高得点者から発表する。今回満点は一人だ。最高得点者の名は、"ヴァン シュレラ"試験番号689番。おめでとう!!」

 アリシアは興味の対象を、刹那でトンボから勇者認定試験に移した。

"今、なんて言った? 受かったの? スキル"馬鹿"を持つヴァンが?"

「ねぇ、689番って、スキル"馬鹿"の子じゃない?」

「確かそうだ。なんであいつが受かるんだ? それも満点だなんて、不正したんだろ」

「おい、司会者、この試験は無効だ!!」

「試験やり直しだ!!」

 ヴァンにとって不愉快な言葉が響き、司会の男性は大きく息を吸った。

「シャーーーラップ!!!!!!」

 マイク越しの絶叫に皆、耳を抑えた。キーンという機械音が響く。

「試験は一切の不正なく完了した。それは僕が責任を持って保証する。その不正なく行われたテストで最高得点をたたき出した勇者候補生を、称賛以外の言葉で迎えてはならい」

 司会は両手を天にかざし、お互いをぶつけた。その動作につられるかのように観客から暴言が消え、拍手が起こり始めた。

 司会の男はヴァンに近寄り、小声で話す。

「僕もスキルチェックが使える。だから実は、僕も驚いてるんだ」

 司会の男はヴァンの目を見た。

「僕はB級勇者のリンライっていうんだ。 君が勇者になったら多少面倒見てあげるから、よろしく〜」

 そんな言葉に対してヴァンは、

「はい、よろしくお願いします!!!!」

と、口にした。

 そして合格者はいったんの休憩となった。

"うー、ほっとしたら漏れそうだ" 

 ヴァンは急いで無人のトイレに駆け込み、用を足すためにイチモツを出そうとした。

「ねぇ、どうやったの?」

 ヴァンがそれを出す前にそんな言葉が聞こえてきたから、大切なところをアリシアに見られずにすんだ。

「ねぇ、ここ一応男子トイレなんだけど」

「あらそう」

「もう少しで俺の宝物が君に見られちゃうところだったんだけど」

「きゃはははははははは、そんなお粗末なものになんの興味もないわ」

「ひどい……」

「いいから答えて。どうやってあのテストを突破したの?」

「どうやってもなにも……」

 ヴァンは不思議そうな表情をした。


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 アリシアは不貞腐れていた。自らの実力をいかんなく発揮すれば簡単に乗り切れる盤面。だが、どうしようもないもどかしさ。
「あーー、むーーかーーつーーくーー」
 周りに人がいることなどどうでもいいと言わんばかりに騒ぐアリシア。次の勇者認定試験は半年後。それまで足踏みだなんてできるはずがない。
「おい、見ろよ。あの689番、スキル"馬鹿"ってなんだよ」
 スキルチェックを持つ観客がヴァンを笑った。
「わはははは、ほんとだ。あいつ、この筆記テストを突破できるわけねぇな」
 そんな観客共の爆笑は、勇者候補生には届かない。アリシアは指をくるくると回した。ヴァンのスキルを確認した観客の頭上に小さな石が落ち、「痛ってぇ」と口にした。
「はい、試験終了でーーす」
 司会の男がそう叫ぶが、アリシアはそっぽを向いていた。
 過去最高に地味な勇者認定試験。答案用紙が集められ、試験官達が高速で採点し、15分程度で採点が完了した。
 そして、結果が司会の男に手渡された。
「レディース&ジェントルメン、お待たせお待たせ。今回は地味な試験だったね。だけど今、結果が出た」
 司会の男がその結果をチラッと見た。
「今回の試験は二部制で、筆記テストと戦闘能力テストの両方に合格した者が勇者になれる。そして、受験者1585人に対し、筆記テストの合格ボーダーラインである90点を獲得できたのは58人だと言っておこう。そんな超難関テストをクリアした者の名を、発表していくぜ?」
 勇者候補生と観客は司会の発表を心して待つ。アリシアはというと近くに止まっていたトンボの目の前で指をくるくると回していた。
「もったいぶらず高得点者から発表する。今回満点は一人だ。最高得点者の名は、"ヴァン シュレラ"試験番号689番。おめでとう!!」
 アリシアは興味の対象を、刹那でトンボから勇者認定試験に移した。
"今、なんて言った? 受かったの? スキル"馬鹿"を持つヴァンが?"
「ねぇ、689番って、スキル"馬鹿"の子じゃない?」
「確かそうだ。なんであいつが受かるんだ? それも満点だなんて、不正したんだろ」
「おい、司会者、この試験は無効だ!!」
「試験やり直しだ!!」
 ヴァンにとって不愉快な言葉が響き、司会の男性は大きく息を吸った。
「シャーーーラップ!!!!!!」
 マイク越しの絶叫に皆、耳を抑えた。キーンという機械音が響く。
「試験は一切の不正なく完了した。それは僕が責任を持って保証する。その不正なく行われたテストで最高得点をたたき出した勇者候補生を、称賛以外の言葉で迎えてはならい」
 司会は両手を天にかざし、お互いをぶつけた。その動作につられるかのように観客から暴言が消え、拍手が起こり始めた。
 司会の男はヴァンに近寄り、小声で話す。
「僕もスキルチェックが使える。だから実は、僕も驚いてるんだ」
 司会の男はヴァンの目を見た。
「僕はB級勇者のリンライっていうんだ。 君が勇者になったら多少面倒見てあげるから、よろしく〜」
 そんな言葉に対してヴァンは、
「はい、よろしくお願いします!!!!」
と、口にした。
 そして合格者はいったんの休憩となった。
"うー、ほっとしたら漏れそうだ" 
 ヴァンは急いで無人のトイレに駆け込み、用を足すためにイチモツを出そうとした。
「ねぇ、どうやったの?」
 ヴァンがそれを出す前にそんな言葉が聞こえてきたから、大切なところをアリシアに見られずにすんだ。
「ねぇ、ここ一応男子トイレなんだけど」
「あらそう」
「もう少しで俺の宝物が君に見られちゃうところだったんだけど」
「きゃはははははははは、そんなお粗末なものになんの興味もないわ」
「ひどい……」
「いいから答えて。どうやってあのテストを突破したの?」
「どうやってもなにも……」
 ヴァンは不思議そうな表情をした。